「或る画家へ」
「或る画家へ」
筆取りて色を塗れどなを哀し
狂をしく重ぬる色の軋む声
めらめらと炎はつねに宙そらに消ゆ
ギシギシと張りさけたるも音やまず
暗き空己のが血のりで埋めつくせ
狂しくもなを狂しくも凍こごれる手
ひまわりの黄金色見て闇がみゆ
青き空どこまで見ても青き空
叫べどもなを叫べどもなを叫ぶ
耳切りて正気で切りて静かなり
ひまわりの黄金のまぶしさ胸痛む
真夏日の熱光ひかり浴びても我寒し
求むるも冬の木立ちと黒き影
生きてある己のが姿のおぞましき
誰たがためか絵の具をむだに使ひくる
果ててなを狂をしき身よ鬼火たれ
非力なる我をムチ打て色達よ
色達にハリツケ望む人非人
道半ばあらゆるものにこばまるる
無能なる我を照らすな太陽よ
死の谷の影より暗き我の影
狂えども見つめ続ける眼の運命さだめ
絶叫に重ねし色は星月夜
暗き夜に黙して照らす星月夜
ゆらゆらと天地にむきてゆりゆらる
蒼き空カラスと共に麦畑
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