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創作ハウツー本紹介・感想②物語の法則

皆さん、お久しぶりです。今回、また創作ハウツー本を読み終えたので紹介と感想をここに描かせていただきたいと思います。

ご紹介するのはこちら。

クリストファー・ボグラー&デイビッド・マッケナ (著), 府川 由美恵 (翻訳)
物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

です。

それでは、まず私の読んだ感想を言いますと「物語のツール箱で創作者は持っていても損はない本。ただし、中身が講義じみている」でした。

実のところ、私はこの本を完読するのに約一年半かかりました。
その原因が、講義じみた文章です。読める方は読めると思いますが、ちょっと私には退屈でしたね。故に読み終えるまでにここまでの時間を要したわけです。記事のまとめあたりでこの件について詳しくお話します。

ただ、非常に参考になる部分も多くあるということもあり、私的には値段より得できる内容かなと思いました。


物語・キャラクターの原型パターンが分かる


この本を読んでいて改めて実感したのは、物語にはおおよそ原型、もしくはパターンがあるということです。

例えばですが、王道なもので説明しやすい例をあげるなら「シンデレラストーリー」といわれるものです。

不幸な境遇にある主人公が何らかの経緯を得て幸せを手に入れる……というのがおもなシナリオです。

これらは時代背景やキャラの設定などに多少差異はあれど要約した物語はこうなりますね。

つまり、物語というのはおおよそテンプレと呼ばれるものがあるんです。

この物語の法則ではそれらテンプレが載っています。
今回はその法則をいくつか紹介します。

英雄の旅路

これは主に英雄伝説と呼ばれる物語のパターンです。英雄伝説? なにそれおいしいの? 読んだことない。という方もいらっしゃるとは思いますが、見た限り現代の冒険小説の多くはすべてとは言わずともこれらに当てはまる作品は多いように感じました。

英雄の旅路(ヒーローズ・ジャーニー)は、アメリカ人研究者ジョーゼフ・キャンベルが究明した語りのパターンであり、これは芝居、物語、神話、宗教的儀式、そして心理的な発達にも現れてくるものだ。<英雄(ヒーロー)>、すなわち、集団や種族や文明の代表として旅立ち、偉業を達成する人物の原型がおこなう、典型的な冒険のことである。-p.74より引用

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

これらの物語は以下のようなステージで進みます。

①日常生活
②冒険への誘い
③冒険の拒否
④賢者との出会い
⑤戸口の通過(物語の第一幕の終わり)
⑥試練、仲間、敵
⑦最も危険な場所への接近
⑧最大の試練
⑨報酬
⑩帰路
⑪復活
⑫宝を持っての帰還 -p.74より引用(一部省略)

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

〈日常世界〉にいるヒーローが、〈冒険の誘い〉を受ける。最初はしぶしぶ〈戸口の通過〉を果たすものの、〈試練、仲間、敵〉に出会っていく。〈最も危険な場所〉にたどりついたヒーローは、〈最大の試練〉に打ち勝つ。そして〈報酬〉を手に入れ、追いかけられながら自分の世界への〈帰路〉につく。ヒーローは自身の体験によって〈復活〉し、生まれ変わる。そして、自分の世界に恩恵をも たらす〈宝〉や霊薬を持って、〈日常世界〉に〈帰還〉する。-p.87より引用

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

<英雄の旅路>は引用文にもある通り、神話学研究者であるアメリカ人研究者ジョーゼフ・キャンベルが発見したものです。
キャンベル氏は、研究の過程で世界の英雄伝説の物語の構造が全く同じだということに気づき、そこから作成されたのがこの<英雄の旅路>というわけです。

