ふつうのネギ
昔、百貨店で「ふつうのネギ」問題が発生した。
おばあちゃんからの電話で、ネギの注文があったとき、「どんなネギですか?」って聞くと「ふつうのネギ」って言われてしまうのだ。
けど、この「ふつうのネギ」っていうのがやっかいなのだ。
ふつうは(笑)、下の方が白くて上が青い、太さ1cmくらい、長さ60cmくらいのが3本くらい長い透明の袋に入ったやつを思い浮かべると思うのだけど、実はこのふつうってやつは自分のふつうでしかなかった。
聞く人ごとに実はそれぞれの思い描く「ふつうのネギ」がビミョーに違ってて、「いや、ふつうのネギって、うどんの薬味に入れるようなもっと細いのでしょう?」と言う人、「いや、今の季節はスキヤキに入れるもっと太めのがふつうでしょう」とか、「いや、関東だと白ネギこそがふつうのネギだ」と言い出す人までいて、それぞれが自分の描くネギこそが「ふつうのネギ」だと言って譲らない。「ふつうのネギ」こそがこれまで生きてきて信じてきたアイデンティティなのだ。
で、結局のところ、みんなが納得するような「ふつうのネギ」の合意には至らずに、「ふつうのネギ」なんてものはないのだ、とみんな諦める。(といいながらも、みんな心の中では自分の思うふつうのネギこそがふつうのネギなんだけどね、と思いつつ)
なので、「ネギ」って注文があったときは、「どんなネギですか?」って聞くんじゃなくて、「何に使いますか?」と聞くのが肝心!
うどんの薬味ですか、とか、サバと炊く用です?とか(それはネギじゃなくて、葉玉ねぎだったりもする。。。)
そして今日も、おばあちゃんから注文が入る。
「とうふ持ってきて。」
「どんなとうふですか?」
「ふつうのとうふで」
京都北部の山あいの小さな集落にただ1軒の小さな百貨店から田舎の日常を書いています。子供達に豊かな未来を残すためにサポートよろしくお願いします!