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忍殺TRPG小説風リプレイ【グレイヴ・アンダー・ザ・グレイブ、フル・オブ・デス(その3)】

◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

 KRAAASH!DOOOOOM!KRAAAAAASH!『アイエッ!?』「ウオオッ!?」「ヌウッ!?」突如、地下駐車場の地面が円形に崩壊!イクサの衝撃と暗黒物質の荷重によって床が抜けてしまったのだ!『アイエエエエ!』「「「グワーッ!」」」悲鳴を上げながら地の底に吸い込まれていくオイランドロイドの生首!ばらばらと落下するヤクザたち!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは穴の縁に伸ばした手が辛うじて間に合う!落下阻止!

「へへへ!なんだこりゃあ!意外と深ェぞ!オイ!」デスドレインはアンコクトンを巨人の手の平のように操り、空中へ留まっていた。彼は右手を庇のようにして穴の底を覗き込む。

「この穴、外に続いてんのかァー!?ちょっと探検しにいってみるか!ヘヘヘハハ!」デスドレインはニンジャスレイヤーに挑発的な一瞥をくれ、ジゴクへ続いているかのような暗黒の中を悠々と下りていく!「……イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは意を決し、穴の縁を掴んでいた手を離す!そして、一切の光が差さぬ深淵へその身を投げた!

◇◇◇


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「……ア?なんだこりゃ?」デスドレインが降り立ったのはドーム状の巨大な地下空洞だった。それも自然に出来た洞窟のような空間ではなく、壁や床に鉱山めいた補強が為されており、デスドレインが降りてきた穴以上に崩落する様子も無い。地面には上から落ちてきたクローンヤクザたちの死体が積み重なっており、その頂点に物言わぬオイランドロイドの生首が添え物のように乗っていた。

 ポーン。『到着ドスエ』「お?」デスドレインは闇の中から聞こえてきたエレベーターの電子音とマイコ音声に顔を向けた。誰かが上階からここへ来たのか。エレベーターのシャッターが開き、光が闇を裂く。

『ピガ……ピガガ……電波が悪いな……ピガガ……』姿を現したのは先程とは別型の新しいオイランドロイドだった。彼女が足を踏み入れたのに反応して通路の両脇にあるストーン・ランタンの火が次々と灯っていく。『ドーモ、デスドレイン君。さっきぶりじゃん。ていうかなんなのここ?』

 オイランドロイドは手をひらひら振ってデスドレインに気安く声を掛けた。ブラインドが別のドロイドをハッキングしてここへ来たのだ。「俺が知るかよ。カビ臭えし、つまらねえとこだな……へへへ」デスドレインはクローンヤクザの死体をアンコクトンで吸収し、転げ落ちてきたオイランドロイドの生首を踏み潰す。

 と、その時。『デスドレイン君、あれ見て』「ア?」オイランドロイド……ブラインドが何かに気付く。彼女が指差す先、ストーン・ランタンの明かりが導く通路の奥、ところどころが朽ちかけた巨大なトリイゲートの下に立つ、赤黒のニンジャの背中があった。「なんだ、アイツも来てやがったのかよ」『なに見てるのかな?こっからだと見えないよ』

 ニンジャスレイヤーは背後から迫りつつあるデスドレインとブラインドの2人に気が付いていないのか、トリイゲートの中央部分に掲げられた古ぼけた木の板を見上げ、その場に立ち尽くしている。板には掠れた毛筆カタカナでこう書かれていた。『ナラク』と。

「これは……」ニンジャスレイヤーは驚愕に声を震わせ、トリイゲートの奥に目を向ける。ストーンランタンの明かりが徐々に暗闇を空洞の端へ端へと追いやっていき、やがてこの地下空洞の最奥に祀られているものが露わとなる。それはシメナワの巻かれた御影石であった。

 ニンジャスレイヤーは何かに呼ばれるような足取りで御影石へと近付いていく。彼は直感的に悟ったのだ。この空間は、そしてこの御影石は、自身に宿ったニンジャソウル、ナラク・ニンジャと何か深い繋がりを持っていると。