昔も今も英雄伝説のような物語は長らく愛されているわけですが、その物語の構造はほとんどが同じというのもとても面白いですね。

神話では、様々なバージョンが存在するわけですが、これらを自分のオリジナルのものに置き換え、細かいところを詰めていけば、ある程度面白い物語はできるわけです。

主人公が辿っていく成長の物語


ディズニー・アニメーション社で古典的なおとぎ話を映画に採り入れる作業をしているうちに、 私がたどりついた結論がひとつある。良質なおとぎ話は、二つの物語を語っているということだ。第一の物語では、外面的な目的を達成するための物語、つまり、主人公が身体的な危険にさらさ れる実際の旅が描かれる。第二の物語では、主人公が教訓を学んだり、自分の性格に欠けている部分を育てるため、さまざまな感情や特質の領域で試練を受ける、心の旅が描かれる。 どんな物語にも、主人公が解決すべき外的な問題と内的な問題が必要だ。そして、どんな物語も、 外的な疑問と内的な疑問を投げかけてくる。外的な疑問は、主人公は現実の目的を達成できるか? といったものだ。-p.105より引用

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

さらに私は、こうした二つの物語が、ともに機能しあうものだという結論にも達した。 外面的な旅はたいていの場合、主人公に足りない何か、あるいは主人公が強く求める何かに駆り たてられる。物語は主人公の願いを"聞き"、目的への道のりにいろいろな障害物を与えてくる。そ れを乗りこえていくうちに、主人公は物語から与えられた教訓を学び、ほかにも自分に欠けている ながあること、私的・感情的、心理的なレベルで本当に求めているものがあることに気づく。最初のうちは個人の問題や足りない部分に気づかないが、しだいにそれを意識するよう。 要とするものを手に入れるために変わろうとする。主人公の最初の願いは聞き届けられ、欲しかったものは手に入るが、同時に物語のもっと高い次元の目的も達成され、主人公は内面において自分というものを知るようになる。-p.106より引用

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

基本的にどの物語もそうなのですが、物語とは主人公が成長する場所です。
ということは、私も知ってはいましたが外面的、内面的というのは考えたことがありませんでした。

ただ言われてみれば少年漫画は特にそうですが、敵に挑み、負けてくじけそうになる。しかし何らかの影響で再び敵に挑み、勝利を勝ち取る。そんな物語は多いように思います。
ただ、これも言われてみると
「一度負けた相手に戦闘に勝利する」→外面的成長
「くじけそうになるが立ち向かう」→内面的成長

ですね。

先ほどお話した<英雄の旅路>にも、この外面的・内面的成長は描かれています。

ここで私が残した付箋の文章(このページを読んだ時期が不明なのとどういう意図で張り付けたのかは不明)を紹介します。

<英雄の旅路>…主人公が辿っていく成長の物語

らしいです。どこかのページから引用したものが剥がれ落ちたのかは分かりませんが(探してみたがどこの文章かは分からず)、納得はできますね。

キャラクターの原型

〈原型(アーキタイプ)〉とは、くり返し現れる人間の行動パターンのことであり、映画や物語では、標準的なタイプのキャラクターがそのパターンを表現する。以下は一般的な〈原型〉の一覧だ。もっと詳細な説明が必要なら、拙著『神話の法則」を参照されたい。

主人公(ヒーロー)
物語の中心となる人物。自分自身の人生の物語では、誰しもがヒーローである。通常の〈主人公〉は、学ぶべきことがたくさんあり、長い旅をするキャラクターとして描かれる。古典的な〈主人公>の理想形は、自分より大きな何かのために、自分の望みを犠牲にできる人物である。
影(シャドウ)
悪者や敵。ときには内面の敵であったりもする。闇の力であり、〈主人公〉の可能性を抑圧し、〈主人公〉の悪の潜在能力となる。別の種類の抑圧、たとえば、抑え込まれた悲しみ、前造力など、はけ口がなければ危険なものになりうるものとして描かれることもきりとした悪者や敵が出てこない物語もあるが、〈主人公〉が乗りこえなければならない何かの不足や欠如、障害、自然の力なども、〈主人公〉にとっての〈影〉になる。
賢者
〈主人公〉を導く人、もしくは導く原理。『スター・ウォーズ』のヨーダ、アーサー王伝説のマーリンなど、偉大な指導者もしくは教師となる人物。本能や内面的な行動規範などがその役目を負うこともある。
使者
(冒険への誘い)を伝えるもの。〈主人公〉に行動をうながす人、もしくは出来事。〈賢者〉や〈変身する者〉、ときには〈影〉が一時的にこの役目を担うこともある。この役割のためだけに、新しいキャラケターが現れる場合もある。
戸口の番人
〈主人公〉の旅路の重要なターニングポイントとなる地点でじゃまをする力。嫉妬深い敵、仕事として門番を務める人物、もしくは〈主人公〉自身の恐れや疑いなどがこれに当たる。神話にはこうした障害がたくさん登場する。〈主人公〉は二つの世界の境界にいる〈番人〉を、賢く出し抜いたり、その目をごまかしたり、だましたり、言いくるめたり、トリックや変装でかわしたり、足もとをすくったり飛びこえたり、勧誘したり魅了したりする。
変身する者(シェイプシフター)
ホラーやファンタジーの吸血鬼や狼 男のような、変身する生き物。〈変身する者〉は、不可解に変化する人間自身のパーソナリティや気分を、象徴的に表現している場合もある。〈主人公〉が、愛、友情、チームワークなどを通じて他者と関わるとき、相手の人物がしばしば驚くほど簡単に変化したり、二面性を持っていたりすることを伝えてくる。物語は"見た目に惑わされてはならない”という教訓を常に伝えてくる。

