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桜坂しずくは、一筋縄ではいかない。【しずく、モノクローム】のラストについて

アニメラブライブ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会8話、桜坂しずくにスポットが当たった『しずく、モノクローム』。
さてこの回だが、書かなくてはいけない、そんな情動が沸々と湧き上がってきているのを実感しているので思ったことを書く。まず単刀直入な今回のエピソードの感想を言うと「思っていた物と違ったけれど、良かったし面白かった」という感想になる。なぜ『思っていたものと違った』そう思ったかと言うと、アニメのしずくの演じることへの動機が今まで他媒体で描かれてきた桜坂しずくの動機と違うからだ。

他媒体、例えば自己紹介動画では「元々演劇が大好きで演劇の役に立つと思ってスクールアイドルにもなった」と言う。

一方アニメでは「昔の本や映画が好きで、だけどそんな人は周りにおらず、変な子だと思われたくないために演じることをはじめた

つまり他媒体では演技の動機が非常に前向きな理由であるが、アニメでは後ろ向きな、逃避にも近い理由で語られる。

キャラクターの根幹にかかわる部分が違う。かつてラブライブ!サンシャイン!!では私の推しである津島善子も堕天使について「自分はめちゃくちゃ運が悪いがそれは天界を追放された堕天使であるからだと(本気で)思っている」のと「堕天使設定は中二病であることを自覚しており卒業しなくてはいけないと一度は悩んだ」とG'Sマガジンとアニメでの設定が異なり、私もそれでうんうん唸りながら飲み込めず悩んでいた時期もある。


そういった経験もあるから、というのもあるが、だからといって「桜坂しずくは!こんな娘じゃねえ!」と否定するわけではない。
何故ならアニガサキは他の媒体を土台にしているが異なる設定であるからだ。そしてそれは高咲侑の存在を筆頭に璃奈ちゃんがボードを元々はつけていなかったりと意図的に分かりやすいカタチで違いを作っている。(そもそもキャラデザも大きく変えてきている)だから「アニメの桜坂しずくはこういう子なのね」と考えることは(無印やサンシャインに比べれば)そこまで難しくなくスッと受け入れることが出来た

しかし、私にとって一つひっかかるものがあった。ラスト、インタビューのしずくの笑顔を浮かべながらの『本当の私を、観てください』というセリフ。

本当の私……とは?

このアニメのいう桜坂しずくの本当の私、とは……?
自分の思考の整理のためにも8話『しずく、モノクローム』のストーリーを書いておこうと思う。

8話冒頭、劇中のセリフから始まる

しずく「ある街のある劇場に一人の少女がいました。彼女の夢はこの街一番の歌手になること。そしてたくさんの人に歌を届けること。あなたの理想のヒロインになりたいんです。」
黒しずく「無理だよ。私の歌なんて誰にも届かない。本当は分かっているのでしょう?あなたは、私だもの」

場面は変わり、新聞部の取材に応じる同好会。インタビュアーの「どのようなスクールアイドルを目指していますか?」という問いに「私は愛されるスクールアイドルを演じたいと思っています」と答える

しずく「みなさんにとって理想のアイドルを想像して、その子になりきるんです」
新聞部「では今この瞬間も桜坂さんは理想のスクールアイドルを演じている、ということですか?」
し「はい」
新「なるほど、演劇部に所属している桜坂さんらしいアイドル像ですね」
~中略(合同演劇祭の話題に移る)~
し「精一杯演じますのでぜひ見に来てくださいね」

しかし後日控えている演劇部の主役をしずくは降板させられてしまう。
部長曰く「この役は自分をさらけ出す感じで演じて欲しかったの」という。
役柄が歌手なのでスクールアイドルもしているしずくなら適任と思ったけど……という。

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浮かない顔をしているしずくに気付くかすみ。かすみは璃奈に相談する。クラスメイトによると主演を下ろされ、再オーディションをしているという。

