あさひ市で暮らそう@宇水涼麻

千葉県北東部太平洋沿いにある旭市の応援小説です。景色、面白いお店、美味しいお店、楽しい…

あさひ市で暮らそう@宇水涼麻

千葉県北東部太平洋沿いにある旭市の応援小説です。景色、面白いお店、美味しいお店、楽しい人たちを紹介していきます。リアルと空想が織りなすハーモニーを楽しんでください。

最近の記事

あさひ市で暮らそう77話 古来の

 旭市中央郵便局の向かい側にある緑の広場が広がる公園は、金網で仕切られた中に本物のSLがその黒々としたツヤツヤボディーを余すことなくさらけ出しどっしりと構えている。時代を超越した迫力をヒシヒシと感じる。  真守はSLの横に備え付けられたベンチに慣れた様子で座ると少年のような目でそれを見つめた。  数ヶ月前にはその金網の中に入っていく作業着の老年紳士二人がいた。二人は真守の目の前でSLをキレイにしていく。 『だよなぁ。屋根があるとはいえ外に展示されているのにキレイだなと思

    • あさひ市で暮らそう76話 扉がない

       楽天堂はイオンタウン建設時から深く関わり、現在もイオンタウン一階中央付近で『めとはな』というシェアキッキンショップと『デイサービスわだち』を経営している。  デイサービスわだちはこれまでにない様式を取り入れた施設だ。  それは、ほぼオープンであること。    まず一つ。一番目につきやすいのは、食事を作るキッチン。人通りに面してガラス張りで、職員が調理をする姿だけでなく、利用者であるおばあちゃんおじいちゃんがイオンタウンのお客に丸見えだ。  もう一つ。扉がない。施設

      • あさひ市で暮らそう75話 軽快とは言い難い

         竜王まつりから数ヶ月前の話。春に袋公園で開催された『こども花まつり』で自分が作詞した『いがっぺ音頭』が多くの人が笑って聞く歌であったことに喜びを感じた水萌里は次はあさピーの歌を作りたいと考えていた。あさピーは言わずと知れた旭市のマスコットキャラクターだ。 「子どもたちが踊ってしまうような歌にしたいわ」  水萌里は笑顔を浮かべながら詩を書き始めた。 『お日様浴びたトマトたち 子どもの定番オヤツだよ みどり輝く野菜たち みんなの健康見ているよ 海の恵みの魚たち

        • あさひ市で暮らそう74話 キテレツな

           マルシェを開催したいと考えたローカルチャレンジャー二期生。だが、水萌里自身に出店できるのはない。だから水萌里は舞台の裏方をやることにした。  舞台と聞いて水萌里が頼ったのは『Sometimes』の甲斐となおである。甲斐は快く音響担当と出演を承諾してくれた。 「竜王まつりの雰囲気で大丈夫ですかね?」 「もちろん! あの盛り上がりがいいと思います!」 「あのときは司会の方がいましたけど、今回は?」  竜王まつりではモンゴルマンが司会として積極的に舞台を盛り上げていた。

        あさひ市で暮らそう77話 古来の

          あさひ市で暮らそう73話 マックウィーンとラミレス

           初夏の暑い日。洋太は国道126号線を干潟駅から東に向かって疾走していた…………自転車で。疾走していても余裕で鼻歌を歌いながら周りの景色を楽しむことができる洋太は急ブレーキをかけて止まった。危ないので皆様はおやめくださいね。  洋太が見つけたのは真っ赤なボディーに大きな目の付いた車! カーズのマックウィーンだ! …………ではなく……いや、本当にカーズ風なのだけどもちろん、洋太がそれを知るわけもないし、車の額には『MOCCA〜モッカ〜』と描かれていた。  派手な車好きの洋太

