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忍殺TRPG小説風リプレイ【グレイヴ・アンダー・ザ・グレイブ、フル・オブ・デス(その4)】

◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

◇◇◇

『ご覧ください!マルノウチ・スゴイタカイビルの周辺は地獄絵図となっています!これは欺瞞広告でもトレーラームービーでもありません!現実です!』粘性の暗黒スライムで覆われたマルノウチ・スゴイタカイビルの周囲をNSTVの報道ヘリが飛び回る。操縦士は時折ビルから伸びる暗黒の枝に絡めとられないよう、慎重に距離を保ちヘリを旋回させる。

 その時だ。DOOOOM!DOOOOM!KABOOOOOM!『ああっと!物凄い轟音です!オムラのマグロ・ツェッペリンがスゴイタカイビル目掛けて無謀な砲撃を行っています!巻き込まれた市民が犠牲に!暗黒メガコーポオムラの独断専行!我々は真実をお伝えしています!』会社の株主の息がかかったレポーターが芝居がかった口調で叫ぶ。現在砲撃を行っているツェッペリンはオムラ製ではあるがオムラ社の所有ではない。

 DOOOOM!DOOOOM!ツェッペリンの下腹部に装着された大型のキャノンが火を噴き、弾着点から半径10数メートルのアンコクトンが衝撃と高熱によってビルから剥がれ落ちていく。DOOOOM!DOOOOM!砲撃はビルの中層から上層へと弾着点を少しずつ上昇させていく。

 ……もしもこの場にニンジャ動体視力をお持ちの方が居られるならば、その弾痕を辿るようにしてビルの壁面をよじ登っていく人影が見える筈だ。「ヌンヌンヌン……アイエエエ……ハッキングしながら壁登るのしんどいよー」そう、地下駐車場からエレベーターで上階へと退避していたブラインドである。

 ブラインドは上階の休憩スペースで寛ぎながらオイランドロイドの視界を通し、デスドレインのジツが暴走する様を目撃していた。彼女は咄嗟にブティックのショーウィンドウに並んでいたオイランドロイドたちやソウカイヤが戦力として連れてきていたクローンヤクザを操り、肉と機械の防御壁を作ってアンコクトンに呑まれる運命を免れたのだ。

 だが、ブラインドが現状このスゴイタカイビルで起きているクライシスを脱した訳ではない。暗黒物質はデスドレインの制御すらも外れているのか、あるいはデスドレインがあえてそう仕向けているのか、ブラインドにも容赦なく迫っていたからだ。

「ヒドイ奴だよデスドレイン君は。一緒にボーリングに行ったり焼き肉屋に行ったりニセモノニンジャスレイヤー=サンを殺したりした仲なのにさ」ブラインドは素手でビルの壁に掴まりつつ、首から生えた肉のLANケーブルから放たれる超自然の無線電波によってツェッペリンの火器制御システムをハックする。DOOOOM!DOOOOM!こうして屋上への道を作っているのだ。

「お、ヘリコプターみっけ」ブラインドのLAN触手が捜査犬の鼻めいてひくつき、空を飛ぶNSTVの報道ヘリを指し示す。次の瞬間、

ブラインドハッキング判定:
24d6=6 = (2,6,6,1,3,5,3,2,4,4,5,2,3,4,5,5,4,3,2,1,5,5,5,4 :成功数:2)

 KABOOM!「「「アバーッ!?」」」ヘリコプターの中から爆発音とともに報道クルーたちが飛び出し、地上に向けて真っ逆さまに墜落していった。

「いやー、禅問答でもあったよね。ブッダが糸を垂らしてジゴクの男を助けてあげるラブストーリー。まさにそんな感じ。ラッキー」ブラインドはヘリの中にいたカメラマンの撮影用カメラをハッキングで爆発させ、レポーターとカメラマンを弾き飛ばしたのだ。クルーたちは遥か下界の地面に叩き付けられるより早く、暗黒大樹と化したビルから伸びる枝に絡めとられ、そのまま姿を消した。

(アイエエエエエ!?)ブラインドにヘリのコントロールを奪われたパイロットが操縦席で恐怖と混乱の悲鳴を上げている。「よっと、ほっと、難しいなこれ……」ブラインドはヘリを巧みに操り、アンコクトンの触手を掻い潜らせ、自分のすぐ近くまで来させる。

