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家族4人から3人家族への道のり

パパの浮気

パパとお出掛けの日はとてもウキウキした気分になった。パパとのドライブが大好きでパパとのお出掛けが大好き。パパは運転がとても上手で、左側に運転席のある大きな車に乗っていた。この日もパパとお出掛け。パパと初めてのゴルフ場に出掛けた。大きな駐車場に車を止めて、ホテルの様な大きなエントランスをくぐると、みんなが挨拶をしだす。私も色々な人達に、おはようございます、と挨拶をした。娘さんですか?と多くの人達に聞かれ、パパはそうだと応えていた。大きなテーブルのある椅子に腰をかけ、パパはコーヒー、私にはジュースが運ばれてきた。暫くして、そこに一人の女性が現れた。その女性に声を掛けられたので、良く覚えている。パパはその女性と一緒にゴルフを周るようだった。他に誰か居たかは私は知らない。パパが、じゃあ言ってくるね、と言う。どうやら私も一緒に行けるわけではないらしい。パパにゴルフの間、ここで良い子で待つ様にと言われた。え?一緒に行けないの?と小さな私は戸惑ったが、うんと応える他に何が出来る?そして間もなくパパはそこからいなくなった。

私はゴルフ場の大きなロビー兼レストランのような場所で、ひとり父を待つことになった。ゴルフレンジは幾度か行った事があったけれど、このような場所は初めてだった。パパと一緒に行きたかったのにな、そんなことを思いながら、好きなものを食べたり飲んだり、ゴルフ場の人達から話しかけられたり、従業員の人達が出してくれたおもちゃで遊んだりして、パパの帰りを待った。兎に角詰まらなかった事だけは鮮明に覚えている。パパが戻って来たのはランチタイム。それは午後12時だったのか午後2時だったのか覚えてはいないけれど、パパと一緒にそこでランチを食べた。その後パパはゴルフには戻らず、とてもホッとした。いつものように帰宅をしてから、ママに何が起こったのか全てを報告をした。女性とゴルフをしたパパの事、一人で待たされつまらなかった事、ランチをしたこと、などなど全てを伝えた。もしかしたら私はパパの浮気のカモフラージュの道具だったのかな?それともママに報告するための道具だったのか?と大分後になってから思った事がある。

ゴルフ場
一緒に回りたかったな

私の手がテレビの上に伸びた。家のメインテレビの上に、厚みのある写真の入っているカメラ屋さんの袋が置いてあった。見て下さい、と言わんばかりに無造作に置いてある写真屋さんの袋が、妙に気になって、好奇心いっぱいの気持ちにつられ、その袋の中身をこっそり開けて見た事がある。写真を一枚一枚丁寧に見た。時折、家族写真などに紛れ、パパと他の女性が映った写真が数枚、目に飛び込んできた。小さな私はなんだかいけないものを見てしまった気がした。それでも好奇心で全てを見終え、それから写真を袋へ戻し何もなかったかのように元の場所へ戻した。

夜がやって来て普通に時間が過ぎて行った。子供達が就寝し静まり返った頃、部屋に声が聞こえて来た。どうやら写真のことで、パパとママが揉め始めたみたいだった。夜な夜なの喧嘩の中、私は掛け布団の中に潜りその様子に聞き耳を立てていた。あまり詳細は聞こえて来ないが、時々荒々しく揉めている声だけが聞こえてきた。暫くして喧嘩が収まった後、ママが来そうな気がして、起きている事がバレてはいけないと思って、そのまま寝たふりをして眠りについた。

