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ブレードランナー(1982)が気持ち悪くてがっかり
数年前にライアンゴスリング主演でブレードランナー2049が公開された時、私の周りのブレードランナー(1982)のファンたちは口々に「ゴミ」「なんじゃありゃ」と不快感を表した。前の方が絶対に良かったし、比べ物にならない!!と。特に当時デートアプリで知り合った人はかなりのファンで、一番好きな映画だと熱く語っていた。
過去作を観ていなかった私は、「そんなにいいなら古い方を観てからみようかなー」と思って探したが、当時はネットフリックスにも入ってなかったし、むしろまだ上がってもいなかったと思う。結果いつの間にか劇場公開期間が終わり、忘れてしまっていた。
自粛期間が終わり、仕事が始まったばかりで、3ヶ月ぶりに5日間も働いたので体がびっくりしたのか、週末になっても出かける気力さえ残っていない始末。ひたすら寝たものの、夜寝られないと困るのでそろそろ動画でもみるか、、とネットフリックスを開くと出てきた、古い方のブレードランナー。2049の方はだいぶ前から上がってたけど、古い方を待ってたよ!!!とちょっとテンションが上がり、早速鑑賞してみた。
え?なにこれ?キモいんだけど??無理なんだが?
あまりにもカルト的人気を誇り伝説的に語られている映画なだけに、とんでもなくガッカリした。これのなにがそんなに良いのか??
まず全体にお話のスピードがスローペースすぎて中だるみするし、映画の最初にスターウォーズ並みの長い説明があるだけで、描写がわかりにくい、、、。そして何より、主人公らしき人物:デッカード(ハリソンフォード)に魅力のかけらもない!!!、、、ので、多分彼は主人公じゃなかったんじゃないかと思い始める。
遺伝子操作で作られたレプリカントと呼ばれる人造人間が、自分の短い寿命を延長させるために植民地惑星から地球に逃走してきて、デッカードが彼らを始末しなくてはならない、というところからお話は始まるのだけれど、もはや本人の意思と関係なく作られて、問題を起こしても困らないように数年の命でプログラムされていて、言うことをきかないと消される、レプリカントの方が主人公なんじゃないかと思えてくる。反逆の物語。
作り手側の思惑もあって、視点を変えればどちらが正義なのか?ということを問うてくるような作りになってるんだろうとおもうけど、それにしてもデッカードクソすぎる。
とにかくキモすぎて許せなかった問題のシーンを説明せずにいられない。
自分がレプリカントだったと突然知らされて、ショックで逃げていたレイチェルが、デッカードの家に来てピアノを弾いている時、隣に座ったデッカードがレイチェルの頰にいやらしめのキスをかます。彼女が体を引いて拒否し、家を出ようとしたところ、追いかけて目の前でドアをバタンと閉める。
怖ぇよ!!!
とりあえず、デッカードは今すぐにでもセックスしたくなって我慢できなくなったのか知らないけど、彼女は明らかに拒否して家を出ようとしてるのに、帰宅を阻害。怖すぎ。そして窓際に追い詰めて、「キスしてと言え」と強要。
ありえない。
嫌がる彼女にしつこく言葉を重ねる。「キスしてと言うんだ」。
、、、前提として、自分が本物の人間だと思っていたのに実はレプリカントだったと知ったばかりで色々動揺してるだろうし、少なくとも追いかけられる身分だったのにデッカードを救ったりしたし、彼に対して全く気持ちがゼロであったとまでは言わないが、それにしても相手が明らかに嫌がったのに「いいから俺の言うことを聞けよ」的なマッチョな男の征服欲が見えて、ぞっとした。女を思い通りにすることにファンタズムを感じてる男が喜びそうな描写!!80年代では当然だったか知らないけど、とにかくぞっとする。吐き気がします。
これを見せられてからはもう。主人公への嫌悪感しかなく。集中もできなくて。だめだー。うへぇ。
あの時代にこの途方もない未来都市の描写ができた(欧米人にとって異国情緒の手っ取り早い表現であろう日本語のネオンや超高層ビル郡、文化も人種も混ざっている”風”の街とか)のは、当時とんでもなく斬新だったろうし、いろんな映画に影響を与えたであろうことは逆輸入的に?現代の映画を見ていて気づくけど、それ以外はちょっと。。。
主要な登場人物は全員白人だしね。街を彷徨う名もなき人たちはアジア人がいたり、混沌とした世界観で未来的な感じを出したかったのはわかるけど、レプリカントも全員白人だったことから、レプリカの元にする人間も白人だけだったということになる。そこから白人至上主義的な時代を更に感じさせられちゃったかな。今なら多方面に考慮して多様なキャスティングをしないとまずいって風潮があるけど、昔はそこまでの配慮はなかっただろうしね。
最後のシーンすら、「俺のことを愛しているか?」と訊く始末。「愛しているわ」とのお返事をいただきましたが、なし崩し的に相手をモノにしただけで、なんの情緒も感じられなかったお二人の逃避行に一ミリも気持ちが動きませんでした。天照大神が隠れた岩くらい動かねえ。真顔で鑑賞終了。
多分、小さい時にこの映画を見たらそれなりに衝撃をもらえることになったのかもしれないけど、時代が変わりすぎて今の私にはガッカリな作品となりました。
私の中で系統としては未来世紀ブラジルと同じ感じだけど、ブラジルの方がかなり不思議な世界観で、後味がすごいというか、記憶にがっちり残るかな。多分ブレードランナーに影響されたであろう新しい作品たちがもっとエンタメ性を重ねて現れて、そちらの方を先にたんまり観た世代としてはガッカリの一言でした。
そしてこれまでブレードランナーを激推ししてくれた男性陣にちょっと疑いの目を向けてしまう自分がいます。
「あのレイプまがいのラブシーンに違和感を抱かない価値観なのかな??」
え??私だけ??と疑問に思って探したら、いました、同じ感覚の方!嬉しい!!
日本の方で、2049の方の感想も書いてらっしゃいました。⬇︎
でも見る限り、日本のサイトでは、ぱっと見この方くらいしかレイプまがいラブシーンを指摘してる人が見つからなかったので、「嘘だろ!?」と思って英語で検索した結果、出るわ出るわ。やっぱりその辺のリテラシーが違う。そして特にこれ⬇︎
内容を読んで、そう、そうなの!!と理解者を見つけたかのような高揚感。笑
読みやすい文章で上手だなー、このブロガーさん、と思ったら、ロジャー・イーバートさんという、有名な映画評論家の方だった。無知は怖い。笑
この方は、最初に映画を見た当時には例のシーンに特に違和感を感じていなかったようで、ある日このシーンの問題点を指摘している記事を読み、「え?合意のもとだったとおもったけど?!」と思ってもう一度見直したら、これはまずい!とびっくり仰天した、ということをお話しされてました。主人公のイメージが初見から180度変わったようで、彼はヒーローだったのではなく、Vilan(悪者)だったのだと。100%合意。
デートアプリで知り合った人もそうだけど、この映画を激推ししていた男性陣が改めて今この映画を見ると違和感を抱くのかどうか、気になるところ。違和感を抱かない人はちょっとどうなのかと、、、。
映画の感想で強く思うところがあると、ついいろんなレビューを見て同じ感想を持った人がいないか探しちゃいます。映画館を出て友達と感想を言い合うみたいな感覚で楽しくて。自粛期間にこの癖がヒートアップしました。
てことで、2049の方も、ちょっと見る気が失せてきたなー。うーん。暇な時にでもみようかなー。