
忍殺TRPG小説風リプレイ【カーム・ベースメント(その2)】
◆アイサツ
ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。
本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。
こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。
それではやっていきたいと思います!
◆本編
天候変更ダイス: 1D6 = (1)
奇数により悪天候寄りに。
7:冷たい重金属酸性雨。小雨。昼も夜もなくツェッペリンが空を圧し、ネオンが火花を散らす。
ムテキ電機はオムラの下請け企業の一つであり、かつては電子基板の設計・製造を委託されていたメガコーポだ。しかし、オムラがモーティマー・オムラの代になってからはロボニンジャなどの内製化が進み、他社への売り込みにも失敗したムテキ電機は時代に取り残されていった。
オナタカミを始めとする反オムラ連合にムテキ電機が声を掛けられなかったのは、そうした時勢の流れを読めない点がマイナスに見られたためであろう。ともかく、ムテキ電機はどこかで一発逆転のV字回復を決める必要があった。
「それがどうしてヨロシサンの機密情報を盗むことになんのよ。ムテキ電機はドライでヨロシサンはウェットじゃん。なんか役に立つのかしら」「ファッキン暗黒メガコーポの機密情報なんざどう扱ったってカネになるだろ。まァそれ以上にトラブルの元にもなるから俺たちがケツ拭く羽目になってるんだがよ」「そういうものなんですかねえ……」
セカンドチャンスたち3人はAAHMR値++++のサイバーレインコートを身に纏い、冷たい雨の中を進んでいく。「ちょっと急ぎましょ。午後から雨が強くなるって話だから」セカンドチャンスはフードを目深に被り、他の2人を急がせる。ちなみにこのコートは3人に因縁をつけてきた通りすがりのテクノギャングから好意で譲ってもらった物であるため、少々サイズが大きめだ。
「クソッタレの雨野郎。また靴を買い替えなきゃならねえぜ」アーコは視線を下に落とし、劣化して色落ちし始めた自分のヤクザシューズを忌々し気に睨んだ。「それも私がヤクザから貰ってくるって言ってるじゃん。その靴だってこの前買ったばっかりでしょ」「バカ。どこぞの馬の骨ヤローだか馬の糞ヤローだかの履いてた靴なんざ誰が使うか。舐めんなよコラ」「そういうものなんですかねえ……」
他愛のない雑談を続けるうち、セカンドチャンスたちは目的地である『ムテキ電機第二事業所』と書かれた看板のある小さな工場へ辿り着いた。工場の建物に人の気配は無く、明かりも点いていない。当然だ。この事業所は数年前に起きたジェネレーターの過剰運転爆発事故により廃棄されたのだから。
「といっても壊れたのは地上のライン部分だけ。地下にある資材保管所やUNIXルームは無事でそこに傭兵ニンジャが逃げたって話だったけど……」屋根のある場所に入ったセカンドチャンスはレインコートを脱ぎ捨て、コバに渡された資料の内容を思い返す。あの資料に書いてあったことが本当ならば地下への入り口を探さなければならないが……
「オイ、どうやらあのうらなり野郎がほざいてたことはマジだったみたいだぜ」アーコは火を点けようとしていた煙草を仕舞い、代わりにチャカガンを取り出して弾丸を込めた。彼女のサイバネアイは暗闇の奥に潜む鉄塊を既に補足していたのだ。
それは逆関節の脚を持っていた。それはサスマタとガトリングで武装していた。『ピガガ……ニンジャソウル検知な』それはセカンドチャンスたちを発見すると、不快な合成音声でアイサツした!『ドーモ、モーターヤブです。ここはムテキ電機の施設内であり、侵入者に対して投降は受け付けておりません』
ナムアミダブツ!オムラからの払い下げ品!あるいは下請け企業に対する強制購入品!警備用モーターヤブだ!「メイビー=サン!あなたは私とアーコ=サンの後ろに下がって!その代わり援護ヨロシク!」セカンドチャンスはメイビーに素早く指示を飛ばし、ハンドバッグから取り出したクナイを指の間に挟んで構える!
「ス、スミマセン!お二人ともお願いします!」メイビーは近くに積み上げられていた鉄製カーゴ群の陰に素早く隠れる!「イヤーッ!」「ザッケンナコラー!」セカンドチャンスとアーコはニンジャシャウトとヤクザスラングを放ち、ロボニンジャ目掛けクナイと弾丸を飛ばす!