(略)

トリックスター
人が持ついたずら好きな潜在意識、状況を変えたいという衝動を象徴する存在。〈トリックスター〉は社会の正常な状態をひっくり返し、その欠点を暴きだす。脇役的なキャラクターであることも多いが、"トリックスター・ヒーロー"として話を引っぱることもある。私はドイツのプロダクションの依頼で、中世ヨーロッパのいたずら
仲間
〈主人公〉の変化を助けるキャラクター。腹心、相棒、ガールフレンドなど、人生が変遷していく過程で〈主人公〉に助言を与える。仲間が捨て石にされることもあり、負傷したり、連れ去られたり、殺されたりして、そのことが〈主人公〉のモチベーションになったり、観客の同情を生んだりする。
-p.124~129より引用、一部省略

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

これは著者であるボグラーが考えたキャラクターの基本的な原型であり、それぞれ物語に影響する役割を表したものです。

これらを理解したうえで、作っている物語にキャラクターが与える役割を考えてみたり、確認してみると物語の緩急などにうまく影響を与えてくれるかもしれません

まとめと感想

今回のまとめです。

・今も昔も物語にはテンプレが存在しており、ある程度テンプレに沿えば面白い物語は作れる。
・物語とは主人公の成長を辿るものであり、面白い作品には『外面的成長』と『内面的成長』が描かれている。
・キャラクターが物語に及ぼす影響などを考えてみよう。

実のところこの本には上記に紹介した以外にも、ロシアの研究者のウラジーミル・プロップによる『プロップのキャラクター』や『プロップの機能』、『テオプラストスのキャラクター類型』など様々な物語・キャラクターのテンプレ、私が端折った解説などが詳細に記載されています
ただ、すべて紹介するととんでもない量になるため、気になった方はぜひ自分の手で購入してください。

さて、私は最初に読み終えるまでに1年半かかったと記述しましたが、最初に記述した通り内容が非常に講義じみています。

どういうことかと聞かれれば「キャラクターの原型」で引用した部分で変身する者(シェイプシフター)の一部が省略されていたと思います。
あの箇所には、私が言う講義じみてると感じた文章が入っていました。本来あそこには、スター・ウォーズにいた変身する者の詳細な説明が入っています。その量、なんとおよそ1ページ半近く
この本には、上記のような長い解説が多く載せられています。皆さんに紹介する以上すべて細かく読みたかったんですが、私自身映画には疎く、スターウォーズの解説を細かくされたところで理解できませんでした。

ほかにも様々な映画のシーンを引用して解説しており、有名なものから聞いたことのないものもありました。これらの文章は、はっきり言わせていただくと私にとっては退屈でした。

ただ、前述した通りそれ以上に得られる情報は多くあります。ので、購入してみて読みにくいと感じた部分は飛ばして、必要な情報だけ得るのもいいと思います。

というわけで、物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術の紹介でした。
後半、愚痴をこぼしていましたが、物語を作る方にとっては良い味方になってくれる本でもあると思います! 映画のシナリオライターのみではなく小説を書く方や漫画を描く方などにもおすすめできる一冊でした。


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