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中国、ロシアだけではない。アフリカへ積極進出するUAEの動き

アフリカの資源やインフラを狙う国として中国の名前がよく上がりますが、中国の資源や鉄道、道路といったインフラへの投資は、2016年をピークに大幅に減少しています。アフリカ側は、計画していたインフラ整備への融資を中国から断られて困っているくらいです。

とはいえ、中国はいまはより狙いを絞って資金を入れており、民間の動きも活発で、アフリカにおける中国の影響が減ったというわけでもないのですがそのことはまた次にするとして、今回は中東、とくにUAE(アラブ首長国連邦)企業のアフリカへの積極進出がテーマです。

アフリカビジネスパートナーズが毎週発行している週刊アフリカビジネスでも、2010年ごろからUAEによる融資や投資のニュースがでてきて、2021年ごろから増えました。昨年2023年はとくに多かったです。

中東は、もともとアフリカにとって遠くはない国です。アフリカの人にとって一番近い貿易拠点はUAEのドバイで、車も衣類も機械類も、ここから物品が流れ込んでいます。大きくなった財閥や企業が口座や拠点を置くのもドバイで、金融的にも存在感があります。

中東はアフリカにとって、石油製品の輸入元であり、農産物の輸出先でもあります。金やその他鉱物資源の輸出地としても存在感は大きい。2021年のアフリカの最大の輸出相手国はUAEでした。

物理的な距離でも欧州より近い国が多く、フライトも多い。日本からアフリカに行く際も、エミレーツやカタールなど中東で乗り換える人は多いでしょう。海外に出稼ぎにいくときに最初の選択肢になるのは中東です。

赤道から北のアフリカではムスリム人口が多く、サウジアラビアをはじめとする中東は、宗教的・心理的にも近い存在です。

エジプトのようなアラブの国にとっては当然ながら、湾岸諸国はもっとも関係が深い兄弟国です。UAEやサウジアラビアは、エジプトからモロッコまでのアラブ諸国、紛争中のスーダンやソマリアを含むアデン湾と紅海周辺国は、政治的にも影響を及ぼすべき自国陣営内とみているでしょう。

つまり、もともと近い国だったのですが、最近多いのは、港湾と代替エネルギーでの進出です。

アフリカ港湾へのUAEの進出のスピードは、恐ろしいほどです。UAEのドバイ首長国のDP Worldは、アフリカ各国の港湾権益を取得したり、建設とコンセッションの契約を結ぶなどしてきました。

具体的には「自国陣営内」であるエジプト、アルジェリア、ソマリア(ソマリランド)のほか、産油国であるアンゴラ、セネガル、天然ガス資源のあるタンザニア、モザンビーク、コバルトのコンゴ民といった国で、港湾を確保しています。港湾以外にも、内陸コンテナターミナルなど物流関連の投資をアフリカ各国で強化しています(直近3年間でDP Worldが登場したニュースはこちら

UAEのアブダビ首長国のAD Ports Groupも、エジプト、スーダン、アンゴラ、コンゴ、ギニア、タンザニアで港湾に絡んでいます。タンザニアでは、イスラエルやスリランカで港湾進出したインドの新興財閥Adaniと組み、コンセッション契約を得ました。

Adaniといえば、アブダビの投資会社IHCはAdani傘下企業への出資者で、不正の疑惑があるAdaniを資金的にバックしています。そのIHCは、コンゴ民とならぶコバルトや銅といった、リチウム電池に必要な資源の産出国であるザンビアで鉱山の権益を得ています。

UAEの投資、とくに港湾は、資源のある国をうまく押さえているといえるでしょう。下の地図で、国に色が塗られているのが、DP WorldとAD Portsが港湾で関与している国です。

アフリカビジネスパートナーズ作成

地図で●で示されているのは、資源やエネルギーでの進出国です。産油国である中東の国々は、石油資源の終焉を主張する欧州にのらりくらりと対応しながら、同時に再生可能エネルギーやグリーン水素・グリーンアンモニアへの投資を活発化しています。

ドバイ首長国のAMEA Powerは、アフリカでのグリーン水素製造に150億ドル相当を投じる計画を発表しています。同社にはソフトバンクが出資しており、住友商事はAMEA Powerとエジプトで風力発電を建設します。

サウジアラビアのACWA Powerは、サウジの海水淡水化で日本企業と縁が深い企業ですが、アフリカでも海水淡水化プロジェクトを実施するほか、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの投資を計画しています。最近伊藤忠が、エジプトでのグリーン水素、グリーンアンモニアでの協力を検討するMoUを締結しました。

このようなアフリカへの積極的な進出が始まったのは、UAEのドバイとアブダビで若いトップが実権を握ってからです。鉱物資源と食料を自国に運ぶサプライチェーンを確保し、アフリカと他を結ぶ貿易の拠点となり、紅海・アデン湾など重要地域を政治・軍事的に管理するという目的は、中国がアフリカへ進出する目的とそう変わりません。

UAEが中国と違うのは、米国や欧州諸国などとのつきあい方が上手なことです。米国にとっても、中国よりはコントロールが可能でマシな存在として、UAEのアフリカでの権益確保を「大目に見ている(または利用している)」感があります。

DP Worldは、今後3~5年の間に新たにアフリカの港湾に30~50億ドルを投じると発表しています。

なお、ロシアについては、ウクライナ侵攻以前はエジプトや一部の資源国を除いて、アフリカとの経済・貿易関係は強くはありませんでした。しかしながらウクライナ以降は、ビジネス・経済外交を活発化しています。

とくに国営企業Rosatomがアフリカに原子力発電を売り込んでおり、エジプトではすでに建設が始まっています。アフリカには脱炭素・気候変動の潮流により火力発電への投資がストップし、電力確保に困っている国々が多く存在しており、Rosatomはそういった国に原子力発電所の建設をもちかけています。

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