◇戦闘1
◆モーターヤブ (種別:戦闘兵器)
カラテ 6 体力 12
ニューロン 3 精神力 –
ワザマエ 6 脚力 2
ジツ – 万札 6
攻撃/射撃/機先/電脳 6/6/3/3
◇装備や特記事項
ショック・サスマタ:
テック近接武器、ダメージ2(1+電磁1)
ガトリングガン・アーム:
銃器、連射6、ダメージ1、射撃難易度:NORMAL、バースト3x3
『●射撃スタイル:銃弾の雨』:
通常の射撃(連射6)かこの射撃スタイルか、どちらか片方をターンごとに選択する。
このスタイルは、視線が通っている3x3の範囲に対して自動的に1ダメージを与える(回避:HARD)。
『◉移動スタイル:跳躍移動』:
3マス以内の好きな地点へと、カンガルーめいた跳躍によって移動する。
飛行装置を持っているわけではないが、ルール上は『飛行移動』をそのまま使用する。
イニシアチブ
アーコ→モーターヤブ→セカンドチャンス→メイビー
『ピガーッ!』アーコの撃った弾丸は狙いたがわずヤブの脚部関節部へ命中!ヤブの装甲はRPGの直撃にも耐えるほど頑丈だが、関節部はそうはいかぬ!『モーターヤブは賢く強い!』しかしこの程度で機能を停止するヤブではない!ガトリングの銃口がアーコの方へ向けられる!
「イヤーッ!イヤーッ!」「イ、イヤーッ!」『ピガーッ!』弾丸の雨が吐き出されるより早く、セカンドチャンスのクナイとメイビーのスリケンがガトリング腕に連続で命中し、その衝撃でヤブは大きく体勢を崩す!
「シネッコラー!」BLAMBLAM!『ピガガーッ!』そこに追い打ちをかけるようにアーコが脚部関節狙いの銃撃!サイバネアイを搭載した彼女の射撃技術は弾丸を正確に敵の弱点へと叩き込む!『ピガガーッ!』たまらずヤブは転倒!BLATATATATATA!ガトリングが空目掛けて火を吹き、天井の一部を破壊!円形の穴から降り注ぐ重金属酸性雨がヤブに容赦なく降り注いだ!
「トドメヲサセー!」「ガッテン!」セカンドチャンスはクナイをタント・ダガーめいて逆手に持ち、装甲の継ぎ目に捻じ込むように突き刺した!『ピガガーッ!』テコの原理で開いた装甲板の内側に雨が入り込み、ヤブの制御基板をショートさせる!モーターヤブ沈黙!
◇1ターン目
アーコハンドガン:6d6>=4 = (2,2,3,4,6,5 :成功数:3)
モーターヤブ体力11
モーターヤブガトリングガン→1セカンドチャンス2アーコ:
6d6>=4 = (3,2,1,4,4,5 :成功数:3)
+1d2 = (1)
セカンドチャンス回避:6d6>=4 = (6,1,1,6,3,4 :成功数:3)
セカンドチャンスクナイ:7d6>=4 = (4,5,1,4,2,1,5 :成功数:4)
モーターヤブ体力10
メイビースリケン:2d6>=4 = (3,5 :成功数:1)
モーターヤブ体力9
◇2ターン目
アーコハンドガン:6d6>=4 = (3,4,2,6,4,1 :成功数:3)
モーターヤブ体力8
モーターヤブガトリングガン→1セカンドチャンス2アーコ:
6d6>=4 = (2,4,4,6,6,6 :成功数:5)
+1d2 = (1)
セカンドチャンス回避:6d6>=4 = (4,1,6,4,1,5 :成功数:4)
セカンドチャンスクナイ:7d6>=4 = (3,1,1,1,5,6,6 :成功数:3)
モーターヤブ体力7
メイビースリケン:2d6>=4 = (6,4 :成功数:2)
モーターヤブ体力6
◇3ターン目
アーコハンドガン:6d6>=4 = (2,1,1,2,1,4 :成功数:1)
モーターヤブ体力5
モーターヤブガトリングガン→1セカンドチャンス2アーコ:
6d6>=4 = (2,4,3,5,3,2 :成功数:2)
+1d2 = (1)
セカンドチャンス回避:6d6>=4 = (5,5,5,5,5,1 :成功数:5)
セカンドチャンスクナイ:7d6>=4 = (6,4,2,3,2,1,5 :成功数:3)
モーターヤブ体力4
メイビースリケン:2d6>=4 = (2,1 :成功数:0)
◇4ターン目
アーコハンドガン:6d6>=4 = (1,6,3,1,6,6 :成功数:3)
モーターヤブ体力3
モーターヤブガトリングガン→1セカンドチャンス2アーコ:
6d6>=4 = (6,4,5,3,1,4 :成功数:4)
+1d2 = (1)
セカンドチャンス回避:6d6>=4 = (5,4,3,2,5,1 :成功数:3)
セカンドチャンスクナイ:7d6>=4 = (4,1,2,6,4,3,6 :成功数:4)
モーターヤブ体力2
メイビースリケン:2d6>=4 = (5,6 :成功数:2)
モーターヤブ体力1
◇5ターン目
アーコハンドガン:6d6>=4 = (3,2,1,2,2,5 :成功数:1)
モーターヤブ体力0!機能停止!
