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ケベックのバンド・デシネ紹介②アンドレ・マロワ(作)、ミシェル・エルマン(画)『Débarqués(上陸者)』

アンドレ・マロワはケベック在住のフランス人作家。作画担当のミシェル・エルマンは『Mile End』と『Nunavik』という作品を読んでいたので、作画もするんだ~と興味を持って取り寄せました。

すてきな構図!構図はね!

ジルとジャン=フランは、複雑な事情で家族に捨てられたダウン症のココと車椅子のウィンストンを離島の「施設」へ送り届けるという、いかにもヤバそうな仕事を請け負います。道中のさまざまなトラブルを経て仲間意識が生まれかける車内ですが、積み荷への感情移入は禁物。4人の奇妙なロードトリップの行き着く先は…。

のび太の目(3 _ 3)はユニバーサルなマンガ表現なのだ!

読んでいて少し驚いたのが、21トリソミーすなわちダウン症のココ(目が(3 _ 3)の彼です)を指してmongolという言葉が使われていること。かつてダウン症は、外見がモンゴロイドに似ているとされmongolismeと呼ばれていましたが、最近さすがに見聞きしなくなっていたので。

そもそもこの運び屋たちは言葉遣いがよろしくない設定です。どうせわからないだろうと高をくくって、送り届ける2人のことを「積み荷(colis)」と呼んだりします。mongolも、カジュアルな場面では今も使われている表現なのだろうと推測されますね。マンガでしか学べないこともある。

以下にストーリーの核心部分を書きます。ネタバレを気にしない方はお読みください。



離島へのボートにはライフジャケットが1つしかないため、まずはココを運び、続いて車椅子のウィンストンを運びます。やっとの思いで離島に着いた4人ですが、「施設」はもぬけの殻で、ココとウィンストンを待っているはずの医師が見当たりません。さっさと町に帰りたいジルとジャン=フランですが、さすがに障がいをもった2人を放置できないため「施設」に1泊し、翌日までに医師が戻ってこなければ4人で引き返すことに決めます。

翌日になっても医師は姿を現しません。無理やり4人でボートに乗り、岸に戻ろうとしますが、案の定ボートは転覆。ジャン=フランはひとりで、ココはウィンストンを担いで岸に泳ぎ着きますが、ジルは力尽きて亡くなってしまいます。

車椅子を無くしひとりでは動けないウィンストンを見捨てて、ココと2人で町に戻ろうとするジャン=フランに激怒したココは、ジャン=フランを殴り殺した後、車内に残されていた携帯電話で緊急通報し、救助を待つのでした。

ココ、やるじゃん

物語の冒頭とは力関係が逆転する、インパクトのあるラストです。

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