鰻水

ニューヨーク在住。大学の先生。40代、犬と夫と3人暮らし。好きな食べ物「鰻」と好きな飲…

鰻水

ニューヨーク在住。大学の先生。40代、犬と夫と3人暮らし。好きな食べ物「鰻」と好きな飲み物「水」を合わせて鰻水という筆名です。ポッドキャスト「つまずくラヂオ」もやっています。unagimizucoffee@gmail.com

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「欲しても無駄と思うと欲さなくなる」この思考を変えるには

ジェーン・スーさんと堀井美香さんのポッドキャストOver the Sunが好きで、聴いています。 今週のOver the Sun(エピソード85)で話されていた内容、「人間、欲しても無駄と思うと欲さなくなる」という、あれ、学術的には「Learned helplessness」という概念です。   (ポッドキャストでは、それが様々なハラスメント、DV、洗脳の被害者の思考の根にあることや、仕事や学習の場面で、自分には用意されてないと思うと、欲することさえなくなるという怖さについ

    • 偶然のないところに物語なし?おばあちゃんのいるところに偶然あり?はたまた噂をすれば…など気楽に聴ける鳥肌の立つような偶然話回、ポッドキャスト「つまずくラヂオ」で配信中です。私のお気に入りのエピソード。 https://open.spotify.com/episode/7pDJaXZWILlDCEjln2Q32G?si=7d3dbcef632b4087

      • 銃乱射事件はアメリカの自業自得?暗い教室で息を潜めた40分

        アメリカの大学で教えて 12年になるが、今週、初めて授業中にシェルターインプレイス(shelter in place)のアラートを経験した。 シェルターインプレイスとは、大学内に銃を持った不審者がいるか、既に学内で銃乱射が起きているかもしれないので、今いる場所から動かず身を潜めろという合図だ。  詳しい情報を与えられないまま、ドアにカギを掛け、電気を消し、ブラインドを下ろし、入り口から見えないコーナーの机の下に生徒と身を潜めること、40分。 子どもの頃から学校でシェルタ

        • 日本に帰るのを躊躇うのは

          日本にかれこれ9年帰っていない。 ずっと「日本に6年帰っていない」と思っていて、人にもそう言っていたけど、以前帰った時に0才だった姪っ子が、3年生になったと聞いて、9年経つのだと驚いた。時々こうして年月のカウントが止まることがある。 あれから、会ったことのない姪っ子が2人増え、甥っ子姪っ子は合わせて6人になった。 そろそろ帰り時かと、今年の冬に3週間ほど日本に帰ろうと決めた。 ところが、今になって躊躇している。 なぜ日本に帰るのを躊躇するのか。 丁度グリーンカード(

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        「欲しても無駄と思うと欲さなくなる」この思考を変えるには

        • 偶然のないところに物語なし?おばあちゃんのいるところに偶然あり?はたまた噂をすれば…など気楽に聴ける鳥肌の立つような偶然話回、ポッドキャスト「つまずくラヂオ」で配信中です。私のお気に入りのエピソード。 https://open.spotify.com/episode/7pDJaXZWILlDCEjln2Q32G?si=7d3dbcef632b4087

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          ワンダフル、コペンハーゲン。そしてニューヨークで生きるために。

          冬に長旅を予定しているので、夏休みはどこにも行かずに、行ったとしても近場で、と考えていたんだけど、やはり劇的に違う景色に身を置きたくなって、結局7月末から8月頭の一週間、乗り継ぎ無しで行けるコペンハーゲンを訪れることにした。 ニューヨークという街は、その独特のエネルギーのせいなのか、もっと単純に古いアパートの塗料に含まれる鉛の毒の影響なのか(これは大きな健康問題になっている)、長期間滞在するとひどい倦怠感に侵される。どこかに旅に出て戻ると、例えそれが仕事の短い旅であっても、

          ワンダフル、コペンハーゲン。そしてニューヨークで生きるために。

          「ニューヨークでたまたま出会わない説」のその後

          Noteに書いた一番最初の記事は自己紹介文で、「ニューヨークでたまたま出会い過ぎる説」というお題でありながら、ニューヨークに住んでいるのに誰とも出会わないよ、っていうお話でした。 時々耳目にする「たまたま行ったニューヨークで、たまたますごい人と出会ったエピソード」がいつも不思議で、そもそもニューヨークにたまたま行かない(結構綿密に腰を据えて計画を立てて行ったり住んだりするものだ)、そしてニューヨークに暮らしていてもたまたま誰かに出会わない。でも、誰かと繋がりたいからNote

          「ニューヨークでたまたま出会わない説」のその後

          「ある犬の飼い主の一日」が両手に握らせてくれるもの

          生きるって本当は、胸をえぐられる案件に満ちていると知ってしまったのはいつからなんだろう。生きている時間が長くなるほど、絶対に失いたくないものを失う経験が増える。どうしても欲しいものがどうしても手に入らない経験もする。時が癒すことのできない傷がある。「ある種の悲しみは存在しつづける… 常に形を変えてではあるけれど。」 これはそんな傷を抱えた56歳の独身男ヘンクのある一日のお話。 この本を読んだのは2023年の9月頃。大谷選手の犬がコーイケルホンディエだということが日本中で注

