自動記述、真夏

糜爛した肋骨の傷はいずれ塞がるが蝶は翔ぶだろうし翅は光輪を兆す。暗転、わたしの白樺の樹は無残に溶け落ちて、時計の針は刻まれぬまま再び肋に傷を付ける。韻を踏む、詩を記述する、死を記録する、睡る眼を凝視する、恐らくこの工程にわたしの頌歌と呪詛の身籠りが唸り、死者の歌う鎮魂歌の墓場としての機能がシンクロする。ふわと、音のない朝の光が私の躰を貫いて記述機械としての目的を果たせと詰め寄る。街に美しい彼女の姿が見え、樹々となり溶け、翳は鳥となり羽撃いて私を超えてゆく。その彼女の姿を眺めることで歌が生まれ、海になる。星蝕の夜に天体から降るはずだった美しい光の代替としてわたしは言葉を読み、記述し、また読み、そして強く記述する。この晩夏の夜を過ぎゆく突風として。

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