ケベックのバンド・デシネ紹介③フィリップ・ジラール『Tuer Vélasquez(ベラスケスを殺す)』
フィリップ・ジラール(Philippe Girard)はケベック・シティー出身のバンド・デシネ作家。キャリアの初期にはSpirou誌(ベルギー)にも参加しています。
『Tuer Vélasquez』は実話を元にした作品で、1983年、中学生だった作者が目撃した、ブノワというカトリック司祭による性加害をテーマにしています。
ブノワのモデルは実在のカトリック司祭、ドゥニ・ヴァドボンクール(Denis Vadeboncœur)で、児童への性的虐待のかどで、1985年にケベック、2005年にフランスで収監されています。
ケベックで服役後の1987年、フランス・ノルマンディー地方に移り住んでふたたび司祭になっています。「えっ?いいの?」と思いますよね。カナダ側の教会が彼の過去の所業について警告したにもかかわらず、採用されたようです。
2000年、未成年への性加害により逮捕。服役中の2010年、70歳で死去。
作品のなかでブノワはベラスケスを「独創性のない退屈な画家」、ピカソは「慣習を打ち壊した改革者」として位置づけ、自らは後者であるとして異常な行為を正当化します。
新しい秩序のため、ベラスケスを殺さなければならない。それが彼の主張でした。
主人公も一度は納得しそうになりますが…
ブノワが主催する青少年の家で主人公は、仲間の少年が性的に虐待されるのを目撃してしまいます。
難を逃れた主人公は帰宅し、母親に青少年の家での出来事を打ち明けます。
時は流れ2000年、テレビ局でイラストレーターとして働く主人公は、ブノワがフランスで逮捕された報を聞くのでした。