「ヨイショー!」彼女はそのままヘリに飛び乗ると、すぐにビルの近くから機体を離す。数秒遅れてヘリの飛んでいた場所を暗黒触手が撫でた。「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!」「ドーモ、ブラインドです。運転手=サン、ビルの屋上までお願い。着いたら起こしてねー」ブラインドはシートの上に遠慮なく座り、数秒で寝息を立て始めた。

◇◇◇

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ドラゴンチックの超高温のチョップが行く手を塞ぐ暗黒スライムを焼き払い、道を作る。マルノウチ・スゴイタカイビルへと近付くにつれて暗黒物質はその密度と体積を増していき、ドラゴンチックを拒む。「イヤーッ!」ドラゴンチックは首の折れた電飾マネキネコの上に着地し、アンコクトン・ジツによって引き起こされた惨事を見る。

◆ドラゴンチック(種別:ニンジャ) DKK:0  名声(ドラゴンドージョー):28 【カルマ:善】
カラテ    15   体力   18
ニューロン  8   精神力  10
ワザマエ   9   脚力   8/N
ジツ     4   万札   165

攻撃/射撃/機先/電脳  15/9/8/8
回避/精密/側転/発動  16/9/9/12
即応/緊急       5/4

◇装備や特記事項
 所持品: 『オーガニック・トロスシ』
 装備 : 『☆◉装束生成(ニンジャ存在感のオーラ読み替え)(標準的な)』
      『**アミュレット・オブ・クレオパトラ**』
 スキル: 『●連続攻撃3』『連射2』『●マルチターゲット』『●時間差』
      『◉◉タツジン(ジュージツ)』『◉トライアングル・リープ』
      『◉ドラゴン・カラテ(ドラゴン・トビゲリ読み替え)』
      『◉チャドー呼吸』
      『◉知識:ドラゴンドージョー』『◉交渉:超然』
 ジツ : 『☆カトン・ジツLV3』
      『★カトン・ドレスアップ(カトン・パンチ読み替え)』

生い立ち: 『○アーチ級ニンジャソウルの片鱗』

◆忍◆
ニンジャ名鑑#---
【ドラゴンチック】
 レンガ・ニンジャのソウルを宿した女ニンジャ。ユカノの手引きによりソウカイヤからヌケニンし、ドラゴン・ゲンドーソーの弟子となった。いつか両親の元へ帰るため、ソウカイヤと戦う。
◆殺◆

 アンコクトンは今もなおその勢力をますます広げている。漆黒の汚泥が建物を、道路を、下水を、そこにある暮らしを、営みを、命を喰らい、ネオサイタマを終わらせていく。「ひどすぎる……」ドラゴンチックは悲痛に顔を歪めた。

 この状況が誰かによって生み出されたものならば、なんとしても止めなければならない。だが、いったい何を、どうやって止めるというのか?もはやこれは少々のカラテやジツでどうにかなるインシデントではない。海を渡りたがっている人間が、バケツで海水を汲んで海の水を空にしようとしているようなものだ。そんな無駄な行為になんの意味があろうか?

「……それでも、やるんだ」しかしドラゴンチックは胸中に湧きかけた疑問こそ無駄だと断じた。百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ。百発のスリケンで倒せぬ相手には、一千発のスリケンを投げるべし。師の教えを胸に刻み直し、ドラゴンチックは電飾マネキネコの上から跳躍する。

ドラゴンチック連続側転判定:
9d6>=5 = (3,5,3,1,2,4,2,6,4 :成功数:2)

「イヤーッ!」Sizzle!Sizzle!カトンの炎で編まれたニーハイブーツはドラゴンチックが着地した地点のアンコクトンを瞬時に焼き固め、ドラゴンチックへの干渉を許さない。ドラゴンチックはそのまま暗黒物質の大地を灼熱の風となって駆けた。古のニンジャのように!