黒しずく「私の歌は誰にも届かない!子供の頃のこと覚えてる?みんなとは少しだけ違う。たったそれだけのことだったけど私はいつも不安だった」
「誰かに変な子って思われたら、嫌われたらどうしよう。いつもそんなふうに怯えていた。だから本当の自分を隠すようになった。そしたらすごく楽になれた。あの日からずっと私は嘘の私のまま。自分を偽っている人の歌が誰かの心に届くわけがない。そうでしょう?」

浮かないしずくを励ますため、璃奈とかすみはしずくを(拘束し)パンケーキ屋へ連れて行ったり買い物巡りをする。

璃奈「好きなの?昔の映画。もしかしてしずくちゃんが演技を始めたのって、こういう映画を観てたから?」
しずく「そう…かな?それもあるけど……私ね、演じている時が一番堂々としていられるの。誰の眼も気にならないし。……自分が桜坂しずくだってことを忘れられるの
璃「自分が……嫌なの?」
し「ごめんね。変な話して。忘れて?」
かすみ「あーー!また暗い顔してる!!」

悩んでいるしずくをかすみは励まそうとするが「何でもない。大丈夫。」と伝え、かすみ達と別れる。現れるのは黒しずく。本当の自分を見せるのが怖いのだととしずくに突き付ける。「私、歌いたいの!みんなの心に届く歌を。そのためには、自分をさらけ出さなきゃ。受け入れて」「できないよ。嫌い……こんな私」

Bパート
意外にしず子が頑固ものだと知らなかったと璃奈にこぼすかすみ。
きっと今のしずくちゃんもしずくちゃんだよ。」と言う璃奈。
自分も今の自分が嫌だったが愛さんをはじめとするみんなが引っ張ってくれたから一歩を踏み出せた(6話)の経験を踏まえて語る。飛び出すかすみ。

誰もいない教室に一人伏せるしずく。入り込むかすみ
大丈夫だからと笑顔の仮面をつけるしずく。
だがかすみ、目が腫れていることを指摘「しず子が頑固キャラだってよくわかったよ。でもそんな顔で必死に隠そうとしないでよ!私としず子の仲でしょ!?」と憤慨するかすみ。

「今度の役ね。自分をさらけ出さなきゃいけないんだ。でも私には出来ない。私、小さいころから古い映画や小説が好きだったんだ。でもそんな子は私しかいなかった。不安だった。誰かに変なのって顔されるるたび嫌われたらどうしようって。そのうち他のことでも人から違うなって思われるのが怖くなって、だから演技をはじめたの。みんなに好かれるいい子のフリを。そうしたら楽になれた。」
私やっぱり自分をさらけだせない!それが役者にもスクールアイドルにも必要なら私はどっちにもなれないよ!表現何て出来ない……。嫌われるのが怖いよ……

かすみ殴りかかろうとする。が、デコピン。

か「嫌われるかもしれないからなんだ!かすみんだってこ~んなに可愛いのに褒めてくれない人がたくさんいるんだよ!?しず子だってかすみんこと可愛いって言ってくれたことないよね!?しず子はどう思ってんの!?可愛い!?可愛くない!?」
し「か、可愛いんじゃないかな?」
か「ほら言ってくれたじゃん。しず子も出してみなよ。意外と頑固なところも、意地っ張りなところも本当は自身が無いところも全部」
し「それ褒めてない」
か「もしかしたらしず子のこと好きじゃないって言う人もいるかもしれないけど私は桜坂しずくのこと大好きだから!」

真っ赤になりながら教室を飛び出すかすみ。泣き笑うしずく。(おそらくこの笑顔は本心。笑顔の作画も違う。)
無事再オーディションで主演を取り戻し、舞台「荒野の雨」の公演が始まる。

し「ある街のある劇場に一人の少女がいました。彼女の夢はこの街一番の歌手になること。そしてたくさんの人に歌を届けること。あなたの理想のヒロインになりたいんです。」
~中略~
黒「そんなに怖いの?本当の自分を見せることが。」
目をそらし逃げようとするしずく
黒「待って。私、それでも歌いたいよ!」
し「ずっとあなたから目をそらしていた。でも歌いたい。その気持ちだけはきっと真実!今までごめんなさい!」
黒しずくを抱きとめる「これが私!逃れようのない本当の私!」
黒「嫌われるかもしれない」
し「でも好きだって言ってくれる人もいた」
2人「だからこの小さなステージでもう一度始めよう」

