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この作品が突きつける”真実とはなにか”という問いの深淵さ、答えのなさになんとも言えない気持ちになる。 | 『落下の解剖学』/監督:ジュスティーヌ・トリエ
事件の真相を突き詰める行為とは、事件の当事者とその周辺にいる人物、そしてその人間関係を解剖(解体)する行為である。その解剖作業は赤の他人が担い、法廷という場で事件とはまったく無関係な傍聴人にまで晒され、ときにはメディアを通して、国中にまで知れ渡ってしまう。ミステリードラマの真相を予測するかの如く、無関係な人々の日常会話の題材にまでなってしまう。 真実を明らかにするためとはいえ、よくよく考えてみるとなんともむごい構造だ。”100%事実だと証明できる客観的な事実”なんてものはほ
一層あわただしく、加速的に押し寄せる"変化"の連続は、ぼくらを幸せに、豊かにしてくれているのだろうか。 | 『PERFECT DAYS』 / 監督:ヴィム・ベンダース
道を掃く竹ぼうの音で目を覚まし、ヒゲの長さを昨日と同じにし、スカイツリーともにその日のカセットテープを流し、"職場"に向かう。 こうして、彼にとっての完璧な一日が始まる。 見知らぬ人からも、兄弟からも、年下の同僚からも価値のない仕事として見られる「トイレ清掃」という仕事に真摯に向き合う。この仕事も、完璧な1日の一部。 彼は世間や周りからそれがどういう価値にあるのか、ということを気にせず、それの中に自分にとっての心地よさや好きを見つけ、そのものを堪能する。それの多くは、過去
本当の「その人らしさ」とはなんだろうか。そもそも、唯一無二の「その人らしさ」なんてものは存在するのだろうか。|『ある男』 / 監督・石川慶
出自、名前、国籍、職業、経歴、役割、ルックス、といった"ラベル"。 その人間が持っているラベルに付随する情報や性質によって、その人間のことを素早く理解する。そういった人間のある種の防衛本能が、その人自身の本質とは関係なく、他者から見た「その人らしさ」を形成する。そして、その人の言動行動がそのラベルに当て込まれ、「やっぱり、あの人はああいう人だから」と都合よく断定されていく。 本当の「その人らしさ」とはなんだろうか。そもそも、唯一無二の「その人らしさ」なんてものは存在するの