『いい塩梅』
おばあちゃんは、私の好物をいくつも奪った。
横取りして、食べたわけではない。
与えすぎるのだ。
幼い頃小食で、食にほとんど興味がなかった私が
「甘エビが好き。」などと一言でも口にすると、
次の日には、甘エビがドーーーーンっと、大皿で食卓に並ぶ。
好物にも、限度というものがある。
いくら好きでも、限界というものがある。
食べ物だけでなく、オマケのついたお菓子もそうだ。
買い物についていくと、一つづつ買ってもらうのが楽しみだったのだが、
私が、それを楽しみにしていると知ると、
箱買いしてくれて、それを私に渡す。
私は、開けるときは楽しいが、全部開け終わると、そのワクワク感も終わりを告げる。
そして、次の日から、買い物について行く楽しみが一つ減る。
子ども心に、
『いい加減、いい塩梅というものが、この世にはある。』ということを悟った。
本当におばあちゃんは、限度を知らない人だった。
そして、おばあちゃんの孫への愛情もまた、限界がない。
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