2人のしずくは1人になり白と黒。間にグレーを挟む三色の衣装に変わる

挿入歌Solitude rain

舞台が終わり、再びインタビューに現れる新聞部。

「役者、そしてスクールアイドルとして、何かメッセージはありますか?」という新聞部の質問にしずくは笑顔でこう答える

「本当の私を見てください」

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~fin~

………んん?
何もおかしくない気が……する……が?
ちょっと待って。EDよ流れないで。

今回演劇部部長にしずくを主演から降板させたのは主演のイメージとして『自分をさらけだすような感じで演じること』を望んでいた。しかし、しずくは普段から誰かに嫌われることを恐れ良い子の仮面を被っている。そんな状態では主演をさせるわけにはいかないという。
しずくはかすみとの対話で嫌われても好きでいてくれる仲間がいることに気付き自分をさらけだす勇気を得、ふたたび主演に返り咲いた。
ここまでは良い。

しかし、彼女は本当の自分をさらけ出す勇気を得たことで、何が、どう変わったのだ?

舞台中の黒しずくとしずくのやりとりのいう「本当の自分」とは舞台のキャラクターとしては『歌いたい』という気持ちだろう。
ではしずくにとっては?
『嫌われてしまうかもしれないと怯えてしまい良い子のしずくを演じるという自分の弱さ』か?
『古い映画や小説が好き(=演じることが好き。と仮定する)という気持ち』だろうか?
それとも両方……?

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そして、本当の自分を曝け出すように役を演じきった最後の笑顔の桜坂しずくは「スクールアイドル:桜坂しずく」でも「役者:桜坂しずく」でもなく、「桜坂しずく」個人の笑顔ということになるのか?

Solitude rainの衣装には黒と白と挿し色にグレーが挟まれている。これを本当の私=演じてしまうそんな私も自分だという自分の闇を受け入れた、と考えるのは難しくないだろう。
だがそうなると、「本当の私を見てください」というセリフがちぐはぐなものになってしまってはいないだろうか?

もしかして『曝け出す勇気を得た』ことが重要であって(故にオーディションで再び主演を勝ち取った)、『曝け出された自分』はここでは重要ではない……?今後描いていくから?私が結論を急ぎ過ぎなのか?
それならばそれで納得できなくもないが、箱を開けることが出来たものの箱の中身は分からずじまい、なもどかしさがある。
しずくよ、本当の貴女とはなんなのだ?

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あなたの理想のヒロインは何処へいく

ここで話を冒頭のインタビューに一旦戻す。冒頭の理想のスクールアイドルを演じる(つまりこれまでの桜坂しずく)という彼女のビジョンはこの話をもって更新され、ありのままの桜坂しずくとして今後は動いて行くのだということになる……?あなたの理想のヒロイン桜坂しずくはもういない……?
それもまた違うのではないか?そもそも、8話においてスクールアイドルとしてのしずくについては冒頭の『理想のスクールアイドルを想像し、演じる』という言及と「自分を曝け出すのが演劇にもスクールアイドルにも必要なら自分には出来ない」ということ以外スポットはほとんど当たっていないではないか?!意図的にスルーしているのではないか?と思えるくらいに。
ここで重要になるのは「きっと今のしずくちゃんもしずくちゃんだよ。」という璃奈の言葉になるのかもしれない
「理想のスクールアイドルを想像し、演じる」と「本当の私を見てください」は点と点でなく、線で繋げることができる?

「(もうこれから無理に良い子の仮面を被ることをやめるので)本当の私を見てください」
ではなく
「(演じることも含めて私なのだから理想のスクールアイドル想像し、これからも演じていくのでその中にある)本当の私を見てください」
こうだろうか?