          あさひ市で暮らそう73話 マックウィーンとラミレス

          あさひ市で暮らそう72話 ファッションの初手

          「お前ら、後ろから見ると笑えるくらいそっくりなんだけど」  川上少年は友人から言われたそのからかいの一言にプライドが傷ついた。目立つことを良しとしていた中学校生活の中で週末のプライベートでの出来事だった。誰かと一緒であることは目立つことと相反する。ガンガンと頭にショックを受けた川上少年はその友人の追加の一言で雷に撃たれたような衝撃を受けた。 「服の色くらい別のにしろよ。わはははは!」  隣を見ると自分と似たような地味目色のシャツに安いジーパン。 『そうか…………。洋服

          あさひ市で暮らそう72話 ファッションの初手

          あさひ市で暮らそう71話 古きを愛する

           モンゴルマン斎藤とチカオと井上は地図を見ながら感嘆の声をもらした。 「こんなに協力してくれるなんて嬉しいな」 「ああ。予想以上だね」 「作品が足りるか心配なくらいだよ」  満面の笑みで話しているこの三人は『あさげー』事務局のメンバーである。あさげーは旭市を芸術で元気にしていこうというコンセプトでモンゴルマン斎藤が立ち上げたグループだ。  モンゴルマン斎藤については是非36話をお読みいただきたい。  あさげーアーティストの中で数名は小説内で紹介させてもらっている。

          あさひ市で暮らそう71話 古きを愛する

          あさひ市で暮らそう70話 おひテラ同窓会

           ローカルチャレンジャーがきっかけで『おひさまテラス』のイベントを知った水萌里は、そこで行われる読書会に参加することにした。  読書会は前館長永井大輔の発案で、第一回目は『グッドライフ・幸せになるのに遅すぎることはない』が課題図書に選ばれた。  水萌里はその企画の数日前に知ったので数ページほどしか読む時間がなかったのだが、大輔がそれでもいいというので遠慮がちに参加を決めた。  読書会には『おひさまテラス』の六千四百冊に上る蔵書の管理をしているというかがみとなかむらも参加

          あさひ市で暮らそう70話 おひテラ同窓会

          あさひ市で暮らそう69話 正体不明の主催者

           海上地区にある『遊戯場ヴィーナス』の駐車場においてとあるイベント第一回目が大成功をおさめた。  一夏はそのイベントにいつものごとくフラフラと行ったのだが、そこで多くの人に同じ質問をされた。 「このイベントすごいんですけど、主催者さんをご存知ですか?」  一夏は「ハナワさんのお顔は存じているし、ドラム缶リメイクのアイディアが面白い人ってことは知っているけど…………。 あ! あさひの芸術祭実行委のメンバーさんよ」と困り顔で答えることしかできない。  そのイベントとは『

          あさひ市で暮らそう69話 正体不明の主催者

          あさひ市で暮らそう68話 四季を楽しむ散歩道

           六月、今年もまた『川口沼親水公園』のハナショウブ(『あやめ』という表示をしていることもあるが、あやめは水辺に自生しないのでここではハナショウブとさせていただく)が見頃を迎えた。1500株といわれるその様子は清々しさと清らかさを見せつける圧巻な風景である。紫と白のコトラストを支える緑も美しいしくその間に見える水面がキラキラしてエフェクトを加える。  真守はその景色を楽しみながらも懸命に足を前に出す。あやめが咲く水辺を過ぎてくる風は冷たくて気持ちがいい。 「ほっ ほっ ほっ

          あさひ市で暮らそう68話 四季を楽しむ散歩道

          あさひ市で暮らそう67話 龍王伝説

          「私! 旭を元気にする歌を歌うユニットさんを知ってます!」  あさげー定例会議で勢いよく挙手をした水萌里が喜んで協力することにしたのは5月26日、飯岡しおさい公園で開催される『竜王まつり』だ。  飯岡は『竜王』に見守られている。 「いつ見てもかっこいいなっ!」  ある日の早朝、洋太は防波堤に描かれた龍王を見てニカリと笑うとその壁を登って海を見つめた。 「海の大神様に似ていらっしゃるのかなぁ……」  水平線の手前が大きく揺れて、まるで洋太に挨拶をしているようにきらめ

          あさひ市で暮らそう67話 龍王伝説

          あさひ市で暮らそう66話 ボッチって知っていますか?

