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日本のエンタメは誰のものか?@アグネス・チョウの『不協和音』発言で思ったこと

 香港の「民主の女神」と言われた、周庭(アグネス・チョウ)さんが保釈されたときのインタビューで、「欅坂46『不協和音』がずっと頭の中で流れていた」とコメントしたらしい。ああ、日本好きの香港人あるあるだなと思った。

 と同時にアイドル・グループの楽曲がヒット・チャートの上位を独占するようになって、「あんなのは音楽じゃない」とか「まったく心に響かない」とか「音楽販売のランキングではなく、握手券を売った結果のランキング」とかなんとか日本では散々揶揄されていることも思い出した。昭和の歌謡曲と比較され「歌唱力が違う」「同じアイドルとは思えない」などと、音楽としての価値もないような言われようもされたり、東京オリンピックのセレモニーにこれらのアイドル・グループを出演させるという案には、「日本の恥になるからやめてくれ」という声も聞いた気がする。僕もどちらかと言うと、これらの意見に賛同する部分は大きかった。どういった年齢層、カテゴリの人がそう言っているのかわからないが、ともかく大勢のアイドルがきゃぴきゃぴ歌うことを忌み嫌っている人が一定数いることは確かだ。まあ多分ある程度年配の人なんだろうけど。

 話は代わって、僕が香港に居たとき、「日本語を喋ることができる方優遇」といった求人をして、応募してきた香港人と面接をしていて感じたことがある。日本語を喋る香港人は、必ずと言っていいほど日本のエンタメに大きな影響を受けている。アニメ、漫画、ドラマ、ゲーム、そして男女問わずアイドル。特にアニメとアイドルは強かった。日本のこういったエンタメに触れて、日本に興味を持ち、日本語の勉強をはじめたというのが、僕の体感上95%以上は占めている。アグネスもこういう職探しをしている日本好きの香港人と一緒なんだな、と思ったのだ。

 つまり、日本人にとっては心に染みない、心に響かない消費されるだけのアイドル音楽でも、広く海外、特にアジア圏では多くの人に強い影響を与えているわけだ。「日本ってすげー」と思わせている絶対的なコンテンツである。当然のことながら、日本人が感じる日本の良さ、恥部と、海外の人が感じる日本の良さ、馴染みにくい部分はまったく違う。だから、最近の音楽をはじめとした日本のエンタメを日本人が無碍に叩いたり悲観する必要はまったくないんだなと感じた。日本のエンタメは日本人のためだけのものじゃない。だから無理に好きになる必要はないが、声をあげてまで批判する意味はまったくない。むしろ単純な人口比で言えば、海外(アジア)で受け入れられるコンテンツの方が価値はとてつもなくでかい。まあこういった海外戦略が上手なのは韓国だろう。近い将来、韓国エンタメに日本が負けなければいいのだが。

 最後にどうでもいい話。「周庭」と書いて、「アグネス・チョウ」と読むわけではなく、「周」が「チョウ」と発音し、いわゆる名字。アグネスというのはニックネーム。メールアドレスやfacebookなどでも、こういった「ニックネーム+名字」はよく見る表記で、ジャッキー・チェンなんかもそう。ジャッキーがニックネームで、名字が陳(チェン)。日本でなら、ルー大柴とかパッパラー河合とかジャニー喜多川とかいった感じだろうか。余談ついでだが、僕の知り合いの香港人(民主派だろうか親中派だろうが)、特に女の子からは彼女はすこぶる評判がよくない。まあやっかみみたいなもんもあるのだろうけど、たしかに同世代の同性から好かれるタイプではなさそう。こちらも地元じゃ不人気でも海外では注目されるという図式のようだ。これだけ日本に対して香港事情を伝えてるのだから応援してやれよと思うのだが、それとこれとは別なんだとか。不協和音。ちなみに「周庭」をそのまま発音するなら「チョウ・テイ」。

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