目尻の小じわに感じる32歳
今月は弊家誕生日ラッシュで、私、夫、エン様(子どものあだ名)の誕生日が重なっている。まずは私が誕生日を迎え、32歳になった。28歳は結婚式、29歳は妊娠、30歳は出産、31歳は転職と、変化の多い年が続いていた。32歳はしっかり腰を据えて仕事に取り組みたい。
誕生日当日は朝からフリー時間をもらって、上野まで行ってきた。友人に貰ったチケットがあり、国立西洋美術館へ行ってきた。美術館は人で溢れかえっていて、皆アートを求めているんだなと思った。
私は1人で気ままに展示を見て回った。子どもが生まれてから、集中力が減っている気がする。前は作品の前でじっくりディテールを見ていたのに、今では見れなくなっている。それでも自分のペースで歩き、うろちょろする子どもを見るのではなく、絵や彫刻を見ることで、心が癒されていくのを感じた。
エン様には素晴らしいお土産を見つけた。
スフィンクス、ラムセス2世、書記の像、ディスコボロス、パルテノン神殿のレリーフ、ヴィーナス、ダビデ、ピエタ、不空羂索観音像、阿修羅像、考える人、地獄門など、名だたる彫刻が載っている。かこさとしさんの文章で、なぜこれらの彫刻が「すばらしい」とされているのかもわかる。大人にも学びが多い本。
昼食を軽く済ませ、東京国立博物館へ行った。密教に関する特別展をしており、密教(真言宗)ファンの私はいそいそと足を運んだ。風信帖や高雄曼荼羅など、何百年も大切に守られてきた宝物を見ることができて大満足。
最近ベルばらを見たばかりなので「私の存在など、巨大な歴史の歯車の前では無にも等しい」というオスカルのセリフを思い出す。自ら歴史になるほどの大きな仕事、恒久的な仕事をしようと思う人が、未来を創っていく。私自身は「無にも等しい」の側だが、自ら歴史になっていく気概の人についてきたい。そんなことを思いながら博物館を後にした。
ふとトイレに行き、鏡を見ると目尻の小じわにファンデーションが溜まって線になっている。あぁ、これが32歳か、と思う。アイクリームを塗っているのに、嫌だなぁ。エン様の肌はさらさらつやつやなのが羨ましい。
夕方は家族3人揃ってお寿司を食べに行った。エン様は「おすし、おすし!」と朝から楽しみにしていた。「たまごとー、えびとー、」と選んでいる。
目尻の小じわが目立つようになったのは、エン様のおかげでよく笑うようになったからでもある。何か喋ると笑い、何かすると笑い、産前とは比べ物にならないほどよく笑っている。
32歳のうちに、この目尻の小じわはもっと深く濃くなるかもしれない。それはやだなと思いつつ、たくさん笑うことは保証されているようなもので、少し楽しみにもなってきた。エン様は明日、どんなことで笑わせてくれるだろうか。
≪終わり≫