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“子どもの安全”を知らない大人が、 正しい知識を学ぶこと

子どもの傷病予防活動を行う「NPO法人 Safe Kids Japan」理事長であり、緑園こどもクリニック院長でもある山中龍宏さんには、事故を防ぐために大人ができることをお聞きしました。

診察が終わった静かな病院で、ぎゅうぎゅうになりながらインタビューさせていただいたことを思い出します。

2020年夏、多くの海水浴場が閉設を宣言したり、外出を控える人も多いと予測されていますが、すでに悲しい海の事故を何件も耳にしています。そんな中、わたしたちにできることはなんだろうか?改めて考えるきっかけになればと思います。

本インタビューは、2018年〜2019年度、旧サイトにて公開したものです。

2018〜2019年にかけ、海のそなえ事務局では海や子どもの安全に関わる事業を行っている7名の方にお話を伺いました。

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プロフィール
NPO法人 Safe Kids Japan 理事長 山中 龍宏さん

1974年東京大学医学部卒。東京大学医学部小児科講師、焼津市立総合病院小児科科長、こどもの城小児保健部長を経て、1999年より緑園こどもクリニック院長。1985年9月、プールの排水溝に吸い込まれた中学2年女児を看取ったことから事故予防に取り組みはじめた。子どもの事故はaccident(予測できず、運命的なもの)ではなく、injury(予測でき、予防可能なもの:傷害)であり、予防には社会全体が取り組む必要があるという考えのもと、様々な角度から活動を行う。現在はNPO法人Safe Kids Japan理事長も務める。


国際組織として子どもの傷害予防の啓発活動をしています

ー現在、おこなっている活動内容について教えてください。

山中:

子どもの事故は、我々医者だけでは予防できない。溺れ、やけど、転倒転落、誤飲など、事故原因を大人が理解し、社会全体でそなえなければならない。そのために必要なのが啓発団体です。


1988年に世界で先駆けて米国で設立された、事故による子どもの傷害予防を行うためのNPO法人が2005年に国際組織となり、日本でも2014年から活動を開始。そのNPO法人Safe Kids Japanは、縁あって私が理事長を務めています

たとえば校庭に設置されたサッカーゴール転倒による事故を防ぐためのチェックを全国へ呼びかけたり、実際の事故事例を元にした動画を配信し、傷害予防の啓発活動を行っています。

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海外との安全対策レベルの差は、安全に対する考え方が原因

ー活動の中で、特に注力されていることは何ですか?

山中:

私は約30年前、医師としてプールの排水溝に吸い込まれて死亡した女児を看取りました。以来ずっと悲しい事故を予防したいと思って活動しているんです。

たとえば今の日本は、海での危険や安全なあそび方を子どもに伝える役割の所在が、とても曖昧なんですよね。学校は家庭が教えるもの家庭は学校が教えるもの、と思っている。啓発の空白を埋めなければ、事故は減らない。

そのために教育機関に連携を求めようとしているんですが……なかなか難しいですね。海外では器具などを利用して安全な環境を作ってから子どもたちが泳ぎます海外と日本の安全対策の差を埋めるためにも、ライフジャケットの使用を呼びかけるなど、地道な活動が必要ですね。

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子どもの事故を減らすため、社会全体の流れを変えたい

ー今後、活動をどのように展開していく予定でしょうか?

山中:

小さな子どもの保護者に向けてきた啓発活動を、今後は子ども自身……小学校高学年から中学生、高校生にも行いたいですね。成長するにつれ、保護者がいない場合でも、子ども自身が身を守る術をそなえることが必要だからです。

そういったことを実現するためにも、組織を超えた連携拡大も目標のひとつ。すでに人間工学の研究施設や技術の研究所、行政、メディア、企業、自治体などと手を組んで活動を行っていますが、これからはさらにつながりを強化し、傷害予防に努めたい

子どもの事故は家庭や学校だけの責任ではありませんからね。社会全体の責任です。みんなで子どもの傷害予防に取り組む世の中にしていきたい、そう願っています。

傷害予防は「伝えた」から「伝わった」活動への転換を!!

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ー事故を起こさないために、わたしたち大人ができることを教えてください。

山中:

危険だから気を付けよう」と子どもに伝えただけでは事故を防ぐことはできません。きちんと子どもが理解して、ライフジャケットを着用するなどの行動が必要です。傷害予防は“伝えた”だけではなく、“伝わった”かを保護者が確認する必要があります。

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子どもの命を守るために、大人全員で事故を予防をする。あわせて子どもたちへの啓発活動もおこない、社会全体で考えや行動を変えていかなければならない。改めて実感したインタビューでした。
私たち海のそなえ事務局は、世の中の海辺の事故をゼロにするため、これからもさまざまな情報発信をおこなっていきます。