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小海 淳
2016年6月17日 00:29
海へ向かう電車に乗っていた。アルミニウムの手すりに頬を寄せて、自分が手に入れた自由の冷たさを感じた。そのために引き換えにしたものたちを、窓の向こうにいくつも見つけた。家々の灯り。笑いあう親子。きっと作りかけの夕食の匂いが、換気扇から外へ流れている。 それは私がずっと夢見てきたはずのものだった。けれど、結局手には入らなかった。人にはそれぞれ生まれ持った手のひらがあって、私の手のひらは小さくて、小