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履き違えの世界(4)

まえのおはなし

そのあやとりのような遊びは
元の世界にもありそうな遊びだったが
僕はそれを思い出すことはできなかった

君はいつも人伝てに僕に話しかけるような感じで
隣でひょいと座っている腕の細い君を
なんとなくも知ることはできないのだった

それなのに君は”ほんとうのようなこと”を
当たり前のように僕に話すもんだから
僕はうっかりこの世界に慣れてしまって
身体の水玉も とうに見失っていた

僕らはヘンダーソニーがお酒にめっぽうつよいという、へんてこな話や、南のほうにある言葉がなんだか可愛いらしいという話とか色んなことを君と話したけれど
全ては履き違えているのだから
そのひとつひとつにどんなに心を盗られようとも
嘘かどうか 大切かどうか
自分の考えさえも分からない

初夏の風が髪を踊らせた
一体僕は何を履き違えているというのだろう

つぎのおはなし

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