短歌5
もう意味を失った嘘を放り込んで煮えない鍋は静かに焦げる
はにかんだ口元の傍の窪みから天使が睨んでいるようで怖い
「すみません、命に価値はありますか」「そこにないならないですね多分」
水と熱とを淀みなく流すための通り道でしかない 人などは
銀色の脳浮き上がり六月のカレンダーにもやさしくなれる
今日だけは薬をやめて僕たちの歴史を変えるようなキスをしよう
修飾はいらないすぐに取り去って露わになった言葉だけを撃て
この身にも星が隠されているのならどこから光り始めるのだろう
無秩序から成った秩序だ、僕たちは 宇宙に散らかされた有機体
お前にも、羽化しそびれた羽虫にも、同じ速さで明日が歩み寄る