見出し画像

能町みね子『結婚の奴』と『男の皮』〜恋愛を介さないパートナーシップをめぐって

衆院選を控えて、同性婚や選択的夫婦別姓について考える絶好の機会でもありますが(選挙がなくても考えているよ!という方、ナイスです🤝)、現在クラファン中の『男の皮』もこういったテーマと決して無縁ではありません。言うまでもありませんが、ここに書く内容はすべて私個人の考えです。

『男の皮』はまず、着ると男性になれる皮というぶっ飛んだ設定があり、そこが大きな魅力であることは疑いようがありませんが、大枠としては、家父長制という旧弊を問い直し新しい形の幸せを追い求める痛快なストーリーになっています。ちなみに、こういった点をあえて気にしなくてもエンタメとして十分すぎるほど面白いのでそこはご安心ください。

そして、私も含めすでに『男の皮』を読んだ勢の多くが、「物語の着地もすごいぜ…!」と思っています。ただ、このポイントをネタバレせずに紹介するのはほぼ不可能なため歯切れの悪い感じになってしまうのですが、読後感や、何が自分に刺さったかという面から考えたときにすぐ思い浮かんだ作品があります。こちら!

能町みね子著『結婚の奴』

ロマンティック・ラブ・イデオロギーから離れたパートナーシップ

第一声は「ただいま」なんだろうと考えた――ゲイの夫(仮)と、恋愛でも友情でもない二人の暮らしをつくるまでのつれづれ。

平凡社 作品情報より 

家父長制とロマンティック・ラブは同義ではないものの切り離せない部分があり、そして、どちらかに乗っかれずにいると今の日本ではまだまだ不便というか、妙にガッツが必要とされる現状だと感じています。

『結婚の奴』というか『ウェブ平凡』での連載「結婚の追求と私的追究」を読んだときの私の気持ちは、「そうじゃん!こういうのあっていいじゃん!っていうかあっていいに決まってるけど詳らかにしてくれてありがとう!!尊すぎ~~!!」でした。私はシスヘテロですがロマンティック・ラブにまったく乗っかれていないので、いたく興奮しました。

『男の皮』についても同様で、冒頭こそ「皮」に意識を持っていかれるものの、中盤からは主人公ビアンカ/ロレンツォが理不尽な世の中に果敢に挑みかかるダイナミックな物語が展開します。そしてラストは「は?え?そうか、そうなのか!!全然アリだよ!!いいと思う!!」と思わせてくれる爽快なものでした。

…ネタバレせずに『男の皮』の後半を紹介するのは、これが限界です。

『結婚の奴』は、個人的に強い思い入れがある作品で、軽い気持ちで引き合いに出したくないという迷いが私の中にありました。ただ、『結婚の奴』に感銘を受けたという方に是非『男の皮』を読んでいただきたく、そして感想もお伺いしたいので、急ぎ記事にしました。両方の作品を読んだ方とあれこれ話す機会を作れたらなー。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?