夏にしてダビド・シルバを想う
私はシルバを愛するだけの人間です。そのためだけに生きて、そのためだけに死んでもいい。シルバと同じ年数を生きてきたけれど、シルバのことを愛し始めたのは、1年ほど前だった。もっと早くシルバを見つけていたら、私は星屑になっていただろう。生きてきた長さと同じ熱量で、一瞬光って消えた。
シルバは無口な人だ。余計なことは言わない。寡黙でクール。茶色い瞳で、チームを見守っている、私のすきな人。シルバの唇が動かなくても、プレーは何よりも雄弁だ。「ここに走るんだろうが」というパス、「絶対に勝つんだろうが」という守備。美しいパス、美しいシュート。どこまで行っても素晴らしい、私のだいすきな人。最初から最後まで、私はシルバを全肯定してしまうよ。
未熟児の息子のそばにいるために、シルバがチームを離れていたとき、チームメイトに「一生分の借りができてしまったね」と、シルバは言った。シルバは毎試合、一生分の貸しをみんなに作っているのを、みんな知っている。シルバがどれだけチームのために走ってきたのかを、みんな知っている。みんな、知っているんだ。シルバがいてくれるだけで、チームになれることを。
このままでいたいと望むことが、どれほど無謀であり、どれほど愚かであっても、願わずにはいられない。たとえば、でも、もし、どうなっても。口を開けば、言い訳みたいな言葉が流れ出す。シルバみたいにはなれないよ。
シルバには心から感謝している。シルバがいなくなったらどうしていいかわからない。シルバを失ってでも得たいものがこの世にあるという想像ができない。
「左様ならば」という言葉で、私はシルバを見送るのだろう。左様ならば、私の今をシルバに捧ぐ。