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幼稚舎にフリーで合格するタイプ④運動神経が抜群にいい

どのような子がフリーで幼稚舎に合格するのか―。我が子を幼稚舎に入れるために、幼稚舎が求めるお子さま像を正しく理解し、その素養を身に付けさせるという逆算的なアプローチもときには有用です。

今回は抜群の運動神経をもっているお子さまの姿に迫りつつ、運動試験で試される能力についてもフォーカスしたいと思います。

1.まず獣身を成して、後に人心を養う

幼稚舎を検討した事がある方なら、一度は目にするであろうこの言葉。創立者である福澤諭吉先生は、教育の鉄則として学ぶことよりもまずは獣のような健全な身体を作ることの重要性を強調しました。この教えに従い、幼稚舎では昔から身体を鍛えることに重点を置いた教育を進めてきました。伝統的なものに以下のようなものがあります。

・1,000メートル完泳
・学年ごとに設けられた縄跳びの課題
・順位が張り出される体力測定
・クラス対抗のスポーツ大会
・練習のために通常授業が振り替えられる運動会
・3学期の毎朝のランニング
・本気度の高いクラブ活動
などなど

1933年から慶應義塾長を務めた小泉信三氏が残した「練習は不可能を可能にす」という言葉を胸に、生徒は各々の目標に向かって日々練習を重ねています。

2.幼稚舎の運動能力試験

そんな幼稚舎においては、運動能力試験もある程度の習熟度が求められます。幼稚舎の運動能力試験は大きく分けて2つ。1つ目は、模倣運動です。準備体操、マークジャンプ、飛行機バランスなどが頻出です。2つ目はサーキット。連続運動とも呼ばれるこの試験は、けんけん、スキップ、ギャロップなどを組み合わせながらスタートからゴールまで駆け抜けます。

これらの試験において、どのような子がテスターの目を引くのでしょうか。「運動神経が良い」とは、どのようなことを指すのでしょうか。私は以下のように考えています。

・体の使い方が上手い。
テスターは、ケンケンやジャンプをしている様子を見ただけで、運動神経の良し悪しが分かるといいます。足首やつま先、ひざのバネを使えているか、腕のフリで勢いを付けられているか、あるいは制御できているか。体の使い方は、ある程度の訓練で上達はしますが、できる子は誰かに教わらなくとも自然とうまく体を使える傾向にあります。

・体幹が強い。
飛行機バランスは頻出ですが、こちらもその様子を一目見ただけで体感の強さが分かります。まっすぐ水平に伸びた手足、身体は微動だにせずに一点を見つめる力強い視線。これができるだけで、かなり目立ちます。毎年出ると分かっている訳ですから、飛行機バランスの完成度低いと幼稚舎側から「その程度の覚悟か」と思われてしまう可能性すらあると思っておいた方がよいでしょう。体幹は姿勢などにもあらわれますから、普段の生活から意識しておきましょう。

・反射神経がいい。
サーキットでは、膝立ち、長坐、体操座りなどさまざまな姿勢からスタートします。この時、次の動作にモタつかずに進めるかどうかをテスターは見ています。2〜3人で一斉にスタートしたとき、スタート直後に大差が開くこともありますから、ここで俊敏性を発揮できるとテスターの目を引くでしょう。のんびりしているお子さまでも、練習を重ねることで改善がみられる領域ですから、上記の姿勢以外にもうつ伏せ、仰向き、正座などさまざまなポーズから走り出しの練習をしておきましょう。

3.運動能力にみる独立自尊

運動能力試験は、その言葉の通り運動能力を測るテストではありますが、もう一つ重要な側面があります。それは、「自分で考え行動する」という慶應義塾が最も大切にしている精神を測るという点です。幼稚舎の運動能力試験は、ただ運動機能が優れていれば良いというものではありません。一度の指示で動きを覚える理解力、細かな動作の違いを見抜く注意力、次の動きを考えながら別の動きをするマルチタスク能力、そして自分を信じて最後まで全力でやり抜く遂行力、これらが全て揃っていないとこなせない内容となっています。

これらに大きく直結するのは、自立しているかどうかということです。自分で物事を理解しようとし、その通りに自分で実行するためには、普段から頭を使って先のことを考えて行動しておく必要があります。誰かに言われないとできない、答えが分からないと諦める、他人の言いなりになっている、などの生活態度では、これらのテストで良い結果は望めないと断言できるでしょう。

幼稚舎の運動能力試験で、隣の人の様子を真似ておそるおそる正しい動きをしたお子さんよりも、間違っていても自分を信じて思いっきりやり抜いたお子さんの方が高く評価されると言われているのは、上記のような理由によるものと考えてよいでしょう。

4.まとめ

幼稚舎の試験において「運動神経が抜群にいい」が意味するところは、単純な動作を綺麗にできる、あるいは同世代の友達にできない事ができるということよりも、むしろ複雑な動作を間違えずに自信を持ってやり抜ける、というのが本質だと考えています。しばしば「幼稚舎は地頭が良くないと入れない」と言われますが、これは運動能力試験でも同様で、模倣運動やサーキットをお手本通りにこなす為には、頭の回転の速さ、記憶力、判断力などあらゆる知能面が試されているのです。

もちろん、同世代よりも優れた運動機能を持っているお子さんは、それだけ神経回路が発達している訳ですから、さらに指示理解の力や記憶力などを鍛えて幼稚舎の運動能力試験に備えれば、十分合格のチャンスはあると言えるでしょう。

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