幼稚舎にコネや縁故は存在するのか⑤高額寄付者のケース
幼稚舎を受験するうえで、頻繁にささやかれる『コネや縁故がないと合格できない』という噂。その真相は『あれば有利に働くが、合格を確約できるコネや縁故は存在しない』という結論で間違いないと言っていいでしょう。では、コネや縁故はどのように有利に働くのか、解説していきます。
今回は、高額寄付者について考察をしたいと思います。言い方を変えれば、お金をいくら積めば幼稚舎に入学できるのか、という真相に迫ってみたいと思います。
1.「770万円」では到底不可能
以前、週刊誌から以下のような記事が出回り、関係者の間で話題となりました。一見すると、「770万円の賄賂で幼稚舎の合格を斡旋した」と読めますが、読み進めるとそうではない事が分かります。
《慶應幼稚舎65人合格》お受験有名塾が賄賂斡旋「770万円」【証拠音声&見積書入手】【全文公開】
要約すると、とある受験塾が『幼稚舎65人合格』という謳い文句で生徒を集め、幼稚舎とは無関係の私立小学校の合格を口利きするといった名目で770万円の見積もりを出してきた、という内容です。当然ながら、幼稚舎側も文春の取材に対し、『特定の幼児教室や塾と関わりを持つことは一切ない』と回答しています。
そして、幼稚舎は寄付金についてこのように明記しています。
2.いくら積めば有利に働く可能性があるのか
これまで噂されてきた幼稚舎にまつわる寄付関係の話は以下のようなものがあります。
・体育館の建設費用を負担した
・全ての教室にクーラーを設置した
・通学路に歩道橋を設置した
・某社長が数十億の寄付をした
ただし、これらの寄付自体が試験前に行われたものか、入学後に行われたかも含めて、その真実を知り得るのは慶應義塾関係者のごく一部のみです。
これまでの幼稚舎出身者や慶應義塾関係者の話を総合すると、数億円規模の寄付の申し出があった場合は、考慮の対象になりうると考えられます。そのような規模感の寄付をする場合、当然のことながら幼稚舎や慶應義塾基金室のみならず、塾長・常任理事・理事などの中枢と面会することになります。その中で、『どのように役立ててほしいか』というヒアリングがありますが、『〇年後に子どもが幼稚舎の受験を検討していますので、より良い環境の整備に充ててほしい』といったリクエストは当然可能です。無論、この面会が合格の確約を意味する訳ではありませんが、担当理事から舎長に話がおりてくることは想像に難くありません。
3.すべては"慶應義塾にメリットがあるか"
見事入学を果たした子どもの同級生の中には、『あれ、何でこんなお子さんが』という生徒さんが入学されている事も珍しくないと言います。その場合、そのお子さん自身が光り輝いていたというよりは、慶應義塾に入れておく事で大きなメリットがある、という判断がなされたと推察する方が賢明でしょう。
私立学校ですから、そのような経営的な側面からの判断もあって当然です。数億円の寄付をできる余裕のある超富裕層が慶應義塾のファンになってくれることを考えると、少なくとも向こう16年は強力なバックアップや支援を得られる可能性がある訳ですから、1名の合格枠を割くことは学校側にとってそれほど大きなコストにはならないでしょう。
4.勇気のいる決断
ただ、これ程までにメディアが発達し、裏口入学に対する世の中の厳しい目があるなか、合格できるかどうか確証のない超高額寄付をするには、かなりの勇気が必要です。オーナー企業といえど、数億円の規模感のお金を一存で動かす事には事業継続のリスクもありますし、ましてやある程度の規模の企業ともなればそのような個人的な使途には許可は当然おりません。個人資産が数十億あれば可能性は無きにしも非ずですが、そのような超富裕層は現実的にはひと握りです。
また、特に慶應義塾は品位を重視する学校でもありますから、いくら高額寄付をしたからと言って慶應義塾や幼稚舎のレピュテーションを損なうリスクのあるご家庭を優先するという事も考えづらいです。「〇千万円積んだのに落とされた」あるいは「〇千万円で合格を貰えた」というような情報をSNSに簡単にリークされてもおかしくない時代ですから、数千万円程度のお金と引き換えに慶應義塾がリスクを取るという事は無いと考えてよいでしょう。つまり、万が一超高額寄付をしたとしても、親自体に合格するためには慶應義塾への深い理解や、品位が備わっている(=合格するために必要な資質を有している)必要があるという訳です(上述の通り、子の資質はこの限りではありませんが)。
5.まとめ
このような超高額寄付をされるご家庭があったとしてもごく少数ですから、ライバルとして意識するには取るに足らないという事を改めてお伝えしたいと思います。高額寄付を検討できるくらいの余裕があるのであれば、乳幼児期から幼児教室やお受験塾でみっちりと鍛えた方が合格への近道となるでしょう。ただ、鍛えすぎてお子さまを型にはめてしまうと、幼稚舎が求めている生徒像からかけ離れてしまうという点には注意が必要ですが。
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