ボロボロのバイク(超短編小説)

 初めてバイクに乗ったのは、高校生の時だった。
 同級生の原付に乗せてもらって、夜の河川敷を、当時の気持ちで言ったら、爆走した。今思えば、無免許で危険なことをしたと思うが、多分、当時に戻ったとしても同じことをすると思う。
 だけど、思えばそれからバイクとは縁がなかった。
 車に乗るは好きだし、若い時に無理をして中古車を買ったりもした。それなりに綺麗にして、中身をアレンジするのも楽しかった。
 バイクは孤独だ。
 車よりバイクの方が乗ったことがある人間は割合からすればマイナーな方だと思う。それこそ、バイクが好きな人が乗る乗り物が、バイクだ。
 一方、車は、別に好きじゃなくても運転したり、同乗する人は多い。
 季節に左右されることは少ないし、何よりも人を選ばない。
 だけど、二十代後半になり、僕はなぜかバイクを購入した。
 それも、速度を出せば煙を出し、座る場所のカバーは破けて、綿が半分くらいなく、ミラーは汚れて見えない。
 いつ壊れても仕方がないバイクだ。
 なぜ、それを選んだのか自分でもわからなかった。
 改造したいとか、直せばお得だな。なんて気持ちもなく。なぜかそのバイクに惹かれた。
 買ってからは、ほぼ毎日乗っている。
 この前は、バイクに乗りながら転倒した。
 横に傷がついたし、ミラーは曲がってしまった。
 流石にミラーはなんとか直したが、傷は特に何もしなかった。
 傷はついても、バイクの機能に問題ない。
 そもそも、このバイクは他のバイクに比べたら劣るかも知れないが、事走ることに関していえば、僕よりも優秀だ。燃料を消費することがネックではあるが、それは人も同じ。
 結局、何と比べるか、どこと比べるか。
 そして、そもそも、それが必要なことなのか。
 一つ一つが、そこにしかなく。
 また、一つ一つに魅力があり、意味がある。
 このボロボロのバイクだって、今の僕には意味がある。将来、意味がないバイクになるかも知れない。だけど、過去の僕には意味があり、それはまた、他の何かには意味があるのかも知れない。
 今日も僕は、ボロボロのバイクで、煙を出しながら走る。
 その煙は、まるで何かの狼煙のようだった。

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