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ショー太の部下になりたいと思った日

学生時代のアルバイトは全て接客業だった。
今考えても、全くわたしの性質と合致しない業種。
どこかの店長からも「君は猫型だね」と言われたこともある。

ここで言う「猫型」はもちろんドラえもんのことではない。接客には「犬型」と「猫型」があるらしく、犬型はお客さんに寄って行けるタイプ、そして可愛がられる。猫型は、すーんとしててご用がある時だけ話しかけてね、それ以外はマジ勘弁、といった具合。

店長のあの日の一言

でも、学生が難しく考えずに手っ取り早くお金を得るにはこれだ!と思い込んで「なんか違う。でも何が違うかわからん。」と答えは出ずに気づけばバイトはずっと接客業だった。

某ハンバーガーチェーン
某パスタチェーン
某焼肉チェーン
某カフェチェーン
(チェーンばっかやん)

長くても1年、一回辞めて復活してみたり、それを掛け持ちしてみたり。

「マジ向いてねぇ」そう思いながらも、そこで得たものは社会で生きていくために必要なものばかりで、「経験は財産」とはよく言ったものだ(誰が言ったかは知らん)。

人とのコミュニケーションが苦手ではあるが、仕事をさばくことに関しては長けているので、スイッチが入ると人が変わる。

とにかくさばく。
とにかくこなす。
とにかく回す。

某ハンバーガーチェーンで、レジ打ちからドライブスルー、ハンバーガー作りまで一通りやってきて、一番脳みそフル回転する作業は『ドライブスルーの注文取り』だ。
マイクでやり取りしながら、画面に入力しながら、ドリンクを作り、必要なコンディメント(マドラーや、コーヒーミルク等)を揃える。そんな中、ドリンクが切れたらダッシュで2階の倉庫に走り、箱を開け補充する。その間も注文のやりとりは続いているので言われたことを覚えといて戻って来てから画面に入力。
一度、ドリンクの注文を聞きながら、「カレンダー取って」と近くのクルーに身ぶりで伝えたら、お客さんは「コーラ」と答えたのに、「はい、ドリンクはカレンダーですね」と言ったことがある。タスクがマルチすぎるとこうなる。

現在のこちらのチェーンではもうこんなことはしてないのだろう。
たまに利用するが、入力された画面を確認して「画面にお間違えなければ前にお進みください」とこっちにも責任が半分のしかかっている感じ。わたしの時もこんな画面あったっけ?

遠い記憶の中から懸命に思い出してみる


某焼肉店では、ホール作業はもちろん、厨房での仕事もやった。大根サラダをタワーのように高く盛り付け、頂上には刻みのりぱらりで完璧な仕上がりだったのに、にちゃっとした女子がそれを数秒で破壊し「あ~、ごめんなさ~い」と言った時には、ドレッシングを頭からかけたろか、謝り方習ってこい、と思ったものだ。
洗い場では、ドブのようになった水の中からお皿を救い出しウォッシャーにかける。どピーク時は、お皿洗うのなんて後回しっていうけど、お皿なくなったら盛り付けできんくて提供できんからね。わたしは厨房に入った時には、いかに回転数を落とさずに仕事の流れを止めずにウォッシャーをかけるかに命燃やしていた時期があった。肉切る人(花形)からしたら洗い場なんてと思われるかもしれんけど、お皿なかったらあんたの切った肉も盛り付けられませんから!と勝手に対抗意識を燃やしていた。だって、お肉切る人怖かったし上から目線だったんだもん。

たくさんミスしたし、ここでは言えないようなこともあったけど(本当はめちゃくちゃ言いたい。だけど夫にそれはモラル的にやめとけ、と何度か言われたし、人に嫌われたくないので言わないことにする。でも本当は言いたいので、聞きたい人は直接聞いて。だって言いたいんだもん。)
この前、某ラーメンチェーン店でその昔のわたしに引き戻される現象を見たのだ。

たまに行くそのお店。
お昼時には待ちも出るのはわかっているので行くときは早めに行くことで、ストレスになることを事前に抹殺しておく。

バイト生活で培った経験と人を違った角度から見る癖が相まって、飲食店ではすぐにその店の相関図が見えてくる。

店長:とにかく声がでかい。歌手のグローバーに似ている。
ショー太:店長からの直指示が飛んでくる。

ラーメン店での登場人物

店 : ショー太!3番さん〇〇して
シ : はい!
店 : ショー太!お会計サポートして
シ : はい!
店 : ショー太!6番さん麺お願い!
シ : はい!
店 : ショー太!ショー太!ショー太!

文章にすれば、淡々としているけど、これがずっと繰り返されているのだ。こんなにショー太って呼ばれたら、もうこの人がショー太なんだなとわかってくるし、この店にはショー太しかいないのかと思う程、ショー太にしか指示が飛んでこない。ショー太は1人しかいないんだぜ、他の人にも指示飛ばしたら?とラーメンの味なんてどっかいってただひたすらに店長の指示に食らいつくショー太の動きだけを見るわたし。
しかも、ここは飲食店。店内を大声が飛び交って気持ちよく食事できてる人ってどんくらい?ラーメン店だから静かじゃなくてもいいけど、ずっと右から左へ天井をつたって指示飛んでいて、わたしも落ち着かない。

焼肉店で注文入る度に「ありがとうございまーす」と言わされてたら、さすがにうるさいってクレーム来てその制度なくなったことを思い出した。余談だけど、こういう掛け声だけ張り切って言う人いるよね。グラス割れて「失礼しましたー」ってここぞとばかりに割ってない奴がバカでかい声で言う人とか。祭りじゃないんだから。

あ、で、ショー太の話に戻ると、
ショー太は必死に店長のトスを受けるんだけど、これが期待されてのことか
彼が何かやらかしたからか、そこらへんはわかんないんだけど、見てる方としては、「ショー太ガンバ」って心の中で思うしかないわけで。

数カ月して、またお店に行ってみると、、、
相変わらずのグローバーの大声。そして、肝心のショー太は、、、
あ?髪伸びた?
じゃなくって、別人となっていた。

店長からショー太への指示はほぼなくなっていて、お店全体を回す女の子へと代替わりしていて、ショー太は他の子たちに満遍まんべんなく指示を出していたのだ。ショー太の声は少し高めで、でも聞いていて悪い気は全くしない。彼の指示出しの声ならずっと聴ける。

「麺サポートお願いしまーす」
「〇〇さん、デザートお願いします」

彼の指示は完璧だった。
そこにいる人に的確に指示し、麺の仕上げもやっている。マルチがタスクしていた。テキパキと無駄なく、自らもしっかり動く彼に釘付けでラーメンどころではなかった。

店長しごきすぎって思っていたけど、それが功を奏したのね。がんばったね、ショー太!おばちゃん、たまにだけどあんたの頑張りをみてきたからこんなに立派になって嬉しいよ。声ばっかりな店長スタイルよりも、あんたみたいな声と共に自分も動くスタイル、いいよいいよ!わたしが部下だったらあんたに付いていきたいよ。

って思ったことを夫に話して
「やっぱ、最後に頑張ったね」って声かければよかったかなと言うと
マジで出禁になるけんやめれと言われ我に返ったわたしだった。

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