コスメブランドデザイン「Kikyo」
こんにちは、UM2年水野です。
今回の制作は、10年後の自分を想像し、それを形にするというもの。
自分は仮コスメブランド「Kikyo」を作り、そのロゴマークおよびイメージポスターを制作しました。ロゴマークはもちろん、イメージのディレクション、撮影を行い、レタッチまでを自分で行いました。
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では「10年後の自分」とはどういうものなのか。
自分は決してコスメブランドを立ち上げたいわけでも、カメラマンとしてやっていきたいわけでもありません。
自分は将来、アートディレクション、紙媒体にとどまらないクリエイティブな活動に携わりたいと考えています。そのような多くのことに携わる立場の人間に大切なことは、「出来るだけ広く知識を持ち、かつそれらの魅力を知っていること(もしくは理解しようとすること)」「それらに関わる人々にリスペクトを持ち、チームワークを尊び、作品のためにより良い空気を持ち続けること」ではないかと考えています。
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通っていた美術大学で、教授が「絵だけを描いている画家に絵は描けない」と生徒に言っており、また任天堂に行った卒業生の方が、「ゲームだけをやっている人間にゲームは作れない」と言っていました。
また、音楽プロデューサーでクリエイターの教授の方が、「新しいものとは、これまでに考えつかなかったものや見たことのないものではなく、既存と既存の組み合わせで、そこに価値が加わったもの」と言っていました。
同じことだと思います。一つのものに、他の価値観や経験を持って真摯に向かい合い、そこで初めてこれまでにない魅力的なものができる。
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デザインはそもそも「モノ」の価値を高め、広げるものだと考えています。
自分がその「モノ」を知っているか、それに魅力を感じているか、はデザインに対するモチベーション、デザインの深さに大きく関係すると思います。
そのために、違う価値観を取り入れること、広い領域にチャレンジすることはこれからのことを見据えるととても有意義だと思うのです。
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そのために今回の課題では
・他学科の人とデザイン以外のものも制作すること
・ディレクションを行い、かつそれぞれの分野の魅力を活かすこと
を念頭に置き、進めていきました。(ユームに限らず他の講義でも同じように進めました)
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今回のコンセプトは「新しい新世代の日本のコスメブランド」「女性の色々な美しさを引き出すブランド」。今回共に制作した方の「もっと自分のために表現できる時代になってほしい」という想いを基に制作しました。
ロゴマークにはモダンかつ日本らしさを持たせ、名刺には活版印刷を用い洗練された美しさを持たせました。
紙は二層合紙で、表面は柔らかく手触りも心地よく高級感のある紙を、裏面にはボール紙を用いてツルツルとしていながらラフ感もあり、モダンさを感じるようにしました。異なる質感の紙を合わせることで、美しさの様々な面を表現しました。
ポスターのコンセプトは日本の美しさ、まっさらで染まっておらず、どのような色にも変わることができるというブランドのコンセプトの根幹を表したイメージになっています。
また、四季を感じさせないようなイメージにし、あくまでもここから色がついていくんだという思いを強調しています。
この制作を振り返ると、UMのおかげで表現の幅が増えたなと感じますし、深く掘り下げることができるようになったなとも感じます。
去年の今頃、一年生の自分はこのnoteに「これまで油絵という一つのものを数ヶ月かけて完成させていくといった作り方をしてきた自分にとって、いくつもの段階を経て複数の進行を同時に行うデザインは難しい」という趣旨の文を書いていたと思います。
ただ、二年生になり制作を進めていくうちに、「深く掘り下げるためには、いくつもの段階を越える必要がある」と感じるようになりました。これは自分の制作において大きな転換になりました。さらに、その段階を疑うことも必要であると学びました。
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今回の制作では、途中の段階でロゴマークのラフを見た共同制作者の方から「日本らしさ、次世代のモダンな感じはあるから、女性の素朴さやナチュラル感と美しさや強さの二面性が感じられるようにしてほしい」と言われました。これまでの自分ならまた新しくロゴマークを考えていたと思います。
しかし、今回は名刺の加工でそれを表し、ロゴマークに関しては詰め込まないほうがいいということを伝えました。結果的にとても喜んでもらえる出来になり、自身も成長を感じられた出来事でした。
アートとデザインは違う、様々なところで言われていることで、去年もnoteに書いたような覚えがあります。アートは自分の思いを発信するもので、デザインとは違うと言われることが多いですが、自分は根本はそうではないと一丁前に書いていた気がします。いまだにそこに答えは出ていません。
ただ、目指すべきデザイナー像ははっきりとしています。しっかりと立ち止まり、振り返り、次を見据えて提案できること。これが自分の目指すデザイナー像であり、10年後の自分であればいいなと思います。今回の制作では、その意識が現れていたかなと思います。
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ところで、自分が最も好きな芸術家はアルベルト・ジャコメッティなのですが、彼はとある批評家に「誰も疑わなかった美しさの原始にひとり立ち戻り、そこに佇んで我々を見ている」と言われています。
当時、自分はだから彼の作品には寂しさと暖かさを感じるのだなぁと感じ、その批評にかなり影響を与えられたのですが、結局デザインに制作の場所を変えても、この考え方になるのだなと、自分は変わっているようで芯の部分はあの頃と変わらないんだなぁと、少しほっとしました。
アートとデザインは違うかもしれません。ただ、それを作る人間の情熱や思いは、どのような分野でも変わらないんだなと、様々な人々と関わった中で思います。
10年後、熱量を持ち、真摯に何かに取り組んでいられるといいなと思います。
UM2年 水野敦人