放棄されたFallen_Aの残骸
2014年の今頃、私はゲーム開発ツールであるUnityの勉強を兼ねて、一つのプログラムを作成しようとしておりました。
結果としてそれは完成されず、ぼんやりした空想と、穴だらけの骨組み、ばらばらの素材だけを残して放棄されました。主な理由はプログラミングにおける大幅な技術不足と、飽きっぽい性格、慢性的な腰痛などによるものです。
しかし最近、改めてその素材たちを掘り返してみたところ、中にはいくらか悪くないものもあり、またこの失敗を今後の糧とするために、私が空想していたものについてどこかで形にしておく必要があるように思われました。
そこでこの場を借りて、放棄されたプログラム「Fallen_A」の概要と、そのために製作した画像、楽曲、メモなどを公開しておきたいと思います。
散漫なテキスト群ではありますが、しばしの間、存在しないゲームに想いを馳せていただければ幸いです。
なお、ここに提示するゲーム内容などはあくまで理想と妄想であって、実現にはほど遠かったことを改めてお伝えしておきます。
【概要】
ユーザーは少女の姿をした主人公「A」を操作し、縦方向に伸びた不思議な空間を探索する。
多少のパズル要素や進行度などがあるが、基本的には鑑賞して・触って楽しむ、環境ソフト的なものを目指していた。
【ステージ構成】
主人公は地表からWonderlandに向かって落ちていく途中であり、すべての穴を抜けてWonderlandにたどり着くことがゲームとしての最終目的である。
1ステージは上下がループ構造になっており、ループを抜けて下に降りることで、次のステージに進める。ループを解くには、ステージ内のオブジェクトを順番に操作していく必要がある。
↑テスト用のステージ。
【ビジュアル】
手書きの2D素材を3D空間に配置する、紙芝居的な画面を目指していた。
理想としては、テニエルの古典的なアリス世界に幾何学的なモチーフを加えて、バウハウスとかロシアアバンギャルド的なクール感をかもし出せればいいなとうっすら思っていたが、それを口実に絵的なリソースをなるべく減らそう(サボろう)というのが本音だった。
時間と技術が許せば、操作キャラクターである「A」はなめらかなアニメーションをする予定だった。今は左右合わせて6枚ほどの画像が貼り替えられるだけである。
【登場キャラクター(≒オブジェクト)】
・Fallen_A、あるいは「A」(主人公)
操作キャラクターである、不思議の国のアリス風の格好をした少女。
口が悪い。ゲームの進行や操作に合わせて、文字で色々なことをつぶやく。
・Running_B
ステージ上を転がり回る白い立方体。Aは彼を追って穴に落ちた。幸せの香りがする。
アクティベートすると、パズルのヒントを示すことがある。
現状では実装ミスにより空中を飛びまわっている。
・Cheshire_C
笑い声と文字だけの存在。Aの過去や内面を示唆する。
・March_H、Mad_H
それぞれステージ上の賑やかし。近づくとBGMが豪華になる。
原作のお茶会にはもう一匹なにかいた気がするが、思い出せなかったので後回しにした。
・Invincible_J
触れるべからざる恐ろしいもの。
アクティベートすると、ステージ全体がJモード(アクションモード)に変わる。隠し要素として登場する予定だった。
【操作】
WASDキー:前後左右への移動
Spaceキー:ジャンプ
Z、Xキー:画面を左右に回転させる
その他のキーには、頭文字に応じたアクションが割り振られる予定だった。
例:
B=bigger 巨大化する。
K=Kick キックしてオブジェクトを移動させる。唯一実装できた機能。
M=Music 音楽のオン/オフ。
Q=Queen 王冠を生成する。キックして遊ぶ。
今は王冠のかわりに味気ない立方体が生成される。
V=Vorpal 剣を抜く(Jモード時のみ)。
JモードではAの衣装も鎧に変わって、怪物Jバウォック相手に切った張ったの大立ち回り……などと妄想していたが、そんなん絶対無理だろうと思ってはいた。
【サウンド】
本作では常に背景で流れているようなBGMではなく、ステージ上のオブジェクトがそれぞれ独自のサウンドを発しており、それらに近づくことで楽曲が現れていく。
具体的には、楽曲のそれぞれのパートを各オブジェクトに分割して配置する。例えば、Mad_Hは狂気じみたメロディを発しており、Invincible_Jは激しいドラムの音を発している。時計は常に一定のリズムを刻んでいる。
彼らのサウンドは近づくと大きくなり、遠ざかると消える。
楽曲はいくつか作ってみたが、プログラム的な実装方法は難しそうなので後回しにしていた。
○サンプル楽曲1(演奏パートが徐々に増えていく)
○サンプル楽曲2
【ストーリー】
明確な物語・テーマは存在するが、作中ではっきりとは語らず、画面内のテキストやステージの変化などから推測させる。
提示される情報は、Aの本名がアリスでないこと、ここが現実の世界でないこと、Aが本当は少女ではないかもしれないこと、Wonderlandに近づくにつれて時間が遅くなっていくこと、遠くで誰かが叫んでいること。
走っていく白兎、そして彼の向かうWonderlandは、Aにとって何かの象徴であるということ。などなど。
【スクリーンショット集】
テストステージの1階。中央に穴が開いており、テスト用の球体や謎の文字が上から下に落下し続けている。
ジャンプして飛び込めば、Aも同じようにループ落下を楽しめる。
中二階。テスト用に作ったよくわからないものがいろいろ置いてある。
石板の裏に回ると、意味ありげな文章が書かれている。
半透明の床がある二階。キック動作のテスト用に転がした球体がある。
キック時のAのセリフは検閲されました。
中空にぽつんと配置された、テーブルとMHふたつ。
ティーパーティのテストエリアになるはずだったが、いまのところ何の機能もないのでただ転がっている。
最後に、隠されたJの部屋。
あまりにも貧弱なテクスチャの焚き火らしきものが置かれている。
隠し要素は完成してから作れ、という教訓を感じずにはいられない。
<おわり>