戦闘終了
【万札:6】GET
「お、終わりましたか?」物陰から恐る恐る出てきたメイビーがセカンドチャンスの背中から停止したヤブを覗き込んだ。「アーン、メイビー=サン!めちゃくちゃ怖かったー!私、カラテ弱いんだってばー!」「アイエエエ……」緊張の糸が切れたセカンドチャンスがメイビーに抱き着き、メイビーはおずおずと彼女を抱き返す。
「スミマセン、セカンドチャンス=サン……あまりお役に立てず……」「そう思ってるんならもっとカラテ強くなってよー!ダークニンジャ=サンくらいー!」「アイエエエ……誰……」「ダエッテンジャネッゾコラー!」BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!「「アイエエエエエ!」」アーコが2人の足元に銃を乱射!
「こんな豆鉄砲じゃフラストレーションが溜まっちまってしょうがねえ!とっととニンジャをブチ殺しに行くぞ!」アーコは肩をいからせ、工場の奥へと進んでいく。セカンドチャンスはメイビーと顔を見合わせ、肩を竦める。メイビーは困ったように首を傾げた。
◇◇◇
天候変更ダイス: 1D6 = (3)
奇数により悪天候寄りに。
6:激しい土砂降り。交通事故処理のサイレン音がどこからか聞こえ、パトランプが瞬く。
ムテキ電機地下、オペレーター室。もともとはこの施設の長のものだったのであろう立派なデスクの椅子に座り、落ち着かないように身体を揺らす男が一人。魔術師的装いのニンジャ装束にオメーンを被った彼は、もちろんムテキ電機の重役などではなく、実際ニンジャである。
コンコン。入り口のドアを叩く音に、ニンジャの肩がびくりと跳ね上がった。ニンジャが返事をするよりも早く、ノックの主はドアを開けてオペレーター室にエントリーした。「ウインドハンド=サン。悪い報告だ。入り口に配置してあったヤブの信号が消えた」
「な、なんだと!?おい!大丈夫なのか!」ウインドハンドと呼ばれたニンジャは泡を食って立ち上がり、バッドニュースを持ってきた男に指を突きつけた。「話が違うぞ!ここで少し待ってれば報酬を払うと……とっとと約束のカネを払わぬか!」「俺に言うな。俺も雇われだ」
ウインドハンドの言葉を軽く受け流した男は武骨なサイバネの腕を組み、鼻を鳴らす。「気になるなら様子を見てきたらいい。少なくとも、フロッピーのデータが本社に送信完了するまで、俺もお前もここを動けない」「な、何故俺がそんな面倒事に出ていかねばならん!いいか!俺は誇り高き……」「……情けないニンジャだ。代わりに俺が行く」
サイバネ傭兵はウインドハンドの言葉に取り合わず、ホルスターからチャカガンを取り出し、ガンスピンを行った。「クローンヤクザを何人か連れていく。構わないな」「フザッケルナ!勝手な真似は許さん!」ウインドハンドがデスクに拳を振り下ろす。衝撃でデスク上のUNIXが一瞬跳ね上がった。
「貴様の役目は俺の護衛だ!クローンヤクザはそのための戦力だ!俺の命を守ることを最優先にして動け!いいな!」BLAM!パリーン!「ウオオッ!?」サイバネ傭兵の撃った弾が部屋の電灯を撃ち抜き、室内を暗闇に覆いこんだ。ウインドハンドは大袈裟に飛び退き、落ちてくるガラス破片を回避した。
「勘違いするなよウインドハンド=サン。俺はムテキに雇われた傭兵だ。お前の部下じゃない。そして雇い主にはデータを最優先するよう言われている。お前は二の次だ。いいな?」「グッ……分かった」「それに……いざとなれば、ここにはヤツがいる。問題無い」「分かった!分かったと言っている!しつこいぞ!とっとと行ってしまえ!」
ウインドハンドは乱暴に椅子に座り直し、ジェスチャーでサイバネ傭兵を追い払った。サイバネ傭兵はキツネ・サインを突きつけ、オペレーター室から出ていった。「くそう……なぜ俺がこんな目に!」ウインドハンドは再び拳をデスクに叩き付ける。衝撃でデスク上のUNIXが一瞬跳ね上がった。
ウインドハンドは首を動かし、部屋の奥に顔を向ける。部屋の3分の1ほどの大きさもある巨大な鉄檻。ウインドハンドの視線に反応したか、檻の中から獣臭さが混じった唸り声が返ってくる。それは餌の催促か、あるいはウインドハンドに対する侮蔑か、慰めか。
「くそう……くそう!」ウインドハンドは三度デスクに拳を叩きつけた。衝撃でデスク上のUNIXが一瞬跳ね上がり、デスクから崩れ落ちた。