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やっかいな女_20180624宝塚記念

辺りで急に声がした。
「だれか、下から覗いたでしょう!」
シーンと静まった深夜のネットカフェに、ひときわ響く女の声。
その声は酒焼けしたようなハスキーな声だ。


営業の俺は明日朝一で小田原まで行って自社製品のプレゼンをするため、パワーポイントで資料を作成していた。
深夜3時半を回り、最後の章を作成してネットカフェを出ようと思っていた。
その前に、のどが渇いたのと眠気覚ましにコーヒーが飲みたくなって、飲み放題コーナーへ行こうと思った矢先に、またこの女の声がした。

「今、この前通った人、だれよ?」

返事がない。
誰か覗きでもしたのか?
それともこの女の気のせいか?
今、コーヒーを取りに行ったら面倒なことになると察知した俺は、我慢してパソコンを叩いた。

結局、俺は資料を最後まで仕上げてデータをUSBメモリに保存して、帰り支度をした。
個室を出て、俺は疲れた脚を引きずりながら、静かなネットカフェ内の出口を目指した。
受付まで来て、「チーン!」と置いてあった鈴を鳴らして店員を呼び出した。

すると、控室からではなく、カフェ内から店員が・・・いや、客がやってきた。

「あんたでしょう?」
「は?」
「と・ぼ・け・ないでよ。あんたが私の個室を覗いたでしょー?」
年のころ30代後半くらい。女は酔っているのか、目がトローンとして、呂律が回らない。

しかし、俺はすぐこの女が酔っ払いではないのではないかと思った。
頭がちょっとイカれた人だと感じた。

「お客さん同士のけんかは外でお願いします!」
遅れてやってきた男性店員が、善良なお客様を見捨てるように、こう言いやがった。

「けんか?知らない人だし、ただの言いがかりだよ、わかんないの?」

面倒なので、そそくさと支払いを済ませ、背後のエレベーターのボタンを押した。
すると、女が手を広げてエレベーターの前に立ちふさがった。

「あんた、わたしのことスキでしょう?このあと一緒に飲みに行く?電話番号おしえてよ?」と口元に笑みをこぼしながらこう言った。

「??????」

俺は店員に警察でも呼んでくれないかと目配せしたが、店員は素知らぬ顔。つかえねー奴だ。

すると、女は「あんた、水玉の靴下でしょ!わかってんだから!」と言いながら、失礼にも俺のスーツのズボンの裾を持ち上げた。

会社帰りのスーツだ。靴下は黒の通勤靴下に決まってるだろ!!

「あっ、履き替えたでしょ。さっきまで水玉履いてたでしょ!」
「はぁ?」

もう、付き合っていられない。
でも、エレベーターに乗れば、この女も一緒に乗り込んでくるはず。
密室に二人きりはマズイ。ますますあることないこと言いだしかねない。

と、その時。
エレベーターのドアが開き、一人の男性客がやってきた。

「あっ、このひとだ!わたしを覗いたの。」

この男性はなんのことかわからず、キョロキョロしていた。
よく見ると、わりとイケメンだった。
俺はこのイケメンに心のバトンを渡して、エレベーターに乗り込んだ。


◇◇

さて、本日は宝塚記念。
人気薄の⑤ストロングタイタンを狙う。
馬主はシルクレーシングクラブ。勝負服は水色に赤の水玉柄だ。


(勝馬投票は自己責任でお願いします)
[今年の当たり]
◯安田記念 アエロリット 5人気2着
◯高松宮記念 ナックビーナス 10人気3着
◯阪神大賞典 サトノクロニクル 4人気2着
◯弥生賞 ワグネリアン 2人気2着
◯京成杯 コズミックフォース 2人気2着

#エッセイ #コラム #競馬 #umaveg #ショートショート風 #ネットカフェ #女 #水玉の靴下  


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