しろまる、くろまる
これは、しろまるとくろまるのお話
このせかいでは、くろまるはしろまるをくろまるに変えてしまいます
しろまるとくろまるとしろまるなら、くろまるがしろまるになります
でもこれは、しろまるとしろまるでくろまるを挟んだときだけ
しろまる、しろまる、くろまるの順で並ぶと、くろまるが二つのしろまるをくろまるに変えてしまうのです
まるで黒石が強いオセロみたい
でもね、しろまるをくろまるにしたくないくろまるもいるのです
そのくろまるはしろまるになりたかったのです
これはしろまるになれないくろまるのお話
◇ ◇ ◇
しろまるになりたいくろまるは、いつも孤独でした
しろまるたちが遊んでいるのを、遠くから見つめるだけ
どうして遠くから見つめているの?
それはね、くろまるは一見しろまるに見えることもあるらしいのよ
しろまるがじぶんをみたら、しろまるだとおもって近づいてきてしまうかもしれない
くろまるはしろまるになりたいと同時に、しろまるをくろまるに変えたくはなかったのです
しろまるたちをくろまるに染めたくないくろまるは、ただただしろまるに見つからないようにして、しろまるを見つめていたのです
◇ ◇ ◇
きづいたらくろまるは眠っていたようです
地べたで寝たからからだがいたいの
くろまるは、いたいからだをゆっくり起こしながら、ねむたい目をこすります
すると目の前に何やら布のようなものが見えました
まるでドレスのような-
見上げるとそこにはくろまるをのぞきこむしろまるのすがたがありました
だめ、ちかづいちゃ
くろまるはしろまるからあとずさります
もうおそいかもしれない、このこもくろまるになってしまう
くろまるはおびえながら、しろまるからさらにあとずさりします
しろまるは少しおどろいて、でもすぐににっこりして言います
「わたし、特殊な能力があるの」
しろまるはスッと距離をつめ、ふふっと笑って、くるまるの手を引っ張ります
やはりくろまるはしろまるにみえることもあるという噂はほんとうなのでしょうか
くろまるはしろまるをくろまるにかえてしまうというざいあくかんを抱えながらも、しろまるの手をふりほどくことがでませんでした
ほかのしろまるたちも合流して、しろまるたちとくろまるは楽しくあそびました
その夜、鏡を見たくろまるは、しろまるになっていました
◇ ◇ ◇
そのつぎのひも、そのつぎのひも、しろまるになったくろまるはしろまるたちとあそびました
しろまるは一向にくろまるになることはなく、しろまるのままでした
これがきっとあのさいしょに話しかけてくれたしろまるの特殊能力なのだとおもいました
◇ ◇ ◇
さいきんたのしそうね
母が話しかけます
そうなの、わたししろまるになったの
だからたのしいのよ
しろまるになったくろまるは、母はきっとよろこんでくれるとおもいました
でも母はけげんそうな顔をしてこういいます
、、、、
「でもあなた、くろまるじゃない」
どうしたの、あなた、かがみを見てみなさい
母にそういわれ、鏡の前にはしります
かがみをのぞきこんで、きづきました
鏡に現れたのは、しろまるではなく、くろまるでした
どうして、どうして
しろまるだったはずなのに
やっとしろまるになれたとおもったのに
母はいいました
あなたは、ずっとくろまるでしょう
そんなことない、わたしは、
いっしゅんだけどしろまるになれてた
昨日はしろまるだったでしょう?
いいえ、あなたはずっとくろまるよ
しろまるになったことなんてないわ
◇ ◇ ◇
つぎのひ、くろまるはまたしろまるに会いにいきました
きょうはまだほかのしろまるたちはきていないようです
くろまるはしろまるにじじょうをすべてはなしました
そしてねがいました
あなたの能力をつかって、もういちど、しろまるにもどしてほしいと
しろまるはかんがえてから、すこしさびしそうに笑って、くびをよこにふりました
「言ったでしょう、わたしには特殊能力があるの」
あのしろまるは、くろまるをしろまるにすることができませんでした
いいえ、そもそも前提がまちがっていたのです
しろまる-いいえ-くろまるは、くろまるをしろまるにかえることができないのです
そのくろまるには特殊能力がありました
その能力は、くろまる自身をしろまるだとしんじこませる能力でした
「わたしはしろまるになりたいくろまるに夢を見せるの、それが、かみさまがわたしに与えた力なの」
ごめんね、でもね、ゆめをみせてあげたかったの
わたしもしろまるになりたいくろまるだから
もう、あきらめっちゃったけど
あの子はすこしかなしげに、笑います
くろまるはすこしかんがえて、ゆめをみせてくれたことに感謝しました
でもね
くろまるはいいます
わたし、ゆめじゃなくて、しろまるになりたいの
なれないことがわかっているのに?
ううん、なれないことはないけれど
それはとても、その、いばらのみちよ
あのこはいいます
くろまるはうなずきます、にっこりとわらって
くろまるはあきらめがわるいのです
それがどんなにむずかしいことだとわかっていても、くろまるはしろまるになりたくてしかたがなかったのです
くろまるはしろまるだったそのこにお礼いって、てをふります
こうしてくろまるは、あらたな旅にでるのでした
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