 ナラクとはかつて、このマルノウチ・スゴイタカイビルで行われたニンジャ抗争に巻き込まれた中流サラリマン、フジキド・ケンジに憑依し、災禍を撒き散らした恐るべき邪霊である。その後、多くの敵との交戦や味方と呼べる人物たちとの交流を経て、ナラクはフジキドの中で深い深い眠りについた。

 今やナラクがニューロンの内側から語り掛けてくることも、フジキドの精神を憎悪で塗り潰して肉体を乗っ取ろうとすることも無い。しかし、フジキドはナラクが完全に滅びたとは思っていなかった。むしろ、あのニンジャ抗争の日にも聞いた全ニンジャへ対する狂おしいほどの殺意に満ちた怨嗟の声が、今もなお脳裏に響いているように感じていた。しかもその声はニンジャとのイクサを経る度に強くなっている気さえするのだ。

 では、フジキド・ケンジはいったいどうするべきなのか?かつて彼の師であるドラゴン・ゲンドーソーが言ったように、この声が完全に聞こえなくなるまでイクサから離れて静かに暮らすべきなのか?あるいは邪悪なるニンジャたちと闘う力を取り戻すべく、ナラクの眠りを覚ますべきなのか?平穏か、復讐か。安寧か、エゴか。死んでいったフユコとトチノキは、そしてフジキド自身はいったい何を望んでいるのか?

 いずれにせよ、フジキドは妻子が殺された日のことを、壮絶なイクサの日々を、ニューロンの中で眠るナラクの声を、目の前の御影石を、無かったことには出来ない。おそらく、今こそ選択すべき時なのだ。フジキドにはその予感があった。フジキドは御影石へ静かに歩み寄る。

「イヤーッ!」だがその時だ!デスドレインが邪悪な植物の蔓めいたアンコクトンの触手を操り、ニンジャスレイヤーの無防備な背中目掛け伸ばしてゆく!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは振り返りつつスリケン3枚同時投擲!暗黒触手の先端が撃ち抜かれ破裂!

 だが追加の暗黒触手が次々とデスドレインから生えてくる!ニンジャスレイヤーは腰を落とし、その場で連続スリケン投擲の構えを取る!……しかし!「ヘヘヘハハハ!バァーカ!」「ヌウッ!?」アンコクトンの蔓はニンジャスレイヤーを嘲笑うかのように彼を素通りし、その背後にある御影石へと伸びていく!ウカツ!

 おお、デスドレインはいったい何をしようというのか!?数多の死を取り込み成長したアンコクトンがこの御影石に触れた時、いったい何が起きるというのか!?何かよからぬことが起きるのは間違いない!そしてそれこそがデスドレインの望みなのだ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは御影石へ全力スプリントする!

※全員のイニシアチブ値でダイスを振って、もっとも成功数が多かった者の勝利

ニンジャスレイヤー、デスドレイン、ブラインド:
10d6>=4 = (4,3,2,6,4,3,2,6,5,2 :成功数:5)
+11d6>=4 = (3,1,5,2,2,6,5,6,3,4,1 :成功数:5)
+13d6>=5 = (3,1,4,1,6,1,3,3,2,2,5,5,4 :成功数:3)

ニンジャスレイヤー、デスドレインの2人で振り直し

ニンジャスレイヤー、デスドレイン:
10d6>=4 = (2,1,5,3,4,6,4,1,6,3 :成功数:5)
+11d6>=4 = (6,2,6,3,4,4,2,1,4,1,3 :成功数:5)

振り直しても同値だったため、2人同時勝利とする。

 ニンジャスレイヤーの伸ばした指先と暗黒触手が御影石に触れたのはまったくの同時だった!次の瞬間!

