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結婚するとかしないとか、出来るとか出来ないとか

「なんで、マリちゃんは結婚しないの?」

その日の集まりは既婚者3名、独身2名(わたしとマリちゃん)。久しぶりに会って、みんなが近況を報告しあっているとき、突然結婚したばかりだったケンジがのたまった。私は衝撃を受けた。

年に1度か2度、仕事を通じて会うか会わないかの間柄の集まりだった。私は驚きのあまりツッコミを入れた。「え〜!?なにそれ、どういうこと?若干上から目線じゃない〜?」隠しきれない苛立ちが嫌味となって現れてしまったのは否めない。するとケンジはつづけた。

「だって〜、マリちゃんは結婚できそうなのにしてないから。」

まさかのカウンターパンチ!私は結婚出来なさそうだから、してなくても納得できるが、結婚出来そうなマリちゃんがしてないのは納得できないと??それはそれでとんでもないこと言ってない??これは被害妄想かもしれないけど、フォローのつもりが墓穴ほってないですか?ケンジ???マリちゃんも終始驚いて、私と目を合わせ、どう返事していいのかわからないという顔をしていた。

その日私は納得できないままケンジの一言を抱えて帰った。

何日経っても納得のいかなかった私は、あの場に居合わせた既婚の友人にあの発言をどう思ったか聞いてみたが、特になんとも思っていなかったことに私はさらなる衝撃を受けた。私が過剰反応なのか??突然世界の理がわからなくなってしまった私は、身のまわりで緊急アンケートを行った。

結果は、既婚者のほとんどが気にも留めなかった。そして独身者は違和感ないし苛立ちを隠さなかった。既婚者だとこの違和感を理解してもらえないことにも衝撃を受けた。

なんでこんなにあの発言が許せなかったのか??原因がありすぎて、わけがわからなくなった。そして違和感の理由を考察することにした。

理由1:誰もみな結婚して当然と決め込んでいて、しないからには何らかの理由があると思っている

結婚するのが普通なのにしないのはなぜだ?昔は皆、そういう”世間”の価値観の中で生きていた。そしてそれを受け入れて、踏襲して生きてきたケンジは、それを受け入れて従わない側に素直に疑問を持っているのかもしれない。でも考えてみて欲しい。ケンジはたまたま結婚したいと思う相手に出会えて、相手もケンジと結婚することを受け入れてくれたが、これはそんなにたやすいことではない。特に海外生活を送り、今後日本に戻るのか海外に残るのかわからない状態では、お互いに条件が会う人に出会うのは難しい。90年代のトレンディドラマでもあるまいし、「俺/私と一緒に海外/日本に住んで欲しいんだ」と言われて喜ぶ人ばかりではない。「え?じゃあ俺/私の仕事はどうなるの??」今は男も女も働いてるし、それぞれのキャリアがある。こういうのは縁と運も大きい。たまたま出会える人もいれば出会えない人もいるのだ。自分は出会えて結婚できたからといって、そういうケースばかりではないことを一切想像していないらしいところに腹が立つのだ。本人が主体的に「結婚しない」と決めているわけではないのに、なぜか尋ねられても困る。こっちが訊きたい。

理由2:何の考えもなしにデリケートなことに踏み込んできた

結婚するしないは、現代では各個人に委ねられている。両親の仲が悪かったり、虐待されていた経験があったり、”家族”に対して辛い経験がある人の中には手放しで結婚したいと思えない人もいるだろう。また、世の中には子供を産みたくても産めない事情を抱えている人もいるし、そもそも子供が好きじゃない人だっている。そのあたりの価値観が合うパートナーと出会えたら結婚することもあるだろうけれど、そういう理由で結婚をする気がない人もいるだろう。結婚しない理由について尋ねる時、相手がそういう理由を抱えている可能性を考慮しないといけない。それでも訊くのか?そもそもそんな繊細な話を尋ねて良い間柄ですか?一度考えてから訊いて欲しい。

大して近くもない距離感のどうでもいい人に限って不躾にデリケートな話題に踏み込んでこようとする。不妊に悩んでいた友人が、その日初めて会ったような人たちに「ねぇ、どうして子供つくらないの?」とずけずけ訊かれるのを何度も目撃して怒りで頭が痛くなった。

そういう事柄を話してこないのは話したくないからだし、話したいと思うような相手には打ち明けてくるだろう。親友にも言いたくないことだってあるし、それでも心配だからつい尋ねてしまうことはあるかもしれない。でもそういう時に相手の気持ちを慮って遠慮がちに訊かれるのと、話の肴として不躾に初対面で訊くのとは訳が違う。

相手との距離感をつかむことなく温まっていない間柄でそんなことを訊く奴らは、相手のことを一切思っていない。それが頭にくるのだ。


こうやって、何故こんなにも頭にきたのか考えてみると、大分腑に落ちた。要するに相手の想像力のなさ、というより想像することを放棄した言動に驚いたのだ。だけど、こうやって想像してから言葉を選ぶのが当然だと思っている私も、想像しないで思いついたまま発言する人のことまでは想像できていなかった。ある意味では人のことを言えないのかもしれない。本当に世の中にはいろんな価値観をもったいろんな人がいる。自分の生きてきた世界とは全く違うバイアスで物事を見ている人もたくさんいるんだと。当然と思ってなんの問題もなく結婚し生きてきた人の中には、結婚しない・出来ない人が理解できない人もいるかもしれない。

私のことで言えば、死ぬほど結婚したいと思っているわけではないけれど、このままでいいのかもわからない。一人でいるのが楽で最高!と思う日もあれば、一人で生きていくことに不安を覚える日もある。本当にコロコロ気が変わる。ZARDもびっくりの揺れる思いを身体中感じていたからこそ、ピンポイントで刺激されて感情的になってしまったのかもしれない。

自分で結婚しないとか決めてるわけではないけど、結婚”出来ていない”自分に劣等感を感じてる自分がどこかにいるから、あの発言を攻撃的に感じてしまったのかもしれない。

結婚してもしなくても、な時代だ!と声高に叫んではいるけれど、所詮は私も”世間”の価値観に縛られている一人なのだ。そんな中途半端な自分を分かっているからこそ、一般的な価値観に反発心を覚えてしまうのかもしれない。

本当の意味で自分がその価値観から自由になれたら、何にも気にならないんだろうな。

まだまだ修行が必要です。



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