日記『セックスをしたくないなら男の家に行くなという前に』

生きていれば平等に朝がむかえにくる。
平等な朝なのに、そこには楽しみや嬉しさ、憂鬱や絶望などを含めるので違った朝を迎える。
某日朝、私に刺しかけられた男は恐怖を含めたと思う。
私の倍以上、身体が大きい彼の腹の上に乗り、キッチンにあった包丁を首に突き当てた。

“サイゼリヤデート”や“奢る奢られる論争”に続いて、度々、“セックスしたくないなら女は男の家に行くべきではない”といった議題があがる。
私はこの全てについて特に強い意見はない。
自分が過ごす日常には関係のない話だから。
ただ、後者についてだけ思ったことがある。



論点がズレているのは分かっているんだけど、どうしても「男側が得体の知れない私という生き物と二人きりになるリスク」が気になった。
そもそも男性が苦手なので面識のない男に時間をつかえないし、疲れていてもシャワーを浴びて化粧を落として自分に合ったスキンケアをして眠剤を飲まないと眠れない派閥なので酒飲んだついでに泊まっちゃうとかもない。
この派閥、「眠剤を飲まないと」のところで一気にふるい落とされるな。



けど、バンドのことについてだったり、好きな芸能人だったりしたらフットワークはそんなに重くない。
なので、作業部屋やお家に一人でお邪魔することもある。
その時、相手に下心があるかないか以前に「私が危害を加えてくる心配はしていないのか」気になる。
例えば何かしらの芸能関係のお仕事をしていたり、知名度があるなら晒されたりとか。
家電を中心にぶっ壊し始めたりとか。
飲食物に薬や昆虫を混入させたり。
例えばですが。

やらないけど。
やらないけれども「今ここでこれをやったら、言ったらどんな反応をするんだろう」っていう好奇心がフッと湧き出る瞬間がわりとある。
ちなみに例えで出したけど晒し行為については興味がないです。
周りの反応含めて大凡想像できるので面白いと思えない。
やるんだったらライブのMCとかで言うくらい。
なんかもっと、「え、なんでそんなことすんの」みたいなのが見たくなってしまう。




過去に、全然本気じゃなかったけど「今までセックスをしたバンドマンの楽曲のコンピアルバム、通称『セックスミックス』を作りたいんだけど貴方のバンドから一曲いれていいかな？」って関係を持ったバンドマンに聞いたらめちゃくちゃキレられたことがある。
「俺たちの音楽をそんなことに使わないで欲しい」と言われて、ど正論なんだけどイラッとした。
やばい。思い出しイライラしてきた。
思い出しムラムラならまだしも、くそ。腹立つ。
覚悟を持って行為に臨め。
本気じゃなかったのにその反応のせいで本当に作ってやろうかと思った。
今は怒りをエネルギーに変えるのが身体に合わないのでしませんが、当時は。
あとは10代の時だけど宅飲みしてたら相手から下心を感じてキモくなった私は、何を思ったのか「ボーリングをしよう！！！」と言ってテーブルの上に乗っかっている酒やグラスやパソコンなど全てのものを床に落として破壊。
ボーリングのピンにするため、空いた酒缶を綺麗になったテーブルに並べ始めていたら、身体を持ち上げられ、真冬の雪降る氷点下の中にぶん投げられたことがある。
鍵を閉められた数秒後、少し扉が開いてカバンとかも外に投げ捨てられた。
映画とかドラマでよくみる間合いだった。
東北の冬はまじでしぬよ。
心配して友達が迎えにきてくれたので一命を取り留めた。

この時からもう性質の鱗片が見えている。
気づいてないだけでもっと前からの可能性が高い。
好奇心が勝ってしまうのと同時に、いや多分それ以上に、認められたい欲が強いので幼児退行が年々酷くなっていると自覚してる。
てか、そっちな気がしてきた。
簡単にいうと、ヤバいところも好きでいてほしい、みたいな。
私も私を制御できない。
相手に懐けば懐くほど初手で過激にパフォーマンスしてしまう。
結果、男を倒して首に包丁を当てるという犯行を行ってしまった。
笑って許してもらえたので示談です。

相手への危険信号として、会話してる中で私の一人称が名前になってきたら心を開いてきている証拠なので逃げて下さい。
えあは〜って言い出したらあなたは好かれています。
好かれると幼児退行してしまう可能性があります。
性別問わず。

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観た。
元医大生のキャシーが男たちへの復讐のためにわざと酔ったふりして下心たっぷりな男の家に上がり込み、高まった性欲も枯らせるほどサイコな言動をしてビビらすので憂さ晴らししてるの。
私は復讐心もキャシーのような頭の良さも女の身体を上手くつかえる技もないので同じではないのですが、得体の知れないものといるリスクはどちらもあるよねっていう自分の狂気をみた化け物が紡ぐ話でした。