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かつて本の虫だった私の積ん読崩し作戦

積ん読
《積んでおく意に読書の「どく」をかけたしゃれ》書物を買っても積み重ねておくだけで、少しも読まないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

 日本語の積ん読に該当する外国の単語は存在しない、という話を聞きました。そんなバカな……!
 私は数えたら60冊も積ん読していました。どのくらい積んでいるのかわからなくて、PCで一覧表を作ったくらいです。
 それが多いか少ないかはさておき。私だって読みたいから買っているのだし、買うほどではないけれど読みたい本もあります。なのにどうして積んでしまうのか?
 本を読みたいのに、読めていないのはどうしてなんだろう?

 それは、今の自分に合わない、不自由な読み方をしていたからでした。

※ここで話している本は8割方小説のことを指しています


いつまでもあると思うな読書体力

 若かった頃の私は、本の虫と言っても差し支えないくらいの勢いで、本を読んでいました。しかし徐々に、買った本を読めなくなって積むことが増えました。
 読むペースが落ちたのです。まずはここを認めないといけません。

中高生時代の豊かなパワー

 思い返してみるに、高校生くらいまでは、小説の文庫本を1冊読むのに一日あればじゅうぶんでした。正確には日中は授業やら部活やらがあるので、帰り道から帰宅後の3時間ほどでしょうか。
 今の私でも、読める日は文庫本を読むのに2時間もかからない気がするので、意外と文字を処理する速度は変わっていないようです。

 では読むペースが落ちたというのはなにを指すのか。それは、「読める日」の減少です。
 中高生の頃は、読もうと思えば毎日だって本が読めました。それだけの体力気力集中力がありました。今はそういうわけにはいきません。本が読めるのは、運よく元気な日だけです。

 でもそんな今の私にも、昔の私にはなかった読書に有利な部分があったって、いいと思いませんか?

今の能力を棚卸し

 まずは冷静に。今の自分を分析してみます。

 繰り返しになりますが、今の私に昔ほどの体力気力集中力はありません。少し救いがあるとすれば、読書も筋トレのような面があって、読めば読むほどたくさん読めるようになるところでしょうか。ここの積み上げはやる価値がありそうです。

 ですが、誘惑に負けずカチカチ気持ちを切り替えていく力は、今の方があると思われるのです。
 昔は本を読み始めたら食事も風呂も、最悪呼吸も忘れる勢いで没頭していました。そのぶん現実に戻ってくるのが難しく、よく親を呆れさせていたものです。
 今は、そんなに没頭できないというのもありますが、時間になったらサクッと読む手を止めることができます。これは強みではないか?

 また、Audibleを移動中に聴いてみた体験もひとつヒントを教えてくれます。細切れに15分ずつで聴いても、案外前回までに聴いた内容を覚えているのです。一気読み派だった私としては、驚きの体験でした。

 ここから導き出される積ん読崩し作戦とは……?

ひとつめの作戦

 ひとつめの作戦は、こうです。

×短期集中一気読み
〇長期分散スキマ時間読み

 昔の私の読書法を簡単にまとめると、とにかく集中して一気に読んでしまう! という方法でした。
 しかし、今の私にその方法は向いていません。そこで、別の方法が必要になってきます。

 気分の切り替えができるということは、読み始めて短時間で中断できるということです。つまり、スキマ時間に分散して、ゆっくりじっくりコツコツ読み貯めれば、そのうち読み終わる!
 しかも、私がそうやって細切れに読んでも内容がわからなくなったりしないことは、Audibleの体験で証明済みです。これだ!

 しかし、これではまだ、完璧な作戦がたてられたとはいえません。「読める日」にも、「読みたい本」と「気が乗らない本」という概念が存在するからです。

読みたい気持ちを乗りこなせ

 今日は本を読みたいから読むぞ、と思っても、なぜか本を手に取れず、フリーズしてしまうときがあります。この時間はもったいない。せっかく本を読む気分になったのに、読めないのは機会の損失です。
 どうして読みたいのに読めないのか? それは、こだわりの強さに原因があるようです。

読みたい本と読みたい本が一致しない現象

 どうも私は、本を読みたくなったときに、読みたい本と読みたい本を一致させられず、思考が止まってしまうようなのです。
 え? お前は何を言っているのかって? 誤字じゃないのでとりあえず先を読んで! おねがいします!

 ……こほん。この一致しない「読みたい本」の正体は、

  • 読み途中だから前回に続いて読んでおきたい本

  • それはさておき、今の気分として読みたい本

という2種類に分類できます。

 そんなの、気分で読みたい本を読めばいいじゃんって思いますよね? 驚くことに、私にはその発想がなかったんです。
 妙に真面目というか、こだわるところがある(しかも元・一気読み派)の私は、一度本を読み始めたら一途にそれを読み通さないといけないと思い込んでいました。

 でも、もちろんそれを読む気分じゃない日はある。
 そんな日に、読み途中の本が読めないならまた今度~なんて言っていたら、いつまでも本が読めません。そりゃそうです。

 でも……読み途中の本を放置するのはちょっと……。と眉をひそめる自分は、まだいます。困った子ですねえ。

連載だと思えば?