スクールアイドルとしてのしずくのことを考えるならば、スクスタに触れる必要があるだろう。
スクスタのしずくのキズナエピソードでは色んなしずくの一面を見ることができる。お芝居の話になると止まらなくなることや、球技が苦手なこと、

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デートプランをめちゃくちゃ考えること。

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アニメしずくは印象の目立たなさ(良い子を演じているならばそれは思惑通りではあるのだが)もあるが、スクスタのようにならないのは常に彼女に寄り添う先輩=あなた=私がいないのは大きいと思う節はある。
高咲侑……私の後輩が涙を流しているぞ!

さて、スクスタのキズナエピソードにおいてしずくはスクールアイドルとしての桜坂しずくは何を表現しなくてはいけないのか?という悩みがあり『やはり演じること抜きに自分は語れない。だから理想のスクールアイドルを設定しそれを演じる』という境地にたどり着いた。それはニュアンスとしては自己肯定的であり、3rdアルバムに収録されている「やがて一つの物語」の歌詞の一節でもある、『演じてしまうことだって自分らしさだって』ともつながる。

一方のアニメしずくは上記の「演じること抜きに~」を無意識のうちに行えているということになる。だが本当の自分を曝け出すことを悩み最後はこれが私!とたどり着いた。
「(演じることも含めて私なのだから理想のスクールアイドル想像し、これからも演じていくのでその中にある)本当の私を見てください」=『演じてしまうことだって自分らしさだって』と言えないだろうか?

つまりここまで私はスクスタしずく≠アニメしずくとして扱っていたが、2人はたどり着くまでの順序が入れ替わっているだけでゴールは同じなのではないのか!?


やがてひとつの物語って……そういう?


さて衝動に従い色々書き連ねたが、これが正解ではないかもしれない。私の考えすぎな可能性もある。だがそこまで考えていないよ?と誰が言えるだろうか?
Solitude rainをフルverで聞いたらまた考えが変わるかもしれないし、そもそもまだアニメは4話残されているのだ。本当の私を見てくださいと言ったが、ひょっとしたら9話はしずくたちが担々麺を食べに出かけているシーンから始まる可能性すらある。

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今回はここで筆を擱くが演劇部兼スクールアイドル同好会の桜坂しずくにスポットライトを当てた回が今回こういったオチになったのは、それが意図的であろうと偶然の産物であろうと、女優桜坂しずくここにあり、というか一筋縄ではいかない彼女の面白さですらあると感じる。正しい答えを与えてくれないことは、私は嫌いではない。あえて答えをぼかし観客に答えを委ねるというのは映画や演劇でも実例はあるし、考察し甲斐があって、楽しい。

しかしひとつだけ思うことがあって、今回のMVで1st liveで「オードリー」の時に前田佳織里さんが来ていた赤のコートを着るしずくの絵が見れるとどこか期待していたのだが見れなかった。あれはこれまでのような声優側の写真のオマージュではなく、桜坂しずくを演じている前田佳織里さんの衣装だから、その対象に当てはまらないということだろうか?

12月追記:8話振り返り生放送で前田佳織里さんがどのようにしずくを演じていたのか、考えていたのかの言及があったのでメモ代わりに残しておく。

「演じているしずくちゃんも大切で自分を曝け出せるようになったしずくちゃんもどっちも大切。」
「一般的には演じる=嘘、偽りというイメージだけど、私のイメージとしては演じてる時はその役を本気で生きてるし、その役の人生を本気で生きてる。だから曝け出しているしずくちゃんのその前は本心じゃないのかって言われるとそうじゃないと思う。曝け出す前のしずくちゃんはどういう状態だったかというと俯瞰が強いイメージ。それは表現には大切だけどでも俯瞰の状態を脱さないといけないから、脱することで表現にもより一層磨きがかかるし。二つの桜坂しずくはなんだろう、ネオ桜坂しずくというか……新しいしずくちゃんが見えたのかなぁと。」
「色んな考えがあっていいと思う。舞台とかも見ている人やその人の人生観で答えが違ってくるから、見ている人によって答えが違って良いし、見ている人の答えが正解というか、それを大切にしたいですね。」

あと3分ですか!?カップラーメン出来るじゃないですか!?

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