どの小説だったか、どの映画だったか忘れてしまったのだが、死は甘い香りという文章が頭のなかに残っている。 初めて聞いたときはよく分からなかった。死は怖くて、暗くて、闇のようなイメージを抱えていて、甘いという単語には結びつかなかった。 しかし今なら分かる。死は長い眠り、微睡のようなもので心地よいだろう。これ以上傷つけられることもなく、深い悲しみで狂うこともない。幸せとも思えてしまう。 わたしには死ぬ勇気はないけれど、死を選ぶことが間違いだとは思えない。
基本的には毎日泣いている。けれど、うれしいこともある。 文章にしないと消えてしまう気がするので、ここに残しておこうと思う。 ◯ふわふわのダックスフンド 病院の帰りに歩いていたら、よぼよぼのお爺ちゃんがふわふわのダックスフンドを散歩させていた。とっても楽しそうで、尻尾をブンブン振っていた。毛並みが艶々だった。美味しいご飯が食べれているのかも、良かった。 ◯5年ぶりに会った友達 高校の頃の友達に会った。5年ぶりに声をかけたのに、二つ返事で会おうと言ってくれた。新幹線に乗って
うつ病になってから辛いことはたくさんある。 まず母に申し訳なかった。仕事が忙しいのに私はこんな調子なのであまり家事を手伝えない。 とても心配してくれているのに、わたしは何も返せなかった。 それから、楽しみなことがなくなった。今まで好きだったこと。編み物、ピアノ、散歩、ショッピング、ネイル、それら全てがいらなくなった。これはかなり辛かった。やりたいことがないので、毎日異常に長く感じる。 うつ病になると脳の機能が低下するのか、文字もあまり読めない。大好きだった小説も、だん
うつ病だと診断される少し前から、心理カウンセリングに通っている。 カウンセラーさんはかなりのおばあさんで、自分もうつ病になったことがあると言っていた。 ゆっくり話してくれる人で、笑顔が素敵だった。 わたしは、はやくうつ病から抜け出したかった。 何故自分がこうなってしまうのか。どうしたら悲しくならないか。忘れることが出来るのか。元気になることができるのか。 話を聞いて欲しい、というよりも自分の欠点や弱さにどう向き合えば良いのか知りたかった。 しかしどうやらそこがいけ
私がうつ病になったきっかけは二度目の失恋だった。 少し前に長く付き合っていた恋人と別れたときは意外にも大丈夫だった。 やりたいことを探して、友達と出かけて、髪を切って、新しい服を買って... 恋人から借りたものは丁寧に包んで、ダンボールにまとめた。お礼も添えて。 散歩をしながら近くの郵便局まで送りに行った。 最後は会わなかったけれど、わたしにとっては円満な別れだった。 それからしばらくして、また恋が出来た。好きなものが似ていて、背が高くて、声が低くてとても魅力的な
ぐちゃぐちゃのコード。撒き散らされた錠剤。床に落ちている服。空のペットボトル。 うつになってから、全然片付けが出来なくなった。能力とかの問題ではなく、片付けをしようという気持ちになれないのだ。 わたしはうつ病ではあるけれど、そんなに重い方ではないと思う。仕事は辛いけど続けているし、死のうともしない。 でもこんなとき、あぁ私は生きようと思っていないのかもしれないと思う。部屋を綺麗にしたところで別になんのメリットもないから。 消えてしまいたい。布団の上で沈んで、もういなく
安楽岡花火(クズの本懐) 「誰か、誰でもいい。今すぐ私に、価値があると思わせて。」 梨花(そして、バトンは渡された) 「楽しいときは思いっきり、しんどいときもそれなりに笑っておかなきゃ。」 友達 「大丈夫。どっちに転んでも。」 「まだ終わりって決まったわけじゃないよ。」 元恋人 「そのままでいいよ。」
先月から調子が悪かった。 ふとした瞬間に涙が溢れてしまうので、電車に乗るのに困った。 友達と出かけて話していてもぼんやりしてしまい、ずっと上の空といった感じだ。 なかなか眠りにつけない日もあれば、寝過ぎてしまう日もあり、よく分からない。 朝起きるときが1番辛く、心臓がバクバクする。 ずっと親に隠していたけれど、ついに隠しきれなくなり、目の前で泣いてしまうようになった。 きっかけは春に恋人と別れたことだと思う。別れて半年は仕事を忙しくして、たくさん旅行に行き、友達と
抗うつ薬を飲み続けて良くなってきたかと思えば、今日はどうしても悲しさに勝てなくて、何も食べれなくなってしまった。 でも人と約束をしているので、朝時間通りに家を出てお店へ向かった。しばらく経っても来なかった。 数十分後に「今起きた、ごめんなさい」と連絡が来て、悲し過ぎて電車の中で泣いてしまった。 帰りの道で駅まで向かう途中、捨てられたアイスクリームを見つけた。 スプーンごと捨てられていて、かじられた跡が残っていて、まるで私だと思った。 美味しそう、こんな味かな、違った