次の日、パパは出勤して家に居らず、ママは通常運転。仲直りしたみたいだった。浮気で揉めたのを聞いたのは、後にも先にも一度だけで、その後は普通に今まで通り、時が過ぎて行った。浮気が何度繰り返されたのかは知らない。ただ、パパはきっと浮気を続けていただろうと想像する。当時パパは意外とハンサムで、いつも笑顔で色々な人達と話しをし、人と話すのがとても上手だった。パパは中々モテていたと思う。時にスーパーへ行くと、店員のおばさんに、パパはかっこいいわねえ~、と言われた。もしかしたらこのおばさんも?と幼少期に思った事さえある。パパは頻繁に浮気をしていただろう、そう思い過ごした幼少期だった。だからなのかな?私は浮気が嫌いに育った。

写真は想い出*とても大切なもの
心の中にもある〜想い出の写真

バターン、と大きな音と共にテーブルが倒れ、上にあった食事や食器が床に散乱した。後にも先にも一度だけ、パパが物を粗末にした瞬間だった。パパがテーブルをひっくり返し、その時にママの作った手料理が全て床に落ちた。ママは椅子に座り涙を流していた。静まり返る家の中で、パパにおいでと言われたけど、パパっ子の私はママの方へ自然に向かった。ママが私を抱き上げ、ママのお膝の上に座り、ママに抱き付いた。ママに泣かないで、と言いながら私までもが涙を流し始めた。せっかく用意した食事をひっくり返され、あの時のママの姿は、とても印象的だった。パパは兄に向かって、キャッチボールするか?と誘い、兄は状況を見て判断したのだろう。パパと外でキャッチボールを始めた。

ママは椅子に座って私を抱え、涙を流しながら逆に私の背中をさすって、なだめてくれていた。ママの寂しそうな顔を見て、ママをぎゅっとした。パパの行動やママの仕草、私にはとてもショックな出来事だった。何があったのかは、私は今でも知らない。小さな私には、説明をしてくれる人はおらず、自分から質問などすることもなかった。しばらくして、ママは床を片付け始めた。私も食器の破片が危ないので、気を付けながらお手伝いを少しだけした。パパとお兄ちゃんの声とキャッチボールの音が、微かに窓から聞こえて来る。ママは綺麗に片付けた後、どんな気持ちだったろう?その後ママとお買い物へ行き、帰って来てから夕食を作り始めた。

子供は幼くても親を守りたいと思う心を持ち合わせている

騒音のある場所で、よぉ~し、と、パパが声をあげる。赤い色鉛筆を耳に挟み、新聞を片手にパパが隣りで叫んでいる。ポケットにはラジオが入っていて、イヤフォンでパパは中継を聞いていた。時に競馬場、時にチケットを売ってるおじさんのいる場所。そして、大体パパは、あ~、とため息をついていた。競馬の後に喜んでいたパパを見た事はほぼなかった様に思う。負けても勝っても、どんな時もいつも笑顔で一緒にお買い物をして帰宅した。パパはパチンコに時々行っていた。浮気をやめてギャンブルでもしていたのだろうか?使うお金は同じぐらいなのだろうか?

週末になるとパパは、ゴルフレンジ、競馬、パチンコ、と暇時間を過ごすようになっていた。パパとパチンコ店へ行くと、パパの隣りのパチンコ台で遊んだり、時々ぐるぐる店内を回って、落ちてるパチンコ玉を拾い集めて台に投入したり、パパの膝に乗って一緒に玉打ちをしたりもした。帰る前にはパパと交換所へ行って、お菓子を大きな紙袋いっぱいに入れてもらった。その後パチンコ店の裏へ行き、何かとお金と交換して貰っていた。ギャンブルの後のパパはいつも笑顔だった。ギャンブルでストレス発散でもしていたのかな?パパと過ごす時間を私も結構楽しんでいた。その頃家には子供用のパチンコ台があり、家でもパチンコを楽しんでいた。

家族はみんな笑顔だった。こうやって月日は流れ、なんとか4人家族は仲良く日々を過ごしていた。けれど、徐々に家族4人の歯車は少しずつずれて来ていたことに、私は全く気が付いていなかった。

秋の花 りんどう
花言葉は
正義・勝利・誠実

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