総計706km、2日間のバイク旅へ その③深夜のタンデム
こんにちは。うめ組ランジェリーです。
前回の続きです。
▼前回の記事はこちら:
Train Wreckを楽しんだ後、ウィスラーにあるレストランで夕食。テラス席からはウィスラーの山々を眺められて気持ち良い。ジンジャービール(ノンアル)で乾杯した。
オーダーが混み合っていたのか、食事が出てくるまでに30分ほど待った。ようやく食べ始めたのは8時半頃。(残念ながら、ハンバーガーはパサついていていまいちだった…)
カナダの夏の日は長い。21時でも感覚的には15時〜16時ぐらいの明るさで、いつももうこんな時間?!とびっくりします。
友人によると、ここから宿までは1時間40分とのこと。だいぶ予定より遅くなってしまったけれど、23時前にはつけるだろう…と、思っていた。この時までは。ホテルのバーが23時に閉まってしまうというので、万が一間に合わなかった時のために、近くのリキュールストアでビールをゲットしてからホテルに向けて出発しました。
Winding Road
ナビをセットすると、ホテルまでの距離は90キロ強。
予期せぬ自体が起こっていることに気がついたのは、出発してすぐのこと。あたりが鬱蒼とした山道に入ったことに気がつく。他のバイクの姿はなく、車も15分に1台通るかどうか。
街灯も一つもなく、あたりはすぐに真っ暗になった。
曲がりくねった山道に、再びFワードを連発する友人。無理もない。真っ暗な山道、フラットな道ならまだしも、少しでも傾斜のついた道ではライトをつけていても前方が数メートルしか見えない。
もちろん、カーブにはこれでもかというほど黄色の標識が並んでいるので分かるけれど、それでも運転が難しいことが私にも分かる。運転手と同じように前方を見据え、ハラハラしながら夜道を進む。
森のプラネタリウム
標高が少し上がったのか、急にひんやりと冷えてきた。友人がバイクを止めた。
まだホテルまでは時間がかかるし、もう途中バイクを止める時間はない、体が冷えないようにと友人が持ってきていたタイツと服を貸してくれる。ジーンズの下にタイツを着込むべく、真っ暗の山道でパンツ一丁(正しくは、公園から履いていた水着)になる。恥ずかしがってなどいられない。寒い、暗い、怖い、シュール。
ふと、頭上に見たことのないような星空が広がっていることに気がついた。一瞬怖さを忘れた。友人にバイクのライトを消してもらうと辺りは本当に真っ暗闇で、空に星が川のように見えた。
天然のプラネタリウムだった。
再びバイクにまたがる。走り始めたあとも、後部席の私は少しの間星空を楽しんだ。がんばって真上を見上げなくても、前方の山々の間に星が見えた。
マリカーと宇多田ヒカル
しかし相変わらずの山道、道幅も狭い。車道の脇にはレールなどなく、見ると横が崖になっているようにも見える。(ただの草原だったかもしれないけれど、とにかく真っ暗なので崖にしか見えない)
これは……マリカーだ!!!!横がなくミスると落ちてしまう、あの地獄のコース。
ますます怖くなる。本当に崖だったらどうしよう…カーブに失敗したら落ちる……。マリカーならすぐに引っ張り上げてもらえるけれど…。
私が眠っていないか心配なのか、友人がときどき膝を叩いてくる。起きてるよ、こんな道で眠れるわけがない。
怖いので、歌うことにした。
ちなみに、山道に入る前、うっかりApple Musiceで曲のダウンロードをほぼしていないことに気がついた。当然ネットは繋がらないので、昔に唯一ダウンロードしていた宇多田ヒカルのアルバムを聴いていた。できればハッピーで陽気な曲が良かったけれど、仕方ない。
夜になると、森から動物たちも出てくる。ディアーハンターと化して鹿の姿を探す。結局、見かけたのは4,5頭。うち1頭は、すぐ横を少しの間並走した。
運転席のナビを覗き込みながら、ホテルまであと何キロ、あと何キロ、とカウントダウンする。
ホテルまで残り20キロをきった頃、ようやく山道を抜け、街らしき風景が戻ってきた時の安心感といったら…。
日付が変わる前に無事、ホテルに到着。明るいライトが、木のぬくもりあふれるホテルの看板を照らしてくれているのがうれしかった。
***
駐車場にバイクを停めて荷物をすべて外し、ホテルで受付をしている頃には既に24時を回っていた。友人も相当疲れていたと思うけれど、無事についた安心感と、山道が本当に怖かったのとで笑ってしまった。
深夜、宇多田ヒカルのトラベリングを熱唱しながら、マリカーさながらのタンデム、私は一生忘れることはないと思う。
▼バイク旅の続編はこちら!(完結編)