          「ある犬の飼い主の一日」が両手に握らせてくれるもの

          4月1日から居場所を失ったあの時の平手打ち

          日本は卒業式が終わり、新しい生活が始まる前のインターミッション的この季節。ずっと忘れていたけど、この前友人と話していてふと思い出したことがある。それは、高校3年生の3月、志望大学から不合格通知が届いた日のこと。 私は18歳で、北海道のド田舎のその小さな町から出られずに一生を終えることを最も恐れていた。 閉塞感しかないその町はとても息苦しく、後に大阪で出会う人々に羨ましがられることになるのが不思議でたまらないほど、そこは地の果てなれの果て、ダサさとダルさと行き詰まり感をまる

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          かつて存在した暖かい世界を想うミュージカル:Merrily We Roll Along

          Noteからしばらく遠のいていました。みなさんはお元気でしたでしょうか? 毎日優に魂の半分を吸い取る学科長の仕事(授業+研究+サービス諸々の上に追加されている仕事)、今年は、七年ごとに査定の入る免許発行機関としての認定更新準備が始まり、さらにあと三分の一ほど増しで魂を吸い取られているようで、余暇には本を読んだり、物を書きながら考えたりはしていたのですが、ぎゅうぎゅうに物が詰まったクローゼットにもうひとつも物が入らない、または一つを取り出そうとすると雪崩のように全てが転がり出

          かつて存在した暖かい世界を想うミュージカル:Merrily We Roll Along

          昨日聞いた言葉  "Be yourself so that the people looking for you can find you." -Arlan Hamilton 大事だね

          昨日聞いた言葉  "Be yourself so that the people looking for you can find you." -Arlan Hamilton 大事だね

          なればなる、ならねばならぬ、何事も?

          毎日は金太郎あめのようにどこを切り取っても同じような表情で過ぎていく。そしてそれが普遍に続いていくような気がしてしまうものだけど、日用品が少なくなって、買い出しに行く道すがらなどに、あぁ今ここにある全てのものは少しずつ着実に「無くなる」方向へと向かっているんだなぁ、と当たり前のことにじんとする。 日用品は使ってるから無くなるのは当たり前なんだけど。物だけではなく、人や犬や建物や景色も、みんな永遠にここに存在しているような顔で座っているけれど、ベルトコンベアーの上に乗って少し

          なればなる、ならねばならぬ、何事も?

          「この世界は良いところ派」に隠された罠のこと

          先日書いた「世界認識」の傾向に関する記事の追記として。 この世界をおおむね良いところと認識しているか、悪いところと認識しているかという思考の傾向が、個人の経験に関係なく、生まれ持ったレンズとして装着されている、という話だった。 このことを考える時に、セットとして考えたい罠があるのだけれど、それを書くと長くなり過ぎるので省いた部分を、ここに。 ざっくり言うと、世界認識が生まれつき決定しているのだとしたら、世界がろくでもないのは、お前の認識のせいだから、不満があるなら己の認

          「この世界は良いところ派」に隠された罠のこと

          この世界は良いところ?悪いところ?

          ニューヨークの地下鉄には、「会話スタイル」と呼ばれる座席の配列がある。 L字型に座席が配列されてあり、3、4人で乗った時に、みんなで会話を楽しめる、というものだ。 ところが、実際は大勢で地下鉄に乗る人ってそう多くない。大抵の場合、他人同士で密着して乗る感じになってしまう。それも横の人の息が頬にかかりそうなほどの距離感で。 そのせいかどうかは知らぬが、この「会話スタイル」は、順次廃車になっていくことが決まった。これからは一列型のみが作られていくそうだ。 そうなると、こん

          この世界は良いところ?悪いところ?

          角田光代「対岸の彼女」: 切なさの後ろから光の指す物語

          感情を誰かに伝えたいと思ったら、私たちは言葉を使って伝えようとするしかないのだけれど、言葉がそもそも感情そのものでは絶対にあり得ないため、プラスチックで木箱を作ろうとするみたいに、持ち合わせの材料と、表現したい物事との間に本質的な隔たりがあって、ただ偽物の木箱が増えていくだけみたいな状況になってしまう。 哀しみや、悲しみ、喜びや、愛しさ、胸がつぶれそうになる辛い感情、どれをとってもその正確な感情というのは、言葉ではどうしてもそっくりそのまま感じたままに伝えるということができ

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          落ちるコップに手を出すな:学科長になってしまいました

          大学の新年度が始まりました=noteの更新が滞る。 2021年の5月に始めたnoteですが、全部で25本しか書いていないので、平均すると月1.5本。それもだいたい書かれているのは長期休み期間中。というわけで、ってどういうわけでもないが、ここからまたペースダウンする予感。 学期中の凝縮された仕事量による疲労が、まるでドーバー海峡を泳いで渡ったとき並みだという話は以前書いた通りなのですが、な・な・なんと、色々の紆余曲折を経て、しかも新学期が既に始まってからのドラマに次ぐドラマの

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          一生のうちに覚えられる名前の数

          人が一生のうちに覚えられる名前の数はあらかじめ決まっていて、その限界に達すると、古くて必要のないものを忘れて新しいものを入れていかなければ、全く新しい名前を覚えられないという仕組みになっているんじゃないか、と真剣に思うこの頃。 みなさんはいかがでしょう?新しい名前覚えられますか? 何を隠そうここ4年ほど新しく人の名前を覚えることができずに大変苦労している。とは言え、新しい友人や同僚の名前はさすがに覚えられる。私が全く覚えられなくなってしまったのは学生の名前だ。  ただ、

          一生のうちに覚えられる名前の数