◇◇◇

「……つうことで、ヤベェ状況なんすよ。さっき言った通りに頼みますぜ。ASAPでなァ」『分かった、すぐに手配する。いいか、死神野郎やドラゴンチック=サンも依然として重要ターゲットのままだが、このフザけた事態を引き起こしやがった奴も確実にぶち殺せ。ASAPでな。いいなブレードブレイカー=サン?』「チッ、分かってますよソニックブーム=サン」

◆ブレードブレイカー (種別:ニンジャ)  DKK:2    名声(ソウカイヤ):32
カラテ    17	  体力   21
ニューロン  7		精神力  8
ワザマエ   13	  脚力   10/N(カタナ二刀流装備時はUH)
ジツ     1		万札   121

攻撃/射撃/機先/電脳  20/13/5/7
回避/精密/側転/発動  18/16/13/-
即応/緊急       3/0

◇装備や特記事項
 所持品  :『オーガニック・スシ』『オーガニック・トロスシ』『トロ粉末』『ZBRアドレナリン』
 スキル  :『●連続攻撃3』『◉連射3』『●マルチターゲット』『●時間差』
       『◉◉タツジン:イアイドー』『◉ツジギリ』『◉頑強なる肉体』『◉一瞬の勝機』
       『◉交渉:威圧』『◉知識:ヤクザの流儀』
 装備   :『伝統的フルヘルム』『高級ヤクザスーツ』
       『**イチガツ**(カタナ)』『**ゴクモントウ**(カタナ)』
 サイバネ :『▶︎ヒキャク』
       『▷オーダーメイドヒキャクカスタム(ブースターカラテ・ユニット読み替え)』
 ユウジョウ:【ソニックブーム:親密度2】

◆忍◆
ニンジャ名鑑#---
【ブレードブレイカー】
 ソウカイ・シックスゲイツのニンジャ。斬撃を打撃に変換する特殊なイアイドーの使い手。強い野心、地位への執着、残忍さを併せ持つ危険な男。
◆殺◆

 ブレードブレイカーは通話機の電源をオフにし、足元ににじり寄ってきた暗黒物質を避けて近場の適当なビルの屋上へと昇る。彼は首を上げて空を見る。アンコクトンによって覆われたスゴイタカイビルは天を貫き、非常に緩慢な速度でその建端を伸ばしている。この街の穢れた命を吸えばあんなクソのような樹が育つのか。ブレードブレイカーは嘲るように鼻を鳴らす。

 先を行ったドラゴンチックは既に暗黒大樹の幹に辿り着き、粘性の壁を垂直に駆け上っている。そのやや上ではNSTVの報道ヘリがどこか覚束ない飛行でビルの頂上へ向かっている。……ィィィィィイイン。ブレードブレイカーのニンジャ聴力は後方上空から聞こえてくるジェット戦闘機の音を捉える。そして次の瞬間!

ブレードブレイカー連続側転判定:
+11d6>=5 = (5,1,1,3,3,3,3,5,2,1,1 :成功数:2)

 キイィィィィィン!「イヤーッ!」ブレードブレイカーは弾丸めいて跳躍!空中で身体を捻り、足を空へ、頭を地へ向ける!「イヤーッ!」ブレードブレイカーは驚異的なバランス感覚と跳躍力によって裏返った状態で高速飛行していたVTOL機にまるで磁石めいて着地!VTOL機は再び裏返り、その背に直立するブレードブレイカーを乗せたままスゴイタカイビル屋上へと向かう!決戦の地へと!

◇◇◇

 暗黒の摩天楼と化したマルノウチ・スゴイタカイビル、その屋上。デスドレインは屋上の中央で大の字に寝そべりながら空を見ていた。自らが作り出した地上の喧騒を見るのに飽きたのだ。こうしている間にもビルの根元ではアンコクトンの黒い海が広がり続けている。

 しかし、そこで起きている殺戮も破壊も、まるでテレビの向こう側のことのように現実感が無い。犠牲者の悲鳴も聞けず、死にゆく顔も見れないというのは、デスドレインにとってひどく退屈だった。

「あん?」その時、デスドレインは不意に上半身を起こした。虫の知らせとでも言うべきか、デスドレインが追い詰められた時、危機が迫っている時はいつも「神様」が力を貸してくれる。実際彼は今まですべての困難を己の強運だけで乗り越えてきた。そして、これからもそうなるだろう。デスドレインは心からそう信じている。

 だからこそ、デスドレインはこの状況でも嗤うのだ。「なんでいるんだよ、テメェ」「状況判断だ」死神は鋭く、重い殺意を携え、短く答えた。

 この場を目指している3人のニンジャたち。その誰よりも疾く到着したのは、かつてこのスゴイタカイビルで妻子を失い、ニンジャを殺すニンジャとなった男、ネオサイタマの死神、ニンジャスレイヤーであった。

グレイヴ・アンダー・ザ・グレイブ、フル・オブ・デス(その5)へ続く