書評『人はアンドロイドになるために』
・初出2017年「ちくま」
・石黒先生と飯田さんの共著、非常にSF色が強い
・アシモフの『われはロボット』のオマージュを匂わせる構成
使い古され手垢にまみれた言葉が、まるで初めて聞く珍しい言葉のように思える瞬間がある。例えばそれは、優れた文学者や詩人たちが既存の単語と単語を組み合わせ、錬金術のように作り出したフレーズに触れたとき、あるいは、言葉を覚えたての子供と、意味の通じない奇妙な会話を交わしたとき。
数年前、小説の合間に取り組んでいた科学ルポの仕事で、アンドロイド研究者、石黒浩と出会ったときにもそうした瞬間があった。
どうしてアンドロイドを作るのか? そう尋ねると彼はこう言った――自分は人間のことがわからない。だけどもし、自分が作ったアンドロイドが社会に受け入れられて、人と同じだと認識されたら、そのアンドロイドのなかに人間の定義が書かれているはずだ――と。
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