最近聴いて良かったブラックゲイズ。
・Misertus
2019年デビュー、マンチェスター発の現行ブラックゲイズ。Discogsに登録が無いのでメンバー編成等の詳しい情報は手に入れられませんでしたが、サウンドと楽曲だけでも鮮烈な存在感を誇っていると思います。
・1stアルバム、Daydream。
その後の展開を知っている者から見ると荒々しく、バンドのルーツの一つであるDeafheavenの影響を感じさせつつよりラフである様で、その上でシューゲイザー精神の核の一つである夢想性や幻想性を前面に押し出したサウンドが素晴らしいです。彼らがDeafheavenの文脈からブラックゲイズを展開しようとしているのは明白で、その様なブラックメタル的轟音とシューゲイザー的轟音のマッシュアップがこのアルバムの段階で美しく結実していてそのサウンドに陶酔とカタルシスを覚えました。
・2ndアルバム、Coil。
前作と比較すると、端的に言うと音の粒子が細かくなったというかより洗練されたのが伺えますが、洗練の結果としてサウンドや楽曲が落ち着いた訳では無くロック的なダイナミズムがより一層増した印象を受けます。コーラスでシューゲイザー的なテープエコーを取り入れているのも印象深いです。クリーンパートが存在するのも新しい点ですが、その結果としてブラックゲイズとしてより洗練されたのが伺えますね。
・最新シングル、A Shallow Constant
どうやら彼らはDeafheavenとシューゲイザーのマッシュアップを出発点としてシューゲイザーの要素をより強めていく方向を目指している様で、このシングル一曲目の"Wondering"の美しいギターリフからそれが伺える様に思います。彼らの現在のキャリアを通して見ても屈指の名曲ではないでしょうか。二曲目の"Severn"でのDeafheaven直系の展開も素晴らしいですね。名シングルだと思います。次のフルアルバムへの期待が高まります。
・Trautonist
2014年デビュー、ドイツ発現行ブラックゲイズ。マルチプレイヤーであるKatharina SerfとDennis Blombergの二者が演奏を務めている様です。和声の感覚が豊潤かつ女性ヴォーカルがリリカルで美しく、初めて聴いて軽い衝撃を覚えました。
・2ndアルバム、Ember。
前述しましたが、アトモスフェリック・ブラックメタルやブラックゲイズの常道からある意味で逸脱した豊潤な和声の感覚とリリカルな女性ヴォーカルが素晴らしく美しく、この日に発見した音源のベストに挙げたいです。特に"The Garden"のポップかつ耽美な和声と旋律は近年のブラックゲイズを通して見ても優れた部類なのではないでしょうか。名盤だと思います。
・Marunata
2017年にデビューしたフランス発ブラックゲイズ。全ての楽器を独りで演奏するマルチプレイヤーらしいです。最近多く見られるDeafheavenの文脈では無く、歌が明瞭なのですがAlcestの文脈という訳でも無く、ブラックゲイズのルーツの一つであるアトモスフェリック・ブラックメタルの影響に忠実で独創的なブラックゲイズを提示しています。
・1stアルバム、Réminiscence。
前述しましたが、既存のブラックゲイズの文脈に寄らずにルーツに回帰して自らの文脈を創り出す姿勢を評価したいです。その結果としてややプリミティヴな質感や歌のAlcestとも違う明瞭な美しさが生まれていて、非常に好感度が高いです。優れたアルバムだと思います。
・Olhava
2016年デビュー、シューゲイザーのPinkshinyultrablastと同じロシアのサンクトペテルブルグ出身のアーティストです。Deafheavenがシューゲイザーのマインドを持ちつつ更なる轟音になった感覚というか、鮮烈なインパクトと美しい叙情を兼ね備えたサウンドとなっております。一押しです。このバンドやShow Me A Dinosaur、Blakenberge、Trna、前述したPinkshinyultrablast等を見ると、サンクトペテルブルグにはシューゲイザー/ブラックゲイズのシーンがある様ですね。他のバンドもチェックしておきたいです。
・3rdアルバム、Ladoga。
Deafheavenを更に耽美にした様なヴォーカルとギターが兎に角印象深く、陶酔と目覚めが同時にある様なサウンドと楽曲が素晴らしく美しいです。名盤です。NYPなのでBandcampからのダウンロードがお勧めです。
・Falaise
2015年に活動を開始したイタリア発ブラックゲイズ。ヴォーカル、キーボード、ドラムを担当するMatteo Guarnelloとギター、ベースを担当するLorenzo Pompiliというマルチプレイヤー二者によって構成されている様です。アトモスフェリック・ブラックメタル譲りの激情とシューゲイザーの夢想性や浮遊感を兼ね備えている所が特徴として挙げられると思います。
・1stアルバム、As Time Goes By。
彼らのその後のアルバムと比較するとややプリミティヴな音響、前述しましたが激情と浮遊感や夢想の共存、ピアノの流麗で効果的な採用や他のブラックゲイズと比較するとイーヴィルなスクリーム等美点が数多く見られるアルバムで、沈静と激情が同時にある様な音楽性が素晴らしいです。その後の洗練にも頷ける内容です。
・Porosl
2019年結成、ロシア発現行ブラックゲイズ。メンバー構成等の詳細は不明ですが、Oss Nebesというアトモスフェリック・ブラックメタルのバンドのサイド・プロジェクトの様です。写真を見た限りだと二人で創作している様に見えます。特徴として挙げられるのはアトモスフェリック・ブラックメタルとも言い換える事が出来る音響とシンセサイザーの採用、そのシンセによるダークなフレーズのリフレインでしょうか。
・1stアルバム、Sober Life。
コズミックでダークなシンセサイザーのリフレインとアトモスフェリックなギターワーク、その合間に漂うスクリームと言った感じでプリミティヴながら優れた内容となっております。名盤というよりは佳作という感じですが、今後の作品に期待出来るのではないでしょうか。
・Trna
2015年デビュー、ロシア・サンクトペテルブルグ出身のブラックゲイズ。ギターのAndrey、ベースのAnton、ドラムのTimurによって構成される3ピースのインストゥメンタルのバンドです。ヴォーカルレスながらリフワークと楽曲展開が優れているので旋律や叙情性が損なわれておらず、高い完成度を誇っております。
・3rdアルバム、Earth Cult。
現状での最新作であり、彼らの作品だと最も優れた一枚だと思われます。ポストメタルに例えるとPelicanが演奏する何処か乾いた音響に通じる所があるというか、ヴォーカルレスのインストゥメンタルという点を顧みても共通項は多々あると思われます。微かにポストロックの気配がする所も見逃せないです。ジャケットも良いですね。
・最後に。
どのバンドも総じてLastfmやYoutube等の再生回数が極端に少なく、AlcestやHoly Fawn等の例外はありますがブラックゲイズ自体マイナーなジャンルなのだなと思わされます。もっと盛り上がって欲しいものです。それでは読んで下さって有難うございました。
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