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ダイビングと私②

①を読んでない方はまずこちらから ↓

初めてダイビングをした時の感想は?
こんな質問をよくされるし耳にもするが、私自身のことで言うと、

正直全く覚えてない・・・。そもそも自分からやりたくて始めたわけじゃないので子供の頃のプールの授業嫌だなー、サボりたいなーってテンションだったってことしか覚えてない。
初めて水中に潜ったのはプールだったが特別大きな感動があったわけでもなく、今頑張って思い出してみても担当のインストラクターの人が可愛いなとか、ウエットスーツって着にくくて気持ち悪いなとかほんとそんなくだらないことしか思い出せない。
ただ新しくできた仲間たちと、何か新しいことが始まるワクワク感はあったような気がする。

人生で初めてダイビングをした海は福井県越前海岸の壁石岩。
まさかダイビング人生でこれほど関わる土地になろうとはこの時はいざ知らず。
専門学校に入学して初めての泊りでの校外実習は一泊だったか二泊だったかそれすらも覚えてないが、同級生と旅行気分でテレビゲームやトランプやUNOやこの時思いつく限りの遊び道具を持って行った記憶はある。
実際の海洋実習はというとスムーズに行き過ぎて、こちらもほとんど記憶がないくらい。ただうっすらとバディブリージング (水中で空気が無くなった場合に一つの呼吸源で二人が交互に呼吸しながら安全に浮上する方法) の相手が同級生の女の子だったので、水中とはいえ同じマウスピースをくわえる関節キスがちょっと気になるお年頃だったのは言うまでもない。

とはいえ授業の一環で来ているので真面目にダイビング実習はこなし、夕方には全員が海から上がることが出来た。
みんなで夕食を食べ、食後に担任の先生のありがたーいお話とスケジュールの確認と注意事項を頂いて、その後は就寝時間まで自由時間。海辺で星を見るようなロマンチストな輩もいたので天気も良かったのだろう。もちろん私たちはそんなものには全く興味はなく、部屋で徹夜が出来るほど持ち込んだ遊び道具で学生ライフを謳歌する気満々。遊ぶ前に自販機でジュース買うため外に出てみると、宿の前のトンネルの前で海坊主が手招きをしているのが見えた。(海坊主とは講習のお手伝いで来ていたインストラクターの一人でずんぐりむっくりの坊主頭だったので陰でそう呼んでいた)
目が合うと海坊主はおもむろにトンネルの向こう側へと走り出し、好奇心旺盛な私たちはもちろんそのあとを走って追いかけて行ったのである。
15mほどのトンネルの先にはコカ・コーラの自販機があり、宿の前の自販機にはコーラがなく海坊主はわざわざ買いに来たと言う。
別にジュースなら何でもよかったが海坊主にならってコカ・コーラを買いゲラゲラ笑いながら宿へ戻ると、宿の入り口に正に鬼の形相の担任の先生が仁王立ちで立ちはだかっていたのである。

逆鱗に触れた原因は、食後に言われた注意事項。宿の外に出てもいいがトンネルの向こうまでは行ってはいけないと。そーいえばそんなようなこと言ってた気がする。玄関で怒られながら早く終わらないかとぼーっとしていると担任の先生からトドメの一言。『明日の実習にはあなたたちは参加させません』
???
最初言っている意味が分からず、そもそも海坊主が誘ってきたんだし。怒られている間、担任の後ろで申し訳なさそうにコーラを片手で持ちながら、もう片方の手を挙げてすまんとばかりに謝る海坊主の姿は今でも鮮明に覚えている。その夜はテンションもダダ下がりで学生ライフを謳歌する気分にもなれず布団に入ったような気がする。

結局、翌日の朝食前に海坊主が部屋まで来て、一緒に謝ってやるからと担任の部屋まで行き、しぶしぶ頭を下げて許しをもらい無事講習に参加出来たのは今になって思えばいい思い出である。
初めての海のダイビングの感想よりも、より鮮明に覚えているのはあの海坊主の姿なのは言うまでもない。

スタートこそこんな感じで始まってしまったがこの翌年、より濃いダイビングライフを過ごすことになることをこの時の私はまだ知らない。

③へつづく

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