海中のミクロな世界を海の外側から観察するには?
海の水一滴一滴にも、小さな生命が含まれています。藻類やバクテリア、原生動物、微小な生命体などで構成されるプランクトンは、赤道から北極・南極の海、そして海面から最も遠い深海まで存在しています。一滴の海水に含まれるプランクトンの量と種類は、環境条件、栄養素レベルなど、多くの要因によって異なります。
水温や塩分濃度とは違い、プランクトン濃度は物理的パラメーターではなく、生物学的パラメーターです。プランクトンは海洋生態系の一部であり、天候だけでなく食物連鎖の力学の結果として変化する可能性があります。藻類で構成される植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ、動物プランクトンは魚に食べられます。この食物連鎖は海の至る所で起こっていますが、常に植物プランクトンはその起点となっています。
植物プランクトンが増殖し成長するためには、適切な環境条件が必要です。この条件には、十分な日光、窒素やリン、カリウムなどの栄養素、及び二酸化炭素が含まれます。日光や二酸化炭素、及び各種栄養素が適切な水温や塩分濃度などの環境条件と結び付くと、植物プランクトンは非常に急速に増殖する可能性があります。その結果、植物プランクトンの濃度を測定すれば、成長を制御する要素についても学ぶことができます。
水中の植物プランクトンや藻類の量を定量化するには、多くの藻類の光合成のために使用される緑色の色素であるクロロフィルaの濃度の測定が役立ちます。クロロフィルaの濃度は、海水中に存在する藻類の量に関係します。クロロフィルaの濃度は、スペクトル衛星観測技術を活用して反射光を観測することにより、宇宙から測定することが可能です。これまでは、藻類の濃度は、海水の透明度から視覚的に測定するか、海水サンプルを採取しスペクトロフォトメーターを使用して研究施設で分析することでしか計測できませんでした。また、どちらの方法も、広範囲の海域のクロロフィルa濃度を計測することは不可能です。典型的なクロロフィルaの濃度は、0~100µg /Lの間で変化します。高濃度の藻類は小さな湾や川の近くに見られますが、低濃度の藻類は栄養素が不足している外洋に存在します。
※植物プランクトンには、さまざまな形状や大きさの藻類があります。左から、藍藻、珪藻、渦鞭毛藻、緑藻、円石藻。(出典:ウィキペディア)
魚類や貝類、海藻類養殖の生産者はクロロフィルのモニタリングに関心を持っていることが多いですが、その理由は異なります。貝類の養殖事業者は、藻類が牡蠣やムール貝、アサリ等のの重要な食料源であるため、植物プランクトンの濃度が高い場所を好む傾向があります。また、海苔や昆布などの海藻類は植物プランクトンと同じ栄養素、日光、二酸化炭素を奪い合うため、クロロフィルの濃度が高い場所が海藻類を育てるのに適した環境条件である可能性があります。しかし、植物プランクトンが多すぎると、栄養素をめぐる競争が激化し、海藻類に十分な要素が残らない可能性があります。通常、魚類養殖事業者は植物プランクトン濃度が低い漁場を好みますが、それが最良の養殖環境条件というわけではありません。藻類の濃度が非常に高くなった場合特に、魚類養殖にリスクをもたらす可能性があります。
藻類ブルームは植物プランクトン増殖の危険な一面として、あらゆる種類の養殖事業者にリスクをもたらす可能性があり、いくつかの異なる要因で有害になる危険性を秘めています。場合によっては、藻類の急速な増殖は、すべての栄養素が使い果たされ、太陽光が低透明の水によって遮られてしまうことで、急速かつ大規模な生物の死滅被害をもたらすこともあります。死んだ藻類が酸素を必要とするバクテリアによって消費されるため、非常に低い酸素濃度になってしまうことも一因です。また、藻類の特定の有毒種が非常に急速に増殖すると、被害が深刻化する可能性があります。この有毒な藻類は魚類や貝類に有害である可能性があり、場合によってはそれらを消費する人々にとっても有害である可能性があります。藻類の異常発生は、2つの海流が出会う場所でよく発生し、一方は水温が冷たく栄養分が豊富で、もう一方は水温が高く栄養分が不足している海流です。豊富な栄養素と暖かい水温は、藻類の急速な成長に最適な環境を作り出すからです。
現在、有害もしくは養殖にとってプラスな藻類ブルームが発生する可能性のある場所を、2週間または1ヶ月前に予測できる新しいモデルが開発されています。クロロフィルのレベルを他の海洋環境指標とともにモニタリングし、藻類の異常発生を予測することは、養殖事業者の環境リスクを減らすために非常に重要なことなのです。
クロロフィルは、すべての養殖事業者にとって考慮すべき重要な指標の一つです。栄養素、溶存酸素、二酸化炭素レベルといった他の水質指標の変化のサインとしても機能します。これまでは、ほとんどの事業者にとって測定が難しい指標でしたが、UMITRON PULSE(ウミトロン パルス)を活用すると、近くの養殖場のクロロフィル濃度を簡単に確認することができます。日々クロロフィルをモニタリングすることは、魚類、貝類、海藻類の養殖事業者にとってきっと役に立つはずです。
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■前回のPULSEブログ「水温」
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