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【介護】介護にはやっぱり上り坂がある


母が喜ぶことは、いろいろとあるけれど、やっぱり母は熱いお風呂に入りたいらしい。

10月に倒れて、それから本格的な介護に入り、ほとんどまる一月、母はお風呂に入れなかった。まだ正式な書類は届いていないけれど、どうやら介護申請した母には要介護2が下されるようだ。

こうなると、いろいろと手伝って頂けることが増えてくる。ありがたい。

で、お風呂介助のご紹介もあった。2階にバスタブを運び入れ、外からトラックで運んできたお湯を流し込む。自宅でも寝たきり状態でお風呂に入れる時代らしい。

けれど、母は嫌だという。

恥ずかしいという。

夏じゃなくてよかった。夏だったらこうはいかなかっただろう。

そうして、今日、母を3回目のお風呂に入れることが出来た。まだまだたかがお風呂でも我が家は大騒ぎになる。わたし以外の人の手が必要だし、時間もかかる。あらゆる環境が整ってはじめて母はお風呂に入れる。

初回と前回のお風呂は、抱きかかえるようにして湯船に入り、体を洗おうにも、椅子に腰かけることもなかなか難しかった。

ところが、12月に入り、かなり楽になった。まだわたし一人でのお風呂は無理だけれど、それでも母が椅子に座っていられるようになった。洗い場で両手でシャンプーすることができるようになった。両手を上にあげていられるなんて、前回は想像すらできなかった運動なのだ。

これは大きな変化だ。


リハビリも始まった。若くて優しい男性先生が家にきてくださる。席を外して隣の部屋で仕事をしていると、母の弾けるような笑い声が聞こえてきた。後で尋ねてみると、その先生のお子さんの写真を見せて下さっていた。なんとお優しい。

人に恵まれた。リハビリの先生も、看護師さんも、ケアマネさんも、お医者様も、皆さん実にお優しい。

なにより、わたしは母が人と関わり始めたことが嬉しくてたまらない。故郷で何もかも失い、気力も考える力も失って我が家へやってきた母は、なにを聞いても何一つ答えなかった。魂をどこかに落っことしたまま我が家にやってきた。

ところが、今は母はあの頃よりも体のぐわいは悪いけれど、とてもしっかりしている。

今日のリハビリには間に合わなかったけれど、来週はリハビリの前にお風呂に入ろうねと約束した。決して痛いといわない母の痛みを、我が事のように感じて実に丁寧にマッサージをして、足の可動域を広げる運動をしてくださったそうだ。

わたしと母では、どうすることもできないことの方が多い。けれど、今日はリハビリ後の母の顔を見て、またきっと母は歩けるようになるだろと感じた。母は歩きたいのだ。その気持ちがある限り、きっとまた歩けるようになる。頑張って生きてきてよかったね。

介護は、一度失敗しても大丈夫。母は4年前に寝たきりから起き上がれた。医療の進歩で、今では耳も聞こえるし目も見える。先生と会話が出来て、お薬の管理だって自分でしているし、契約書のサインだって自分でちゃんと書く。

下り坂ばかりと思いがちだけれど、大丈夫、生きる気力があれば、高齢者も何度だって元気になれる。わたしはそう信じている。


※最後までお読みいただきありがとうございました。


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