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おじさんって生きるのムズ過ぎんか?
小生齢40歳手前のおじさんである。
今日はバスに乗っていて、下手な善意を発揮し、とんでもない状況を作り出してしまったので、ここに記す。
果たして俺は一体どうすればよかったのか。
舞台はのどかな地方都市、宮崎である。
俺は行きつけの蕎麦屋でランチをして、買い物を済まし宮崎駅からバスで自宅へと帰路についた。
なんてことない、俺のいつもの日常である
そのバスには妙齢の女性4名と女学生1名と俺一人が乗っていた。
平日の昼間の便では乗客数はいつもそんなもんである。席は各々バラバラに程よい距離感を保って座っておった。
そんな中、一人の年配の男性(ここではジジイと呼ぶこととする)が乗車してきて、女学生の隣に座った。
やたらと独り言をブツブツ言いながら乗車してきたので、俺は「おやおや?」と少し訝しげに思っていた。
すると案の定というかなんというか、ジジイは隣の女学生に、「学生さん?」と尋ね、よく分からない宗教の勧誘を始めたのだった。
女学生が恐怖と共に憔悴していくのがよく分かった。
勧誘は10分ほど続いた。
周りの乗客のちょっとハラハラしている緊張感が車内を包んだ。
なんだか可哀そうだし、ここは唯一の男性である自分が一肌脱ぐか、と俺は意気込んでしまった。
ジジイに注意をしようかと逡巡したが、無敵のタイプ属性を持っていそうな雰囲気を纏ったジジイだったので、様々なリスクを考え却下。
ジジイを刺激しないで女学生を助ける何か方法はないかと考えた。
そこで俺は女学生の知り合いを装って、席の移動を促そうと考えた。
ジジイと女学生はバスの後方に座っており、俺は中央付近の一人席に座っており、その前の席が何席が空いていたので、そっちに逃げ込めばよいと思ったのだ。
それならジジイの気持ちは逆なでしないし、俺は幸いもうすぐ着くバス停で降りるので、さっさと降りて女学生に気を遣わせずにジジイから隔離でき全てが上手く納まるナイスアイディアだと自画自賛した。
善は急げで早速実行に移した。
「あ、レイコちゃん(適当)じゃん!気付かなかった!こっちの席来なよ」
若干白々しい演技になってしまったが、嘘だとばればれなのはこの作戦にはあまり関係がない。とにかく女学生がこの提案に乗っかって席を移動してしまえばそれで終わりだ。
軽い気持ちで実行してしまったのが間違いであった。
「ヒ・・・」
アッ~~~~!やってしまった~~~~!
女学生はさらに恐怖で引き攣った表情で俯いてしまった。
そう。俺はめちゃくちゃ変なおじさんであったのである。
突然意味不明に知り合いの振りをしてくる激ヤバおじさん。
隣のジジイと同じかそれ以上に気持ちの悪いおじさんとして、彼女の目に映ったのだろう。
車内には新しい緊張感が走りだした。
考えが全く至っていなかったが、この作戦は彼女と同世代くらいの人間でなくてはいけなかったのだ。
ジジイからしたら俺もまぁ若い人間だし、そこまで不自然ではないだろうと高を括っていたが、作戦に乗ってくれるか否かの対象である肝心の女学生からしたら全然世代の違うおじさんなので、逆にパニックと恐怖を与えてしまった。
唯一救いだったのは、ジジイが俺が急に話しかけたことにビビり、勧誘を辞め、黙ったことだった。
一方、天才的機転を利かせられると勘違いし、女学生を更なる恐怖へと陥れるだけの大暴投をかました俺は天を仰いでいた。
やっばぁ・・・!
頼む俺の善意!!!!このバスの乗客の中で一人でも良いから伝わっていてくれ!!!頼む~~~~~~!!!死にてぇ~~~~~~!!!!!
と思っていたら、偶然なのか空気に耐え切れなくなったのか次のバス停で女学生と他の乗客がぞろぞろと降りて、変なおじさんである俺とジジイが車内に残った。
地獄バスの完成である。
完成であるじゃねえつーの。
地獄バスの空気に耐え、
すごすごとバスを降り、
俺は空を仰ぐ、
一体何が最適解だったんだ・・・
俺のおじさん人生はまだ始まったばかりだ。