ショートショート『明日、月の下交差点で。』①
「それでは明日、月の下交差点で会いましょう。」
昨日のあなたの言葉を信じたことに
理由も何も、あったものじゃなかった。
あなたが何者で、何の目的でここに現れたのか
そして、出会ってしまったのか、だなんて
あまり考える必要もないと思ってしまうのだ。
あなたを待つ景色は、どこか懐かしくて
それでいて、雑草のにおいが青く新鮮で
海から流れる深い霧は、とてもやさしかった。
「街は、変わるものですね。」
薬局の駐車場では
老いた野良猫が、意味深に呟く。
「変化も停滞も、わたしにとっては、初めて目にうつるものばかりです。」
若い渡り鳥は、近くの川へ戻る前に
目を輝かせながら、電線を揺らす。
「お待たせしました。」
あなたは、嬉しそうに、交差点へやってきた。
交差点の看板が、日差しに揺れた。
『月の下』
信号の色は、黄色から、赤に変わった。
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