「「グワーッ!?」」ニンジャスレイヤーとデスドレインは共に悲鳴を上げる!「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーは不可視の重圧に押し潰され、その場で膝をつく!「アバーッ!?」デスドレインはカウンターハッキングを受けたハッカーのように頭を前後に振って痙攣!『え?え?なにこれ?なにがどうなってるの?』現状が把握できぬブラインドはひとり混乱!

 デスドレインはアンコクトンを使い、御影石にDDOS攻撃めいて負荷をかけることで侵食を試みていた。しかし、脆弱な回線がハッカーのタイピング速度を妨げるのと同じように、今のアンコクトンを以ってしても御影石へ負荷をかけるには力が不足していたのだ。

(((……すべし)))(((……殺すべし)))(((ニンジャ殺すべし……!)))「アアアアアア!うるせえうるせえ!うるせえええええ!」デスドレインは御影石から逆流してきた超自然の力によってアンコクトンが取り込んだモータルの怨念を逆に利用され、そのニューロンを苛まれていた!デスドレインは両手で頭を掻きむしり、ニューロンに響く声を物理的に排除しようとする!それほどの激痛!

「アアー……!アアアァァー……!足りねえ……足りねえぞ!」『え?なにが?』デスドレインの上げた呻き声にブラインドが反応する。「ぜんぜん!足りねえんだよォー!」『だからなにが!?』「オオオオオアアアアアアアアア!」デスドレインが咆哮し、アンコクトンが応える!

「アンコクトン・ジツ!」

アーチ級アンコクトン・ジツ:
17d6=6 = (6,6,5,2,2,1,6,1,3,4,4,5,3,4,3,5,3 :成功数:3)
デスドレイン精神力11

◇◇◇

 マルノウチ・スゴイタカイビル中層階。普段は買い物客やサラリマンたちで賑わうフロアは今、ニンジャスレイヤーの名を騙るニンジャの手駒であるヤクザ部隊が起こした爆発騒ぎにより無人となっていた。

「つまらねえ任務に駆り出されたもんだぜ、なあバンカーソード=サン」「ああ、まったくだクレイフィスト=サン」否、無人ではない。逃げ遅れた犠牲者たちや散乱する商品を踏みしめ歩く2人のニンジャがいた。彼らの装束やメンポにはソウカイヤのエンブレムであるクロスカタナの意匠。その腰にはヤクザの生首が吊り下げられている。

 自分こそが真のニンジャスレイヤーであるという妄想に囚われたニンジャが起こしたマルノウチ・スゴイタカイビル爆破事件。この事件でネオサイタマの経済活動に悪影響が出ると、ひいてはソウカイヤの利益を損なうことになると判断されたことにより、ソウカイヤはニンジャ戦力を派遣。事件の解決に乗り出した。そして彼らは爆破事件の実行犯であるヤクザたちを全滅させ、命じられた任務を達成したのだ。

 しかし、ソウカイニンジャが民衆のヒーローとなることはない。「なあ、クレイフィスト=サン。ちょっと役得していかねえか」バンカーソードは掌に砂の刃物を形成し、メンポの下で舌なめずりした。「ヤクザを殺すだけじゃつまらねえだろ。逃げ遅れた一般市民を探してよお、甚振り殺そうぜ」「あ?なにバカなこと言ってやがるんだオメエ」

「そんなのするに決まってるじゃねえか!」クレイフィストはムテキ・アティチュードによって硬質化した拳を叩き合わせ、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。「だよな!それじゃあ競争だぜ!いいか?男は1ポイント、女は3ポイント、ガキは5ポイントで、女のガキはポイント倍点……」DOOOM……。

「……ア?何の音だ?今の?」「おい聞いてんのかよ!ルール説明してんだろうが!後でトボけて得点誤魔化そうったって……」「ウルセェぞバンカーソード、オメエをここで殺してやろうか?そうしたら何ポイントだ?ア?」「アア!?なんだお前、俺とやろうってのか!?ブッ殺して……」DOOOOOM!ZGA-TOOOON!SPLAAAAAASH!「「アババババーーーッ!?」」

