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梅仕事⓪ ~準備編~
ごあいさつ
はじめまして。
和歌山県田辺市で梅農家、梅の加工と販売をしております梅千代本舗と申します。
農園は、全て特別栽培園(お隣さんとの距離が近く、意図しない農薬がかかってしまう、ごく一部を除きます)で、有機JAS認定をいただいております。登録番号は567-1~3です。
特別栽培園や有機JASに関しましては、わたしなりの考えを今回の記事とは別のところでまとめたいので、「身体にも土にもやさしい梅づくり」を目指しているという一言でとりあえずは済ませておきたいと思います。
さて、梅は加工してこそ真価を発揮する果実です。
梅干し、梅酒、梅シロップ、梅ジャムなどをつくる「梅仕事」をまとめていきたいと思います。
青梅と完熟梅
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上の画像が青梅、下の画像が完熟梅です。
青梅は、果実の中身は完成していますが、完全に熟しきっておらず、樹から自然に落ちる前に手でもぎとったものです。実が固く、カリカリという言葉が最適な食感です(このままでは食べられません)
青梅は3~7日ほどで完熟梅になります。
ざるや新聞紙の上に並べて、直射日光の当たらない、風通しのよい場所におき、追熟するのがオススメです。
ダンボールの中に放置しても追熟できます。が、5kg以上の場合、上部にある実の重みで下部の実が痛んでしまうことがあるので少し場所をとりますが広げた方が良いと思います。
さらっと書きましたが絶対にしてはいけないのが直射日光をあてることです。梅の実は日光にとても弱く、あてればすぐに傷んでしまいます。
収穫期、わたしが毎日農園をまわるのはこのためです。
傷まなければ何日か分をまとめて拾えばよいのですが、一日放置するとほとんどの梅が使えない状態になってしまうので、雨が降ろうが収穫の手をとめるわけにはいかないのです。
追熟が終わったとき、実は黄色く色づき、芳醇な香りが漂う、やわらかい完熟梅になります。
青梅でつくるもの
青梅でしか作れないものは甘露煮です。
完熟梅で作ると煮崩れしてしまうからです。
梅酒は青梅と完熟梅のどちらでも作れます。
おそらく、皆様が一番気になるのがその差異だと思います。
わたしは2023年、研究のために焼酎ベース3種とウオッカベース1種の4種×青梅、完熟梅の2種で全8種の梅酒を漬けました。
まず色に関して、一般的には完熟梅の方が鮮やかだとか言われていますが、執筆している今見比べてもほとんど変わりがありません。
漬けた年数に比例して色は深みを帯びていくように思います。
次に味ですが、わたしが味音痴なだけかもしれませんが、青梅と完熟梅の差は明確には分かりませんでした。
今のところ、わたしの中では梅酒はどちらでも大差がありません。
もし違いが分かる方がいらっしゃったらぜひご教授願いたいです。
完熟梅でつくるもの
完熟梅でしか作れないものは、梅干しです。
青梅で梅干しを作るとカリカリとした硬いものになってしまいます。
逆に、あの食感こそが梅干しだと思われている方は青梅で漬けることをオススメします。
青梅は甘露煮、完熟梅は一般的には梅干し
それ以外の加工品はどちらの梅でも問題なく作れます。
紅南高
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画像の左側の上から2番目が紅南高です。
樹の枝にしっかりついているときに(離れてから日光を浴びるとすぐに傷みます)日光をたくさん受けたら紅色に染まります。
梅酒やシロップにすると紅色が染みだしとても綺麗に染まる…そうです。
確かにほんのり紅くなりますが声を大にして言うほどではありません。
味は変わりません。
希少だから値段を変えて(高くして)売っている方もいらっしゃいますがそこまでの価値はないように思います。
そして紅南高には欠点もあります。
梅干しに向きません。
紅南高を梅干しにすると、漬け上がったときに、紅がさした部分が黒ずんで見えます。
味は変わらないのですが、食欲が減退してしまうので梅干し以外に使っていただきたいです。
夏バテをしているときに食欲をかきたてるための梅干しを用意しても紅南高を漬けたものならば意味がないですよね。
食品において見た目はものすごく大事です。
塩の比較
梅干しを作るときにどういう塩を使えばいいですか?
という質問をよくいただきます。
まずは天然塩と精製塩を比べます。
天然塩はミネラル(カルシウム、カリウムなど)を含んだ塩で、塩化ナトリウムの含有量は80%程度です。
海水塩、岩塩、湖塩が天然塩です。
対する精製塩はミネラルは含んでおらず、ほとんどが塩化ナトリウムです。同じ量を摂取した場合に高血圧を引き起こしやすいのが精製塩なのは言うまでもありません。ゆで卵の隣に添えられている食卓塩などが精製塩です。
ここから先は好みになりますが、わたしは食感的に塩の存在感を十分に感じられる粗塩をオススメします。
天然塩でお好みの塩をご利用ください。
だしが入っている調味塩も梅本来の味を引き出すのならば避けた方がよいと思います。
ご覧いただきありがとうございます。
次回からいよいよ作り方を紹介してまいります。