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「そして、ただ暗闇だけが残る」

悲しみを火にくべて
夜道を歩き出しながら
ふと、財布を忘れてしまったことに気がつく
けれどもう後戻りもできず
そのまま歩いていくうちに
結果としてこれでよかったのだと
私はもう何も持たないのだと思いなおす

行く手には人がいるだろうと思ったのに
街灯の下、群れているのは獣ばかりだった
求めることはやめようと思った矢先に
こうして求めては裏切られる
戒めなくてはならない
私の希望はもう死んでしまったのだ
私は彼女の死体を床下に埋めて
家に火をつけたのだから

私には行くあてがなかった
だから見つけなければならなかったのに
灯り、光、女、なんでもいい、熱のある何かを
そして何も見つからないまま
引き返すにはあまりに遠くへ来てしまった
あげく私はひとりぼっちで
獣の声におびえている

ふっ
と風の音がして
蝋燭の火が消えた
そしてこごえる私と
ただ暗闇だけが残る

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