商業シナリオで意外と書くものについて

自称シナリオライターのnoteなのに、文章的なハウツーが何もないじゃないか……とは思っていた。
一般的なシナリオ作法及び、メソッドについては、私より場数があり、体系だてて技術を説明できるシナリオライター先生や先輩方がやっているだろう。
ちなみに大型書店にいけば、基礎的なものについては脚本技術書で取り扱っているのでそちらを参照した方がよほど、確実で有意義なのである。

今回するのは、私の経験した話によるものだけど、意外と間違ってはない気がする。
いわゆる、ソシャゲなどのキャラシナリオやイベントシナリオなどを例にあげて、これは体感どこでも書かされるぞというジャンルをあげる。

①ギャグ
②デートのシチュエーション

これらのシチュエーションは、全年齢、成人向け、女性向け、男性向け問わず、どこでも書いている気がする。

まず、ギャグシーンについて。
これの必要性を実感したのは、とあるブラウザゲームのイベントシナリオを書いていたときのことだ。
「梅芳さん、このシーンは何の意図で書いたんですか?」とディレクターは言った。
「ギャグシーンのつもりでした」と私。
「これは、ギャグになっていない。笑いどころが分からない」と指摘が入った。
そのときに何を思ったのか芸人さんの知り合いにお笑いのノウハウを聞いたり、お笑いの基礎本を買って急いで勉強した覚えがある。
年月を経った今、私なりの解釈で要約するともちろん、面白いギャグシーンを書けるに越したことはない。

でも、ユーザー様が求めているのはきっとそうではないのだ。
キャラクター(声優様)の声で言ったら“おいしい“であろうセリフ、また、キャラクター自体が面白キャラならキャラブレ回避のために必要不可欠。
あるいは逆にそういうトンチキなセリフを言わないキャラクターがぽそっとつまらなくても、面白くてもいいけど、ギャグを言うだけで意外性を表現できる。
狙いや意図はあげたら列挙がないのだけど、自然に求められた技術のように思う。

私が例にあげたイベントシナリオはシリアス路線のものだった。
そのため、重苦しいシーンばかり続くと読む方は息が詰まるだろう。
だから、緩急の意味をこめて、ギャグシーンは必要不可欠だったというわけだ。
また、私のように外注でやっているシナリオライターだと分かりやすいのはソシャゲ媒体だろう。
初心者ことに明確な実績がないうちだと(これに関しては一概には言えないが)低レアリティのキャラクターを書くことが多い。
これは、ソシャゲのカラーにもよるけど、やはり高レアリティのキャラシナリオと比較すると低レアリティ、あるいはイベント報酬系のキャラクターはネタを求められることが多い。

声優様の演技は本当に素晴らしい。
声優様の演技(技術)で、どうしようもないネタを何度も良いものに昇華していただいた。
基本、ソシャゲに限らずどの媒体でも、という話になるけどギャグは、シナリオライターとしての洗礼のようなものだと思っている。

私が恋愛ゲームがメインのライターかもしれないが、ギャグ同様、避けて通れないのがデートシチュだ。
これは、本当によく書かされる。
男性向けでも女性向けでも。

スプレッドシート式の納品だと他のライターさんのデートについての考えが見れるので結構、私はデートシチュの案件は楽しみだったりする。
裏を返せば経験したデートが見えるということでもあるのだから恐ろしいのだけど。
ゲーム系のシナリオライターといえば、オタクだからこそなれるというイメージがあるかもしれないが、デート以外にも合コンだの、女子会だの、メイクの知識だのきらきらしたものを沢山書くし、逆に一般的に浸透していない特殊な趣味や知識が必要とすることがあるので、実生活の経験は何事もシナリオを書くうえでアドバンテージになるのだ。

……ちなみに公言されているので問題はないと思うけど、私は18禁のゲームでスポーツのカバディを書かなければいけないことがあり、試行錯誤したことがある。

さて、話をデートシチュに戻す。
ここからは私のシナリオの好み的な話になるけど、気持ち女性向け案件のときは、すこぅし、少女漫画チックにシチュエーションを盛ることはある。
けれど、男性向け、女性向け問わず派手なデートシーンは書かない方になると思う。
やはり、デートのシーンにムードは欲しいからシチュエーションは考えるけども、極端な話として頻繁にシンデレラ城の前で公開プロポーズはしないだろう。
だから、それっぽいムードやシチュエーションはつくる。
けど、デートはできれば日常の延長にあってほしいと思う。

男性向けで個人的に大事だと思っているのは、自分のしてあげたことで女の子が喜んでくれているか、になる。
→だから、デート自体は女性向けに比べて日常的なものに寄せている。
実際のデートに焦点を近づけている。大事なのは、女の子(ヒロイン)のリアクションだから、そちらに力を入れる。
→女の子にとってはデートは好きな人といれるだけで嬉しいものだ。
だから、好意のある男性の行動、言動は本当は全て嬉しい。
一緒にいれればそれで幸せ。
なんでも、楽しい。
だけど、それだとシナリオ的にふわっとしすぎているから、実際に主人公の行ってくれたことに対して具体的なリアクションを示すことが何よりも大事なのだと思う。

逆に女性向けで意識することは、先述の回答とは矛盾するが「推し(男性キャラクター)」が「自分に何をしてくれたか」
先ほどの例と矛盾しているように思えるが、
好きな男性と一緒にいれて嬉しいのは共通項だと思う。
マストで大事にしたいのは「推し」が「自分(のため)に何をしてくれたか」なのだけど、その気持ちの部分を大事にしたい。
あと、女性媒体に関しては現実の日常のデートは、恐らく大多数の女性が経験済みだろう。
キャラを引き立たせる意味もあるけど、二次元媒体ではお姫様の体験を女性(あるいはユーザー様の男性)にしてほしいと思う。
だから、シチュエーションとしてはやはりオーソドックスなデートを指定しがちだが、男性側から細かな気遣いだったり、ピンポイントで現実世界ではないような甘いセリフを意識している。
すごく平たい言葉で言うなら現実で言うところのデートで痒いところに手が届かない……ある意味で完璧なデートを意識してシナリオを書くことが多い。

あくまで、私の考えなのだけど、デートシチュにおいてのマストは男女ともに「気持ち」なのだと思う。
男性は、自分の行動で女の子が喜んでいるところを見て気持ちが満たされる。
女性は、言葉や行動から男性側の思いやりや愛情を感じて気持ちが満たされる。
デートシチュにおいてはこういうシナリオを書いてみたいと私は思っている。

冒頭で書いたような意図があって、あんまり他の人が言ってないベクトルでのシナリオハウツーを書いてみたが、どうだっただろう……。
とは言っても、私は30歳喪女のエロゲライターだから、説得力がかけらもないところが残念である。

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