           旭市は千葉県産落花生か全国に普及することになった始まりの街である。  みなさんは秋になるとピーナッツ畑に現れる円錐状の塊を見たことがあるだろうか。周囲1メール高さ1.5メートルほどの大きさのものがいくつも並ぶ様子は心を和ませる。  その円錐状のものを『ボッチ』とか『豆ぼっち』と言うのだが、実はそれ、千葉県の方言だって知ってる?  ということで、今回は『ボッチ』のお話です。  ☆☆☆  ある晴れた日の土曜日、みらいファームの企画の一つであるリトルステップの手伝いをし

          あさひ市で暮らそう66話 ボッチって知っていますか?

          あさひ市で暮らそう65話 農家と子どものつながりを

           NPO法人みらいファーム代表のミカは「農家と市民をつなぐ」活動をいつも考えている。  その一つが月に一度の『おすそわけ食堂』だ。一般的な『子ども食堂』としての姿だけではなく、農家からお心づけの野菜を分けていただきそれを材料として野菜の美味しさを伝えていく。ミカのそのような活動に協力してくれる企業によって肉や調味料も調達できている。  豚肉を提供する『アサショウ』は『旭食肉協同組合』を経営しており、その甘くて美味しい豚肉は毎月味を変えおすそわけ弁当になっていく。 「ベー

          あさひ市で暮らそう65話 農家と子どものつながりを

          あさひ市で暮らそう64話 若夫婦 快走す

           慎重に管理された巨大なハウスの中で、遠くまで続く畝から伸びる活き活きとした緑の大きな葉っぱ群をサチコは嬉しそうに見つめた。 「日差し、ありがたぁい」  日焼け対策をバッチリ決めたサチコは収穫とツル下ろしのためきゅうりジャングルへと消えていく。お気に入りの音楽を聞きながらきゅうりに話しかけるサチコのきゅうりへの愛が株たちに届いていく。  有機肥料と土作りにこだわった奈良ファームのきゅうりは甘み、旨味、みずみずしさが最大限に引き出されていてえぐみがない。    「本当

          あさひ市で暮らそう64話 若夫婦 快走す

          あさひ市で暮らそう63話 つぶつぶなもともと 

          「旭市を伝える何かをしたい」  これは昔から旭市などの千葉県東総地区に住まう人々よりも、『移住者』と言われる方々がよく考えることだ。旭市はとてもいいところなのだけれど、その良さが当たり前すぎて『何が良いのかわからない』とか『何もない田舎だ』と考える人が多いように思う。だが、この地域に移住してきた人たちはその素晴らしさを理解したうえで移住先として選んでいるのだ。まさに『岡目八目』である。  有馬健太は十年以上前に旭に来た移住者だ。都内で生活している時に匝瑳市での田んぼプロジ

          あさひ市で暮らそう63話 つぶつぶなもともと 

          あさひ市で暮らそう62話 こだわりの〇〇

          「外行きたあああああい!」  なぎさは空に叫ん…………でも誰にも届かないので隣で調理に励む母親にうったえていた。ここは神宮寺にある『やき鳥屋でんえん』の調理場である。眼前に広がる広々とした田園に叫んでも誰も応えてくれるわけがない。――あら、店名の由来ってこれかしら? 今度店主様にお会いしたら聞いてみます――  何度か聞いたその愚痴に母親はため息を吐いた。  幼い頃のなぎさは店の近くにある小学校に通っていた。田んぼの間を抜けていく通学路は気持ちいいほど真っ平らで遠くにある

          あさひ市で暮らそう62話 こだわりの〇〇