しあわせな人生

ザリガニ釣りはおもしろいらしい
ザリガニ釣りをした少年は
ザリガニ釣りやになった
夢はザリガニ釣りやではなかった
けど
だって
ザリガニ釣りは毎日やってただけで
そのザリガニがどんどん増えたから
だからそのザリガニを売っただけなんだ
だから
夢が叶ったとかそんなんじゃなくて
ザリガニをつるのがただたのしくて
それに夢中になってただけなのに
それって
そっからザリガニがうれなくなった
ザリガニ釣りはやめなかった
ザリガニをただであげつづけたら
ザリガニはまたうれつづけた
なんだこんどは
ザリガニがあがるときの色合いが
うつくしく変化するその瞬間がみたい
その一心でザリガニ釣りもザリガニ揚げも
するようになった
それをみんなが重宝してくれた
ただそれだけで
あたしは、しあわせものだと
みなからザリガニ長者
と呼ばれるようになれた
それはとても嬉しいものではなかった
ザリガニがいなくなったら
こんどはザリガニをそだてなきゃならなくなったから
ザリガニ釣りはザリガニがいなくなったらやめたかったけど
僕はざりがにがひもをつかむかつかまないかの
あの瞬間がたまらなく好きだったから
変色するあの瞬間を確認するとみたされたから
いなくなったから
べつのものをとりはじめた
もう僕は
ザリガニ釣りはできなくなったけど
全然
寂しいとかはおもわなかった
だって
いまは
ザリガニ御殿でくらしているから