 ところで、私は紙の本だけでなくWeb小説も読みます。Web小説というのは、ほとんどが連載中のものを追いかける形式で、更新を楽しみにしながら何作品も並行で読むことが普通です。
 ……何作品も、並行で? 私ははたと気付きました。

 Web小説を並行で追いかけるのと、紙の本を並行で読むことって、ほぼ同じじゃない?

 目からウロコが落ちた気分でした。細切れに読んでも内容を忘れないのはさっき確認したばかり。普段は紙の本も並行で読んで、一気読みしたくなったらすればいいだけの話なのです。

ふたつめの作戦

 ふたつめの作戦は、こうです。

×どうしてもこの本を読み通す
〇そのときどきの読みたい本を読む

 たった1冊の本を1ヶ月のうち偶然気分が一致した2時間だけ読むより、たとえば10冊の本を気分に合わせて30分ずつ読んだ方が、1冊あたりの進行度は4分の1ですが、総合読書時間は2倍以上です。
 読書時間はそのまま読めた文字数に換算できます。積んでいる文字数はとにかくたくさんあるんだから、それをより多く稼げた方が、積ん読は早く崩せるでしょう。これだ!

 けれど、まだ作戦は完璧じゃありません。どんなに思考を改革したって、本を読む気分にならない日もあるからです。

鳴かぬなら鳴くまで待とう読書時間

 たくさん本を読む人というのは、どうやらいつでも本を読んでいるらしいと、最近知りました。電車の中なんかはもちろん、お手洗いですら本を手に取る人もいるとか。
 そんなに本にずぶずぶにハマれたら、どんなに面白いかと思う反面、そうはなれない自分もいます。

 どうしても本を読む気になれない。ゲームをしたい、寝たい。そんな日に、本が読めない自分にどこか罪悪感を抱いていました。

読まなくてもいいという気付き

 積ん読とは別に、気になる本を図書館で借りて、返却期限まで読み終わらなかったときのこと。
 私は「また延長しなきゃ……」と鬱々とした気分を抱えていました。しかし、そんなときに、「図書館の本は借りてもらわないと所蔵しておけない」といったような呟きをSNSで見かけたのです。いわく、図書館の本は貸し借りがないと「需要のない本」とみなされてしまうのだとかなんとか。

 なるほど、貸し借りが多いほうがいいなら、返してまた借りればいいや。市立図書館の利用はタダだし、損することもないな。

 ……ん?

 私は突然、ひらめきました。
 図書館の本は、借りたら絶対読まないといけないと思っていました。でも、別に読まなくて返してまた借りても、誰に文句を言われることもないのです。いつ読んでもいいし、読まなくてもいい。
 買った本も同じ。もうその本は自分の本棚にあるのだから、いつ読んでもいいし、読まなくてもいい。返却期限や次の予約についてかりかりしなくていい権利を、お金で買ったようなものです。

 いつでも読めるのだから、読みたいときに読めばいい。文字にしてみると当たり前の話ですが、そのときにやっと腑に落ちたのでした。

みっつめの改革

 みっつめの改革は、こうです。

×読みたくなくても読まなきゃ……
◯読みたいときだけ読めばいい

 積ん読を読み終わるまでの道のりは長い。嫌々読んだってストレスが溜まるだけ。楽しく読めるときだけ読んでも、チリツモでいつかは積ん読の山が崩せるはずです。

 そもそも読書は趣味なんだから、楽しくやってなんぼというものです。当たり前の話ですね。

おわりに

 積ん読にげんなりしていたここ数年の私に、この発見を教えてあげたくて仕方がありません。本ってもっと自由気ままに読み散らかしていいものなんだよ! 好きなように読もう!!

 でも……もしかしてこれって、私の頭が固かっただけなのではないか……? も〜! みんなもっと早く教えてよ〜〜!!(誰に言っているのだ?)

 ……こほん。
 そんなわけで楽しくなって、本を読む気分が高まったのですが、なぜか積ん読ではなくて図書館の本を読んだり、すでに読んだ本を読み返したり、しています。まあ、そのついでに積ん読が読めればいいし、オッケーオッケー!

 最後に、私の積ん読の数を訂正します。
 60冊と言いましたが、これのプロットを書いたその日に古本屋で気になっていた本を買い込んでしまって、67冊になりました。
 ……本当に読み切れるのかな……? 気が大きくなっているときに、古本屋に入るものじゃありませんね……。


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