◇◇◇

「なんだ、ありゃあ……」「うそ……」マルノウチ・スゴイタカイビルからやや離れた地点に存在する暗黒犯罪区域、ツチノコ・ストリート。この通りにある雑居ビルの屋上で戦闘を繰り広げていた2人のニンジャ、ブレードブレイカーとドラゴンチックはイクサの手を止め、スゴイタカイビルで起きた事象に目を奪われていた。

 轟音と振動、それから少し遅れてビルから噴き出したのは暗黒の巨大アメーバめいた粘性の物質だった。暗黒物質は貪欲な食虫植物めいてビル周辺を飛び回っていた報道ヘリやパトカー、救急車、避難民たちを次々に取り込み、ビルの周囲を渦巻く様にしてより大きく成長していく。

 マルノウチ・スゴイタカイビルが天を貫く不吉な黒い大樹へと生まれ変わり、漆黒の根を、枝を伸ばし、命を吸い上げていく。「……イヤーッ!」「ま、待てガキ!イヤーッ!」この世のものとは思えぬ光景にしばし呆然としていたドラゴンチックだったが、やがて弾かれたようにビルへ向かって駆け出し、遅れてブレードブレイカーも後を追った。

◇◇◇

「アアア……アーアーアー……」マルノウチ・スゴイタカイビル屋上。デスドレインはアンコクトンによって作り出した暗黒大樹の中をチューブめいて移動し、ビルの屋上……大樹の頂点へ出ていた。下界ではアンコクトンの触手が舌のように大地を撫で、ネオン街を黒に塗り潰していく。

「へへへ……楽しいなァー……」ニューロンを苛む激痛から解放されたデスドレインはアンコクトンで身体を持ち上げ、下界で起きている混沌と破壊と殺戮の光景を暫くそのまま眺めていた。

◇◇◇

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(((…………)))

 フジキド・ケンジの意識は無の中にあった。あの御影石に触れた瞬間、彼の視界は白一色に包まれ、意識がフラットラインしたかのようにぷっつりと途切れていた。彼は今、深海か宇宙のような無重力空間を寄る辺なく漂っていた。

(((すべし……)))(((殺すべし……)))(((ニンジャ殺すべし……)))

 海面か、あるいは星の輝きか、遥か遠くから放たれる銀色の光が声になってフジキドの耳に届く。

(((失われ……銀の……鍵……取り戻……)))

(オヌシは……誰だ……なにを言っている……?)ニンジャスレイヤーの問い掛けに相手は答えない。まるで一方通行のモールス信号めいた言葉だけが繰り返しフジキドのニューロンへ送られてきているのだ。

(((すべし……)))(((殺すべし……)))(((ニンジャ殺すべし……)))

 その時であった。フジキドのニューロンに、ある映像が浮かび上がる。(これは……!?)それは、今まさに外界で起きている惨事を遥か上の視点から見下ろしたような映像であった。アンコクトンの大樹がスゴイタカイビルを、その下界にある広場を、慰霊碑を呑み込もうとしている。

 ニンジャスレイヤーの肉体は今、マルノウチ・スゴイタカイビルの地下空洞にてアンコクトンの中に取り込まれている。すなわち、アンコクトンの中にあるモータルの怨念と共にある。

(((すべし……!)))(((殺すべし……!)))(((ニンジャ殺すべし!)))

「ニンジャ殺すべし!」

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 ……気が付くとニンジャスレイヤーは地下空洞の中にいた。周りを見渡すと壁や床が一面暗黒物質に覆われており、オイランドロイドが一体、首から下をアンコクトンに呑まれて機能停止していた。フジキドは御影石を見る。御影石は薄い銀の光に覆われており、アンコクトンの接触を拒絶していた。

「……」ニンジャスレイヤーは首を上げ、天盤の奥にあるものを、マルノウチ・スゴイタカイビルの屋上にいる者を見た。その瞳に憎悪の炎が宿り、ほんの一瞬、赤黒く燃えた。

グレイヴ・アンダー・ザ・グレイブ、フル・オブ・デス(その4)へ続く