雨の日
しとしとと降り注ぐ街
雨が、濡れている
ときどき
長い風が吹いてくるから
ビルは
大きな傘にはなれない
古いスマホで
濡れた雨を撮ってはみるが
表情は暗く
その形が崩れている
街路樹は
沈んだ背表紙だ
表表紙は降り注ぐ街だから
不均衡な時間が
何となく、成り立つ
気配のようなものに
立ち止まる
一呼吸して、後ろを振り返る
声がしたからと
言い訳しながら、雨の日は
素直になれない日でもある
今日は、映画館の前が
待ち合わせ場所だ
プラットホームから
言葉を持たない者たちが
押し出されてくる
しとしとと雨が降り注ぐ街
相手に向かって
手を振るタイミングが
とても難しい
そんな日は
駅前の映画館で
映画を観るという事はなかった
今日は
新しい日になるかも
街には
百の幸せと九十九の不幸せが
同居している
と 言う人もいる
雨の日は、差し引いて
一つ残れば、それでいい